5月にナミビアの鉱山の町オラニエムントで初展示された「OMDisアーティスト・イン・レジデンス:2025アート展」が、7月29日、首都に移動し、2回目の展示を迎えた。
この展示は、オラニエムント・アートセンターが、首都のStArtアートギャラリーおよびナミビア芸術協会と共同で開催し、ドイツやナミビア出身の3名のアーティストによる写真、陶芸、絵画、映像などの作品が展示された。
オラニエムントは、ナミビアの南西部の南アフリカとの国境を流れるオレンジ川の河口近くにある、ダイヤモンド採掘産業で栄える小さな町である。オラニエムント・アートセンターは2023年にOMDis タウン・トランスフォーム・エージェンシーによって設立された新しいセンターである。OMDisは、Oranjemund Diamondsの略称であり、ナミビアのダイヤモンド生産量の85パーセント以上を供給してきたナムデブ・ダイアモンド・コーポレーションによって2019年に設立された特別目的会社である。彼らの使命は、オラニエムントの町の経済を2030年までにダイヤモンド採掘から自立経済へとシフトさせることである。地域観光や起業の支援に加えて、文化プロジェクトにも力を入れており、オラニエムント・アートセンターはその中核施設としての役割を果たしている。
センターでは、絵画、彫刻、音楽、裁縫、革細工などの教室を子どもや大人向けに開講したり、アーティスト・レジデンス・プログラムという、国内外のアーティストにオラニエムントで1か月滞在して制作をおこなってもらう独自のプログラムを主催したりしている。今回の展示では、このプログラムに参加したアーティストらがオラニエムントで生活しながら制作した作品が並んだ。アーティストらは、さまざまな媒体をもちいて、砂漠の移り変わる色彩、母性とアイデンティティ、土地に重なる記憶などを表現している。
なぜナムデブは近年になってOMDisを設立する必要があったのか。その背景には、オラニエムントの地中にある採掘可能なダイヤモンド鉱床が枯渇してきた事情がある。長年の採掘によって、アクセスしやすい場所にある地中のダイヤモンドが少なくなり、ナムデブは2017年に鉱山の段階的閉鎖計画を発表していた。その後、閉鎖の年が延長されたものの、地中のダイヤモンド産業は縮小傾向にある。そのため、経済の多角化を求める動きが高まっていた。一方、海洋のダイヤモンド採掘は反対に盛んにおこなわれるようになってきている。オラニエムント沖には、地中からオレンジ川を通って海に運ばれて海底に堆積した鉱床が豊富にあり、2020年代から、造船開発とともに生産量が増大し、現在のダイヤモンド生産量の約80パーセントを海洋採掘が占めるようになっている。
アーティストの一人であるナミビアの陶芸家ケブリン氏は、地元紙のインタビューにおいて、オレンジ川の粘土を採取し加工した作品について次のように語っている。「土地の永続的な存在、そしてかつてこの地域で生活していた狩猟採集民の存在が、それぞれの作品の創造、質感、そして感覚に反映されています」。ダイヤモンドが採掘しつくされた土地で、さらにその利益を得てきた会社が設立したアートセンターの展示において発表されたこの作品は、アイロニカルでうったえかけるメッセージの重さを感じる。(宮本佳和)
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