7月26日に起こったニジェールのクーデタに対して、Ecowas(西アフリカ経済共同体)は軍事介入を含む強硬な姿勢で民政復帰を促している。7月30日の会合で1週間以内の民政復帰を要求したが、その期限を過ぎても軍事政権側に大統領を復帰させる様子はない。むしろ、軍事政権は、7日に首相、10日にはその他の閣僚を任命するなど、本格的な統治に乗り出す構えを見せている。
一方、Ecowasの軍事介入に反対する声も聞こえるようになってきた。5日、ナイジェリア上院は、軍事介入には議会の事前承認が必要だと述べた。上院議員の多くは、介入に反対姿勢を示した。また、同じ5日、アルジェリアのテブーン大統領がTV演説で軍事介入に反対姿勢を示し、チャドはEcowasの会合に参加した後で、軍事介入には参加しないと述べた(5日付ルモンド)。
ナイジェリア大統領のボラ・ティヌブは軍事介入も辞さない姿勢を示し、コートジボワールのワタラ大統領もこれに同調している。一方で、ナイジェリア国内には、軍事介入に積極的な意見は多くないようだ。全国的に、経済危機のなかで軍事介入をする余裕などない、という意見が強く、特に北部では介入のネガティブな影響を懸念する声が強い。野党の人民民主党(PDP)は反対声明を出し、有力紙Punchも社説で反対を主張した(10日付ルモンド)。
14日には、アフリカ連合(AU)の平和安全委員会(PSC)が開催され、軍事介入を支持しない立場が採択された。PSCは15ヵ国からなり、コンセンサス方式で意思決定がなされる。会議では、西アフリカブロック(出席国はナイジェリア、セネガル、ガンビア、ガーナ)が孤立し、議長を務めたブルンジのンダイシミエ大統領のイニシャティブで、方針決定がなされたという。AUがEcowasなどの準地域機構と異なる立場を表明するのは異例で、AU事務局長のムサ・ファキ・マハマトは、11日に、Ecowasの決定を強く支持すると述べていた(16日付ルモンド)。
軍事介入を選択しないことも一つの見識である。そうなると、サヘル地域を覆うようになった軍事政権とどう付き合っていくのか、を真剣に考える必要がある。
(武内進一)