9月15日から16日まで、エチオピア北西部に建設が計画されている巨大ダム(グランド・エチオピア・ルネッサンス・ダム:GERD)に関する会合が開催され、エチオピア、エジプト、スーダンの政府高官らが参加した。およそ1年ぶりに三者がGERDについて協議する機会を持ったが、具体的な進展は見られなかった。
GERDは、エチオピアのタナ湖を源流とするナイル川支流(青ナイル)の上流部に設置される計画であるため、青ナイルの流域であり、またヴィクトリア湖を源流とする支流(白ナイル)と合流する地域を含むスーダンと、その下流にあたるエジプトから激しい批判が出ていた。水利を巡る交渉が長期化するなかで、エチオピアとエジプトはときに激しく対立してきた。
2017年11月に三者の交渉は一旦停止したものの、2018年6月に就任から間もないアビィ・エチオピア首相がエルシーシ・エジプト大統領を訪問し、エジプトの水利の安定的確保を約束し、また、共同の記者会見で最終合意を目指す旨を述べるなど、エチオピア新政権がGERD問題の解決に前向きに取り組む姿勢がアピールされた。
だが、今般の報道内容からは、エチオピアに譲歩の姿勢は確認できない。9月17日付のロイター記事によれば、エジプト政府が本年7月末にエチオピアとスーダンに対してGERD問題に対処するためのプロポーザルを共有しつつ閣僚級協議を呼びかけたものの、エチオピアはそれを即時に拒否している。代わりに自国が作成したプロポーザルを議論する会合を提案するなど、依然として両国間に容易に埋めがたい溝があることが強調された。
次回のGERDに関する協議は、9月30日からカイロで開催される予定である。
参考資料:
常味高志「JETRO ビジネス短信:首脳会談でエチオピアのダム建設の最終合意を目指す」(2018/6/15)https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/06/e39097f543609be5.html
ロイター記事「Exclusive: Egypt and Ethiopia at odds as talks over Blue Nile dam resume」(2019/9/17)https://www.reuters.com/article/us-ethiopia-dam-egypt-exclusive/exclusive-egypt-and-ethiopia-at-odds-as-talks-over-blue-nile-dam-resume-idUSKBN1W1238