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今日のアフリカ

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ニジェールとガボン

2023/09/02/Sat

 ニジェールに続いてガボンでクーデタが起きたが、両者は国際社会から大きく異なる受け止めをされている。31日、スペインのトレドでニジェールへの対応をめぐってEUの会合が開かれたが、ボレルEU外相は、「ニジェールでは、民主的に選出された大統領が転覆された。ガボンでは、民主的性格がきわめて問題含みの選挙の後で大統領が転覆された」と述べて、両者を明確に区別した。
 ニジェールに関しては、ECOWASが軍事介入も辞さない構えを見せ、フランスがECOWASの姿勢を支持している。しかし、トレドでの会議では慎重論が中心を占め、フランスは孤立したと報じられている(31日付ルモンド)。また、アルジェリアが軍事介入反対の世論形成に熱心で、6ヶ月の移行期間の後に民政復帰することを提案し、同国外務省関係者がニジェールを訪問している。軍事介入をぶち上げたナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領(ECOWAS議長)も、31日には、9ヶ月の移行期間ならあり得ると述べた(1日付ルモンド)。軍事介入の可能性は低くなりつつあるが、バズーム大統領の解放など、国際社会が関心を注いでいる。
 一方、ガボンに関しては、AUが資格停止処分とし、主要諸国も批判や懸念を表明したものの、アリ・ボンゴ政権を復帰させよ、という声は聞こえてこない。そもそも選挙が不透明で信頼性を欠くものだったし、父親の代から半世紀以上続くボンゴ一族支配の継続をあえて要求するまでもないということだろう。
 アリの父オマール・ボンゴの時代、ガボンはフランスとの結びつきが強く、「フランサフリック」の代表格であった。よく引用されるオマール・ボンゴの言葉に、「フランスなきガボンは運転手のいない車だ。ガボンなきフランスはガソリンのない自動車だ」というものがある。この言葉に象徴されるような緊密な相互関係が両国を結びつけていた。
 しかし、1日付ルモンドの特集記事によれば、アリ・ボンゴの代になってこうした関係は弱まった。今回のクーデタ直後、自宅軟禁に置かれたアリ・ボンゴがカメラに向かって「頼む。騒ぎを起こしてくれ」と述べる画像が拡散したが、アリはフランス語ではなく英語で"Make noise"と述べていた。その姿は弱々しく、クーデタを起こされたことを見る者に納得させるものだった。
 大統領選挙でアリ・ボンゴの対抗馬であったアルベール・オンド=オサは、今回のクーデタは宮廷クーデタであり、ボンゴ一族の誰かが背後にいる、と述べている(1日付ルモンド)。軍事政権トップのオリギ=ンゲマは4日に移行期大統領への宣誓式を行うと報じられているが、その後に新政権の性格が見えてくるだろう。
(武内進一)