4月2日付でセントリー(The Sentry)が公開した報告書は、南スーダンにおいて金の採掘が汚職と紛争を引き起こしかねないと警告している。セントリーは、人権活動家ジョン・プレンダーガストとアメリカ人俳優ジョージ・クルーニーらが、アフリカ諸国における戦争犯罪者と汚職マネーのつながりに関する調査と政策提言を行うために立ち上げたプロジェクトチームである。最新の報告書、「未開発と未整備:南スーダンの鉱業部門を脅かす汚れた取引(Untapped and Unprepared: Dirty Deals Threaten South Sudan's Mining Sector)」は、南スーダン政府の高官、州知事、軍の指導者たちが自らの親族や側近たちとともに、南部の中央・東エクアトリア州における金の採掘事業を独占的にコントロールし、汚職と紛争につながっていると指摘している。
この報告書は具体的に次のような事例をあげている。1)サルヴァ・キール大統領の親族と側近は、少なくても南スーダンの32の採掘会社の株を保有している。たとえば、大統領の娘は3つの採掘会社の株を保有し、ジェームズ・ワニ前副大統領の息子は別の3つの採掘会社の株を保有している、2)中国、エチオピア、南アフリカなど外国人投資家と南スーダン政府高官との共同経営による採掘会社がある、3)スーダン・南スーダンの政治エリートとつながりの深いスーダン人ビジネスマンがもっとも多くの金の採掘ライセンスを保有している、4)金が豊富な東エクアトリア州のカポエタ周辺では、東エクアトリア州の州知事が中央政府から独立して採掘ライセンスを発行している。5)予算不足に対処するために国防省が立ち上げた複数の会社が金の採掘ライセンスを保有しているが、ライセンスの取得に際し、法的に求められた要件を満たしていない可能性が高い、6)反政府軍がコントロールする地域では、採掘ライセンスなしで金の採掘と密輸が行われ、反政府軍の活動資金に充てられている。
2012年、南スーダン政府は、すべての採掘会社と零細採掘者に対し、採掘ライセンスの取得を求める鉱業法を施行し、それまでローカルかつインフォーマルに行われていた鉱物資源の採取をフォーマル化することを目指した。しかし、この報告書は、採掘ライセンスの取得プロセスや採掘会社の企業構造は、ほとんど情報開示がないため不透明であり、十分な採掘技術をもたない者も多いと指摘している。また、金の採掘と紛争との直接的な関連性は明確ではないものの、鉱区がある地域の多くでは紛争や人権侵害が起きている。このため、鉱業部門の汚職は、直ちに適切な対策がとられなければ、これまで内戦の火種となってきた石油と同じように資源をめぐる暴力を引き起こすだろうと警告している。
南スーダンの砂金採取は、砂金のパンニングを伴う手作業によって、世帯や共同体レベルで小規模に行われてきた。長い内戦と経済危機の間、砂金採取は、ローカルな人々が現金収入を得るための貴重な経済活動のひとつであった。独立後、金を含む鉱物資源の採取活動に対して、石油産業に依存する国の歳入を多角化するために産業化が期待された。しかし、この報告書は、無数の小規模な会社が金の採掘に乗り出す一方、南スーダンの政治・軍事エリートがその利益を独占し、汚職につながっていると告発している。南スーダンの「ゴールドラッシュ」は、搾取と汚職を受けやすい状況にある限り、さらなる紛争を引き起こす危険性をはらんでいる。