1月13日から、アルジェリア南東部のダクラ(Dakhla)難民キャンプで、ポリサリオ戦線の第16回党大会が開催され、2,300人が参加した。20日には投票により、現職のガリ(Brahim Ghali)(73歳)がポリサリオ戦線の事務局長、そしてサハラ・アラブ民主共和国大統領に選出された。
党大会の様子を報じた23日付ルモンド紙によれば、ガリの再選はすんなりとはいかず、ポリサリオ戦線内部の分裂が明らかになった。議場からガリに数多くの質問が飛び、サイエド(Bachir Mustapha Sayed)がガリの政権運営を批判して、対抗馬として立候補した。最終的にガリは、69%の得票率で当選した。
今回の大会は、モロッコとの間で1991年に結ばれた停戦協定が2020年11月に破棄されて以来、初めてのものだった。党大会のスローガンとして「戦争をエスカレートする(intensifier la guerre)」が掲げられ、ルモンドのインタビューに対してガリは、1980年代のような武装闘争に回帰すると表明した。しかし現実には、モロッコとの間の低強度紛争は成果を生んでいない。
西サハラ情勢はここのところ、解決に向けた進展がない。1991年にモロッコとの間で停戦協定が結ばれ、独立の可否を問うレファレンダムが実施されることになったが、誰が投票権を持つかをめぐって議論が行き詰まった。2007年には、モロッコが自国の主権下での自治構想を打ち出し、最近になって米国やスペインがこれに同調した。しかし、ポリサリオ戦線はこの構想を完全に拒否している。
難民キャンプは、アルジェリアと西サハラとの国境に近くにあり、環境は過酷である。夏には気温が50度を超え、冬の夜には0度を下回る。住民の3分の1は17歳以下で、その大半はキャンプで生まれた。もちろん彼らは、西サハラ本国を知らない。しばしば洪水と砂嵐に見舞われる地域で、7.6%が低栄養に苦しみ、28%に成長の遅れが見られる。2017年段階で、5つの難民キャンプに17万3000人が生活している。近年は、コロナとウクライナ危機の影響で支援は減少している。
西サハラ問題の停滞は、地域的にも大きな悪影響を及ぼしている。米国やスペインがモロッコとの関係緊密化に動く一方、モロッコとアルジェリアの関係は近年極めて悪化している。ヨーロッパとアフリカの結節点であるマグレブの火種は、国際政治のなかでその扱いがますます難しくなっている。
(武内進一)