9月1日(日)以来、ヨハネスブルク、プレトリアでアフリカ系移民が経営する商店への襲撃、略奪が発生した。9月3日付ルモンド紙によれば、問題の発生源は交通セクターのようで、1年以上前から南ア交通業界では外国人ドライバーへの不満が高まっていたという。記事に詳しい説明はないが、南アでは以前から、タクシー(バンに乗客を乗せて走る路線バス)とウーバーなどの運転手の間で衝突があった。それに移民労働者をめぐる反感が重なって問題が大きくなった可能性がある。3日付ファイナンシャルタイムズは、南アトラックドライバーが外国人労働者に抗議し、ストを決行したと報じている。日曜以降は、交通業界にとどまらず、アフリカ系移民が経営する商店の略奪や焼き討ちに発展した。
これに対して、南アに移民を送り出しているアフリカ諸国は相次いで反発や懸念を表明した。最も迅速に動いたのはナイジェリアである。同国は南アに多くの移民を送り出しており、南アで移民襲撃があると多くのナイジェリア人が被害を受けてきた。月曜(2日)夜、ナイジェリア政府は、自国民を守るために決定的な手段に訴えると表明し、水曜にはケープタウンで開催される世界経済フォーラムへの副大統領の出席を取りやめた。ナイジェリアでは、報復と称して、南ア企業への攻撃が起こった。携帯電話会社のMTN、小売りのショップライトなどが攻撃され、水曜日に一時休業に追い込まれた。ナイジェリアでは、ポップスターのTiwa Savageがヨハネスブルクで今月開催される音楽フェスティバルに参加しないと表明するなど、民衆レベルでの南アへの怒りも目立つ。南アへの怒りはナイジェリアに留まらず、木曜日には、コンゴ民主共和国でもショップライトへの襲撃が起こった(6日付ルモンド)。
一方、冷静を呼びかける声も少なくない。ナイジェリアの情報文化大臣は、南ア企業への攻撃は、MTNやショップライトなどの企業に投資しているのはナイジェリア人なのだから、自分を攻撃していることになると述べた(6日付FT)。コンゴでも、市民団体のLuchaが「暴力を暴力によって非難することはできない」として略奪を断罪した(6日付ルモンド)。
南アでの反移民暴動(ゼノフォビア)は近年頻発している。この背景に、南アの若年黒人層の高い失業率があることは間違いない。事態は他のアフリカ諸国も同様だから、南アでの動きに反発して(あるいはそれを口実として)ショップライトなどの南ア企業を標的とした暴動が簡単に広がってしまう。ただし、事態は収拾に向かっているようで、背景にはアフリカ諸国間の連携があったと推測される。
南アの交通セクターについては、以前からインフォーマルな暴力組織との関係が指摘されてきた。こうした危険な業種から暴力が噴出した時に、いかにそれが広がらないよう早期に手を打つか。これが南アにとっての課題である。