9月から10月にかけて、アフリカ5ヵ国で大統領選挙が実施された。そのなかで最も日本で報道されたのは、カメルーンであろう。10月12日に実施されたカメルーン大統領選挙では、92歳のポール・ビヤ(Paul Biya)が8期目の当選を果たした。ビヤは1982年からこの国の権力を握り続けている。
10月25日のコートジボワール大統領選挙では、83歳のアラサン・ワタラ(Alassan Ouattara)が四選された。10月29日のタンザニア大統領選挙では、サミア・スルフ・ハッサン(Samia Suluhu Hassan)が当選した。65歳のハッサンは、独立以来政権を握る与党CCM出身で、前大統領ジョン・マグフリ(John Magufuli)の下で副大統領を務め、彼が急死したあと大統領に昇格した。
カメルーンもコートジボワールもタンザニアも、事実上野党を排除した選挙だった。国民の不満も強く、特にタンザニアでは抗議行動に苛烈な弾圧が行われ、数百人以上が死亡したと言われる。タンザニアはCCMの一党優位体制が続いてきたが、これほどの抗議運動と犠牲者数は前例がない。
選挙で野党が勝利し、政権が交代した国もある。9月16日に実施されたマラウイの大統領選挙では、野党のピーター・ムタリカ(Peter Mutharika)が勝利した。ムタリカは85歳で、2014~2020年にも大統領を務めたが、今回の大統領選挙で現職のチャクウェラを破って当選した。10月9~11日に実施されたセイシェルの大統領選挙では、野党のパトリック・エルミニ(Mathew Antonio Patrick Herminie)が選出された。エルミには62歳。現職のラムカラワン(Wavel Ramkalawan)に勝利した。
アフリカは国の数が多く、選挙といっても多様な現実がある。とはいえ、近年特に、野党を抑圧し、事実上排除した選挙が多くの国で行われていることは憂慮すべきである。それは若者世代の不満を高め、結局は政権の不安定化をもたらすだろう。(武内進一)
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