16日付ルモンド紙によれば、コンゴ民主共和国の保健当局は、キンシャサで感染者数が急増しており、5月の初旬~中旬に最悪の時期を迎えるだろうとの予測を発表した。チセケディ大統領に近い人々も多く感染しており、15日には彼の父方オジが新型コロナ感染症のため亡くなった。
コンゴが直面する感染症は、新型コロナだけではない。コンゴ東部では、終息に向かったかに見えたエボラ熱の感染者が再び見つかり、14日には子供が死亡する事例が報告された。
こうした状況下でも、政治の動きはめまぐるしい。4月8日、官房長官のカメレ(Vital Kamerhe)が、大規模公共工事の資金利用をめぐる疑惑で逮捕された。カメレは政党「コンゴ国民同盟」(UNC)の党首で、先の大統領選挙ではチセケディに協力した有力政治家である。チセケディは就任後、景気浮揚策として、「大統領の100日プロジェクト」と呼ばれる大規模公共投資事業を打ち出した。この事業については、不明瞭な資金利用が指摘され、経済効果にも疑問符がついている。カメレの逮捕容疑は、この事業資金をめぐるものである。
カメレの逮捕について十分な情報はないが、16日付アフリカ・コンフィデンシャル誌は、チセケディにとって悪い話ではないと分析している。この逮捕によって、2023年の大統領選挙ではチセケディに代わってカメレが立候補するという選挙時の密約を反故にすることができる、という見立てである。ただし、「大統領の100日プロジェクト」をめぐっては、有力銀行の幹部などが複数逮捕されており、議会などで多数派を握るカビラ前大統領派は、これを機にチセケディ追い落としを狙っているとの見方もある。チセケディが危ない橋を渡っているという現実に変わりはない。