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今日のアフリカ

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米国とサヘル諸国との接近

2025/08/02/Sat

 マリ、ブルキナファソ、ニジェールのサヘル3国は、いずれも軍事政権が支配し、旧宗主国のフランスとは敵対関係にある。一方、米国はこれら3国に対して、違うアプローチを取っている。1日付けルモンドは、最近の米国とサヘル3国の外交関係について報じている。

 7月初め、ホワイトハウスの高官アタラー(Rudolph Atallah)が、バマコを3日間訪問した。彼は、国家安全保障会議でテロとの戦いに関する担当副局長を務めている。両国の軍事的、経済的協力を促進する目的での訪問で、マリのジョップ外相に対して、「マリが我々とともに仕事をすると決めれば、それは可能だ」と約束した。

 7月22日には、スティーヴンス(William B. Stevens)西アフリカ担当国務副長官がやはりバマコを訪問し、マリとの軍事的、経済的協力について協議した。テロリストグループの資金源を断つ必要性を強調するとともに、マリへの投資促進のために「米国商工会議所」の設立に言及した。ジョップ外相はこれを「ウィン・ウィン」だと評価した。

 スティーヴンスはまた、5月27日にワガドゥグを訪問してブルキナファソ外相と面会しており、サヘルに米国が復帰する意向を示したという。

 公式な外交関係の再構築も進められている。7月24日には、元ブルキナファソ国防相のクリバリ(Kassoum Coulibaly)が米国大使に着任し、トランプ大統領に信任状を提出した。ブルキナファソの米国大使は2年間空席のポストで、外交関係改善の意欲がうかがえる。

 また、5月には、ニジェールのフィッツギボン(Kathleen FitzGibbon)米国大使が正式に信任状を提出した。大使は2023年に着任していたが、クーデタを受けて信任状提出を見合わせていた。

 それに先立つ、4月末、ニジェールのラミヌ・ゼイン(Ali Mahamane Lamine Zeine)首相が米国を訪問し、アフリカ担当副国務長官のフィトレル(Troy Fitrell)と面談している。

 サヘル3国がロシアに接近していることは事実だが、それと同時に、米国との関係改善の動きが進んでいることは重要だ。フランスとの緊張関係だけに注目していると事態を見誤る。この地域は孤立していないし、トランプ政権もアフリカへの関心を維持している。(武内進一)

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