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今日のアフリカ

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サヘル諸国で鉱業企業への圧力

2024/12/07/Sat

 12月6日、マリで金鉱を採掘するカナダのバリック・ゴールド社の社長(南アフリカ人)、また採掘サイトのマリ人責任者などに逮捕状が出された。資金を不法に持ち出した嫌疑がかけられている(6日付ルモンド)。最近、サヘル諸国では、様々な形で鉱産物採掘企業への政治的圧力が強まっている。

 11月8日、マリの首都バマコで、オーストラリアの金鉱山開発企業レゾリュート・マイニング社の英国人幹部3名が拘束された。レゾリュート社は、租税支払いをめぐって政府と係争中であったが、幹部の逮捕を受けて1億6000万ドルの支払いに同意し、3人は25日に解放された。バリック・ゴールド社も9月に幹部4人が拘束されている。

 マリ、ブルキナファソ、ニジェールでは、軍事政権の発足以降、天然資源に対する主権を強調する主張が強まり、政府が鉱業企業への出資割合を引き上げたり、国有化したりといった動きが目立っている。

 マリは昨年鉱業法を改定し、企業からの納税額を増やそうとしている。同国鉱業部門に展開する企業は、政府との再交渉を求められている。その中で、バリック・ゴールド社やレゾリュート社のような大手は厳しい条件を突きつけられている(11月13日付ルモンド)。

 ブルキナファソも、この7月に鉱山法を改定し、最近金鉱山を2つ国有化した(11月25日付けルモンド)。

 ニジェールでは、政府とフランス企業オラノ(旧アレヴァ)社がウラン採掘をめぐる確執を続けている。昨年7月のクーデタ以降、軍事政権はフランス企業のオラノ社に厳しい政策を取るようになった。この6月には、最大のウラン埋蔵地イムラレンにおけるオラノ社の開発権を剥奪した。

 12月4日には、オラノ社が、ニジェールの子会社であるソマイール社に対する操業上のコントロールを失ったとの声明を発表する事態となった。現在ニジェールは隣国ベナンとの対立を抱え、ベナンの港湾を経由してウラン輸出ができない状態が続いている。このため、オラノ社は、多数株式を保有するソマイール社のウラン生産を停止すると発表したのだが、その後もニジェール側の指示で操業が続けられている。

 ニジェール軍事政権は、天然資源に対する主権は自分たちのものだとして、ウラン生産を続ける姿勢である。

 こうしたサヘル三国の動きには、イスラム急進主義勢力による国内治安悪化に目立った成果を上げられない軍事政権の暴挙という側面が確かにある。しかし、鉱業部門への政府による規制強化や契約の見直しがアフリカで広がっていることに注意すべきだろう。

 セネガルのジョマイ・ファイ政権は、発足以降、石油・ガス開発の契約見直しに繰り返し言及している。コンゴ民主共和国のチセケディ政権も、前政権で結ばれた鉱山開発の見直しを行ってきた。

 主権意識の高まりは軍事政権に限られない。自分たちの天然資源が不当に搾取されているという認識は、その感情と結びついている。(武内進一)

東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。