19日付ルモンド紙の報道によれば、マリ西部でアルカイーダ系のイスラム急進主義勢力GSIMが、この数週間、外国企業、特に中国企業を狙った攻撃を繰り返している。6月に外国企業の生産設備を狙うと予告した後、7つの外国企業の工場が襲撃され、うち6つが中国企業であった。GSIMは外国企業に対して安全保障と引き換えにみかじめ料の支払いを求め、マリ政府の信用失墜を狙っている。
最近GSIMは、西部のカイ(Kayes)、中部のセグー(Segou)、南部のブグニ(Bougouni)などで、中国企業の砂糖工場や英国企業が開発するリチウム鉱山が襲撃された。
中国企業が多く攻撃されているのは、中国に対する恨みからではなく、マリ経済にダメージを与えるための合理的戦略だという。カイ周辺は金採掘が盛んで、セネガルとマリを繋ぐ経済回廊をなしている。GSIMにとって戦略的価値が高い地域である。
GSIMの攻撃で、これまでに少なくとも11人の中国人が誘拐された。中国政府は人数を公表していないが、軍事政権と密接に連携して誘拐された自国民救出に努力している。
マリにとって、中国は最大の経済パートナーである。2009~2024年のマリに対する中国の民間投資額は16億ドルで、中国政府は2000年以来137のプロジェクトで18億ドルを投資した。軍事政権登場後、中国はいっそうの関係強化に動いている。
軍事政権の登場とともに、マリはフランスに背を向けた。それとともに、中国、トルコ、ロシアといった国々がマリに接近した。ロシアは軍事協力が中心で、マリが不安定化すればその影響力が拡大する可能性がある。中国はマリの不安定化を望んでおらず、商業的利益のために安定を望んでいる。マリをめぐる中国とロシアの利害は、必ずしも一致していない。以上、19日付ルモンド紙の分析である。
マリでは、7月10日に軍事政権トップのアシミ・ゴイタを2030年まで政権トップとする法律が制定され(7月11日付ルモンド)、8月にはマラ(Moussa Mara)、マイガ(Choguel Kokalla Maiga)という二人の元首相が、それぞれ1日、19日に逮捕された。10日には、政権転覆を画策したとして、「少なくとも20人」の軍人が逮捕された(8月11日付ルモンド)。軍事政権は従来に増して強権化しているが、その足もとは相当に脆いようだ。(武内進一)
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