6月20日、ベルギーがコンゴ民主共和国に対して、同国の初代首相ルムンバの遺物(歯)を返還した。遺物の返還は2020年に約束されていたが、コロナ禍の影響もあって公式式典が延期されてきた。この日、まず「プライベート」な式典が行われ、ベルギー連邦検察官がルムンバの歯が入った小箱を遺族(子供たち)に手渡した。その後、この青色の小箱は棺に納められ、ブリュッセルのエグモン宮で公式式典が開催された。
コンゴ初代首相のルムンバの暗殺(1961年1月)には、当時のベルギー当局が関与していた。ルムンバはコンゴ東部のカタンガで暗殺され、遺体はバラバラに切断された上に硫酸で溶解された。現場に居合わせたベルギー人警察官が歯を持ち帰り、私的に保存していた。2000年代になってベルギーは、議会が調査委員会を設置するなどしてルムンバ暗殺に関する調査を進め、責任を認めていた。こうした経緯のうえに、今回の返還式典が行われたのである。
式典でデ・クロー(Alexander De Croo)首相は、ルムンバ暗殺に対するベルギー政府の責任について新たに謝罪した。「私はご家族の前で、当時のベルギー政府が独立したコンゴの首相の命を奪う決定をした責任について、この機会に私から、ベルギー政府の謝罪を表明したいと思います。」(Je souhaite, en présence de sa famille, présenter à mon tour les excuses de gouvernement belge pour la manière dont, à l'époque, il a pesé sur la décision de mettre fin aux jours du premier ministre du Congo indépendent....)という明確な謝罪であり、遺物返還が「遅すぎた」と認めた。
式典の後、ルムンバの遺物はブリュッセルのコンゴ大使館に向かい、アフリカ人コミュニティに公開された。そして、21日夜にコンゴの首都キンシャサに向かった。コンゴでは、生まれ故郷のサンクル(Sankuru)州オナルア(Onaloua)をはじめ、ルブンバシやキサンガニなど各地を巡回したのち、6月30日の独立記念日にあわせて埋葬が行われる予定である。
ルムンバの遺物返還はベルギー・コンゴ二国間関係で画期的な意味を持つが、ルワンダとの間で緊張が高まっている今日的文脈において、人々のナショナリズムを刺激することになろう。