2023年4月以来続くスーダン内戦は、深刻な人道危機を生み出し続けている。最近の戦況は、ブルハーン率いる国軍が首都を概ね制圧する一方、ヘメティが指導するRSFは西部ダールフールの支配を強めるという構図になっている。ここに来て、周辺国の政治的不安定化への影響が顕在化している。
今年2月下旬、RSFはケニアのナイロビで会合を開き、スーダンに「平和統一政府」を樹立するための基本憲章を採択した。この会合には、青ナイル州や南コルドファン州を地盤とするSPLM-North(指導者Abdelaziz Al-Hilu)も参加した。国軍側は当然この動きに反発し、駐ケニア大使を召還した(2月21日付ルモンド)。
準軍事組織RSFがスーダン国軍と激しい軍事的衝突を継続する背景として、UAE(アラブ首長国連邦)の支援が指摘される。RSFはUAEに金を密輸し、その見返りに支援を得ている。ダールフールを拠点とするRSFに、UAEはチャド経由で武器を流している。UAEは、チャドのマハマト・デビィ政権にも巨額の支援を行っている。
RSFはダールフールでアフリカ系住民を虐殺しているが、デビィ政権を中心的に支えるザガワ(Zagawa)人にも多くの犠牲が出ている。チャドのザガワ人エリートのなかには、マハマトがRSFを支援する現状に強い不満を持つ者も多い(3月11日付ルモンド)。
南スーダンへの影響も懸念される。3月7日、アッパー・ナイル州で南スーダン国軍とホワイト・アーミー(ヌアー人民兵で、マチャル副大統領に近い)が衝突した。サルヴァ・キール政権はUAEとの関係が近く、2月下旬のナイロビでの会合にはサルヴァ・キール政権に近いSPLM-Northが参加した。これに対する対抗措置として、スーダン国軍がホワイト・アーミーを支援したと見られている(3月11日付ルモンド)。
スーダン内戦では、首都から東部を押さえる国軍側と、ダールフールや南部を押さえるRSF側という地理的対立構造が顕著になり、RSF側には周辺国(チャド、南スーダン)を通じて軍事物資が流入している。この構図のなかで、政治的不安定がスーダンから周辺へと広がりつつある。(武内進一)
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