4月5日、マクロン仏大統領は、ルワンダ内戦時のフランスの対応に関する調査委員会を設置した。委員会は、歴史学者や人権侵害に関する研究者9名から構成され、外務省や国防省などあらゆる政府機関の文書調査が認められる。委員長のヴァンサン・デュクレール(Vincent Duclert)はフランス第三共和政を専門とする歴史家だが、ジェノサイド概念についても研究歴があり、オランド政権期にはジェノサイドと人道に反する罪について調査研究チームを率いた経験を持つ。
1990~94年のルワンダ内戦においてフランスはハビャリマナ政権を支持し、派兵した。94年4月6日のハビャリマナ大統領搭乗機撃墜事件をきっかけとしてトゥチを主たる標的とする大虐殺が起こったことから、フランスの責任が指摘されてきた。特に、内戦によって政権を握り、現在まで政権の座にある「ルワンダ愛国戦線」(RPF)は、フランスがジェノサイドに加担したとの非難を繰り返してきた。大虐殺の契機となった事件から四半世紀が経過した機会に、政府文書を広く公開して真実を明らかにしようとの姿勢をマクロン政権が示したことになる。
調査委員会に関して最も論争となっているのは、ルワンダの専門家が排除された点である。フランスには当然ルワンダについて優れた研究を発表している研究者が何人もいるが、この委員会には一人も入っておらず、これを批判する意見は多い。加えて、当時のフランス大統領ミッテランの関連文書を管理するフランソワ・ミッテラン財団がこれまでのところ文書公開を拒んでおり、どの程度実効的な調査が可能なのか疑問視する声もある。
とはいえ、過去の疑わしい外交政策に関して、あらゆる政府関連文書へのアクセスを大統領から確約された調査委員会が設置されることは、前向きに捉えられるべきである。6日付ルモンド紙は社説で、ジェノサイドから四半世紀が経過した今、そのサバイバーも、犠牲者の家族も、そしてフランス国民も真実を知る権利があると述べ、委員会に期待を寄せている。
ルワンダ側の対応としては、政府系新聞ニュー・タイムズ紙が、批判的意見も紹介しつつ、調査委員会の設置自体は前向きにとらえる論調の記事を掲載している(6日付)。当面は静観という姿勢のようだ。ルワンダでは毎年、4月上旬に連日ジェノサイドの記念行事が行われる。そこで改めて、フランスの役割が議論されることになるだろう。
今日のアフリカ
フランスがルワンダ内戦時の対応について調査委員会を設置
2019/04/07/Sun