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今日のアフリカ

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ホワイトハウス信仰局トップのアフリカ大湖地域歴訪

2025/11/08/Sat

 7日付けルモンド紙は、米国ホワイトハウスの信仰局長ポーラ・ホワイト(Paula White)のアフリカ歴訪について報じている。興味深い内容なので紹介する。

 ホワイトは1966年生まれ。福音派の牧師でテレヴァンジェリスト(TVなどのメディアを通じてで説教する伝道師)である。トランプ政権がホワイトハウスに設置した「信仰局」(White House Faith Office)のトップで、統一教会に解散命令を出した日本政府を批判したことでも知られる。

 ホワイトは、現在ガボンにおり、ルワンダ、コンゴ民主共和国、ウガンダを訪問する予定である。6月27日にルワンダとコンゴが和平協定を結んだ際、ホワイトはトランプ大統領、ヴァンス副大統領、ルビオ国務長官らとともに同席し、署名式を祝福する祈りを捧げた。

 ホワイトハウスはこのアフリカツアーを熱心に準備してきた。11月15日にはワシントンで、ルワンダのカガメ、コンゴのチセケディ両大統領が出席し、和平協定の署名式が予定されている。ホワイトのアフリカ歴訪は、その直前ということになる。

 コンゴでは、この10年の間に福音派教会の数が三倍に増えている。ホワイトはコンゴ滞在中にチセケディ大統領と面会するが、チセケディも熱心なペンテコスト派キリスト教徒である。

 ホワイトとチセケディは、「スピリチュアル・ファザー」を同じくしている。西アフリカで最も人気のあるテレヴァンジェリストのニコラス・ダンカン=ウィリアムズ(Nicholas Duncan-Williams)である。このガーナ人牧師はフェイスブックで170万人のフォロワーがおり、アフリカと米国の政治と宗教に影響を与えてきた。

 チセケディは、2019年1月に大統領選挙で「勝利」したが、その2ヶ月前にアクラに行き、ダンカン=ウィリアムズの教会であるAction Chapel Internationalでの宗教行事に出席している。ダンカン=ウィリアムズはその席でチセケディを祝福し、勝利を預言した。それ以来、彼はチセケディの「スピリチュアル・ファザー」となった。

 一方で、ダンカン=ウィリアムズはホワイトを「我が娘」と呼び、親密な関係を保っている。ホワイトは、2010年代にカリスマ派運動に宗旨変えをしたが、それ以来ダンカン=ウィリアムズを「スピリチュアル・ファザー」と呼び、しばしば彼を米国に招いてきた。

 彼は、2015年にホワイトの結婚式を主宰し、2016年にホワイトが第一次トランプ政権で福音派アドバイザリー・ボードのトップに任命されると、2017年1月20日のトランプ大統領就任式に招かれて祈りを捧げた。

 コンゴ側はホワイトとの関係を通じて、自分たちの主張がトランプ政権によりよく届けられると期待している。ホワイトは、キンシャサの前にキガリを訪れ、カガメと会談する。

 以上が記事の概要である。トランプ政権では宗教右派の影響力が強まっていると言われるが、ガーナのテレヴァンジェリストとの関係も含めて複雑な関係が構築されていることがわかる。これがコンゴとルワンダの和平協定に何らかの影響を与えるのか、これから注視する必要がある。もっとも、チセケディは2日にもカガメが「東部コンゴに領土的野心を持っている」と批判しているし(3日付ルモンド)、東部ではM23が独自に行政官を採用し、自前の行政機構を創ろうとしている(4日付ルモンド)。和平に向けた道のりは簡単ではなさそうだ。(武内進一)

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