中央アフリカでは、去る7月30日に憲法改正の国民投票が実施され、その結果が8月7日に発表された。国家選挙委員会の発表によれば、95.27%の圧倒的多数で改正案は採択された。投票率は61.10%であった。
この国民投票では、ロシアの民間軍事会社ワグネルの兵士がロジスティクスを支援した。中央アフリカではトゥアデラ大統領の身辺警護をワグネルが担当するなど、その存在感は非常に強い。
今回の憲法改正は、直前まで内容が明らかにされないなど、不透明なプロセスで進められ、国民がどの程度内容を理解して賛成票を投じたかは疑問である。ただし、この憲法改正によって、中央アフリカの政治体制には無視し得ない変化が生じる。
重要な点として、大統領の任期制限が撤廃され、その任期が一期5年から7年へ延長される。トゥアデラ大統領は今後、任期制限を気にすることなく、大統領選挙に出馬できる。
それ加えて、8日付ルモンド紙は3点を重要だと指摘している。第一に、憲法裁判所が委員会に改編され、そのメンバーは政府当局が任命することとなった。すなわち、憲法裁判所は政府からの独立性を失った。第二に、鉱物部門の契約に際して、国会の関与が不要になった。そして第三に、副大統領ポストが創設された。
一方で、この憲法改正により、二重国籍者が大統領選挙への立候補資格を失った。これによって、有力な野党政治家が次期大統領選挙から排除された。
今回の憲法改正は、総じて現トゥアデラ政権の永続を方向付け、その権威主義化を容認するものである。昨年、憲法裁判所判事が今回の憲法改正に異議を唱え、その後更迭された。また、政府がロシアと結んだ鉱物資源取引について、国会議長が調査を要求したことがあった。今回の憲法改正は、政府に対するチェックアンドバランスの機能を失わせる内容を含む。
トゥアデラ政権はワグネルなど外部の力を借りて治安を安定させ、自らへの支持を集めようとしている。治安維持機能をアウトソーシングし、民主主義を毀損しても、政権への支持は維持できるのだろうか。注意深い観察が必要になる。
(武内進一)