ガボン、ニジェール、マリ、ブルキナファソなど、仏語圏アフリカでクーデタが続き、その意味を問う議論が起こっている。ドヴィルパン元仏首相は、仏語圏アフリカにおけるクーデタの頻発を、フランスの凋落だと捉えて懸念を示した(9月4日付ファイナンシャルタイムズ)。
一方、フランス政府は、こうした見解を否定する。コロナ外相は、インタビューで、サヘルだけがアフリカではないし、マクロン政権のフランスは仏語圏アフリカ以外との関係強化に努めている。「フランサフリック」はとうの昔に死んでいる、と述べた(3日付ルモンド)。
確かに、仏語圏アフリカでクーデタが続いたからといって、アフリカにおけるフランスの影響力が全般的に後退しているという議論は乱暴に過ぎる。フランスの植民地支配や独立以降の政策に多くの問題があったことは疑いないが、それで今日の政情不安やクーデタをすべて説明できるわけでもない。そもそも、近年クーデタや紛争が起きているのは、仏語圏アフリカに限らない。スーダンやエチオピアもそうである。
むしろ現状は、サハラ砂漠を取り巻く地域が脆弱化していると捉える方が正確ではないだろうか。このように見ると、ガボンは例外になる。ガボンやギニアは無血クーデタであり、国内で激しい暴力は起きていない。これに対して、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャド、スーダン、エチオピアでは、国内で、急進イスラム主義勢力であれ、世俗の反政府勢力であれ、大規模な暴力が展開されている。フランスとアフリカの関係だけにフォーカスすると、現状の問題を捉え損なう恐れがある。
アフリカ諸国は総じて、2010年代半ば以降、経済的に厳しい状態に置かれてきた。資源価格の低下や中国経済の減速が、その背景にある。それに最近のコロナ禍やウクライナ戦争による世界経済の混乱が、追い打ちをかけた。加えて、サハラ砂漠周辺地域は、気候変動の影響を顕著に受けており、旱魃や洪水の被害が毎年のように報告されている。人口増加と土地不足から、農耕民と牧畜民の衝突も激化している。クーデタや紛争は、こうした状況下での暴力激化の一形態として捉えるべきではないだろうか。
(武内進一)