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今日のアフリカ

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中央アフリカで中国系鉱山採掘企業襲撃される

2023/03/26/Sun

 19日、中央アフリカ内陸部のバンバリ(Bambari)近くの鉱山が襲撃された。この鉱山では中国が出資するGold Coast Groupが採掘事業を行っており、襲撃により中国人9名が殺害され、2名が重傷を負った。翌日、中国の習近平国家主席は、中央アフリカ政府に対して、2人の負傷者に必要な手当てをし、犯罪者を処罰することを求めた。
 22日には首都バンギで、殺害された中国人を悼む政府主導のデモがあり、約200人が動員された。このデモでは中国を支持する横断幕が掲げられ、中央アフリカと中国、ロシアとの友好関係が強調された。中央アフリカ政府はこの事件について調査委員会を設置し、3週間をめどに報告書が提出される予定である。
 政府は、反政府勢力のCPC(Coalition des Patriotes pour le Changement:「変化のための愛国者同盟」)がこの事件に関与したとして、非難している。CPCは前大統領フランソワ・ボジゼを指導者とし、様々な出自の兵力を糾合した武装勢力である。2020年にはCPCの攻撃が首都に迫り、政府はロシアの民間軍事会社ワグネルとルワンダ政府軍に支援を仰いでようやくこれを撃退した。それ以降、治安状況の深刻さは若干軽減したものの、首都を離れれば反政府勢力が支配する状況が続いている。一方で、CPCは襲撃への関与を否定し、事件を引き起こしたのはワグネルだと主張している(24日付ルモンド)。
 事件の真相は未だ不明だが、この事件はトゥアデラ政権へのダメージを意図したものだと考えられる。もともとフランスとの関係が深い中央アフリカだが、2016年に発足したトゥアデラ政権の下でロシアへの依存を深めた。現在は中露との親密な関係を誇示しつつ、憲法改正と三期目の任期を視野に入れている(24日付ルモンド)。こうした政権のあり方に不満を持ち、不安定化を図る勢力が事件を引き起こした可能性が高い。
 アフリカ政治でよく指摘されることだが、中央アフリカにおいても、競合する政治勢力は常に国際関係の力学を念頭に置き、それを国内権力闘争に利用している。
(武内進一)