今週、インターネットガバナンスについての国連フォーラムが、エチオピアのアディスアベバで開催されている。第17回になるこのフォーラムで焦点があたるのは、「デジタル化における貧困」である。世界的にネット使用率は男性の方が高く(男性62%、女性の57%)、教育水準が高いほど高くなり、開発途上国ではこの傾向は強まる。こうした格差を受けて、フォーラムは、現在インターネットへのアクセスの無い27億の人々に、オープンで自由かつ安全なデジタルの未来のための大胆なソリューションを提供することを目的としている(UN 11月29日)。
アフリカにおけるデジタル化への期待は大きい。他の地域に遅れをとっているものの、インターネットアクセス率は急速に拡大しており、アフリカのデジタル経済は2030年までに1800億ドルに達すると予測されている。デジタル革命はアフリカ大陸自由貿易地域(AfCFTA)の実現にも貢献するという見込みもあり、経済分野で様々な機会を生み出すことが期待されている。また、投票や公的サービスのデジタル化、オンライン化に伴う市民による政治への直接的なアクセス、デジタル・アクティビズムの広がりによる、ガバナンスの向上や民主主義に対する向上効果も注目される。
しかし、インターネットサービスの制限が、市民の声の抑圧のために使われる場合も多い。たとえば、2017年以降アフリカの31国家がソーシャルメディアを封鎖したとされる。また、フェイク・ニュースの蔓延やオンラインにおけるハラスメント、政治権力による検閲、サイバー犯罪の広がりなど、デジタル化は負の側面も大きい。それに対する各国の取り組みにはばらつきがあり、十分とはいえない状況だ(ecdpm 11月14日)。
さらに、グローバルなデジタル地政学からすると、アフリカはデジタル労働、ユーザーデータ搾取など様々な点で搾取される傾向にあるという。デジタル空間における植民地化とも言われるこの動きに抵抗するために、地域全体で戦略やルールを作る必要性が近年認識されてきている。たとえば欧州のシンクタンクは、市民データの保護、使用、共有、グローバルテクノロジー企業への課税、監視技術の使用、人工知能の規制に関する問題など、個々の国では対応してきれない問題に取り組むために、既にデジタル変革戦略を練り上げて来たアフリカ連合(AU)を中心とした行動を提案している(ecdpm 10月10日 )。刻一刻と広がるデジタル化の中、負の側面を最小限にとどめ、機会を最大限に拡大するためには、国際協調を含めた早急な対策が必要となるだろう。
(村津蘭)