9月13日、南アフリカで歳入庁長官、財務相、公企業担当相などを歴任したプラヴィン・ゴーダンが死去した。75歳だった。この6月まで閣僚を務めていたが、ガンを発症し、短い闘病生活の後に世を去った。
ゴーダンは1949年生まれ。インド系コミュニティ出身だが、インド系住民にのみ選挙権を与えるアパルトヘイト政権の方針に反対し、ANC(アフリカ民族会議)、そして南ア共産党に入党した。
ダーバン・ウエストヴィル大学(アパルトヘイト期にインド系住民が設立した大学。現在はクワズールー・ナタール大学の一部)で薬学士号を取得し、病院に勤務したが、1981年に反アパルトヘイト運動のため解雇された。
マンデラ解放後はANC交渉団に加わり、政権移行に重要な役割を果たした。1999年には南ア歳入庁長官に就任。徴税業務担当機関を強固な組織に育てた。
ズマ政権下で財務相となったが、汚職に強く反対して疎んじられ、2014年、2017年と二度にわたって解任された。
今年の選挙でANCが大敗を喫したあとは、DA(民主同盟)との連立を強く支持した。
家族によれば、死の数日前に「自分は何の悔いもない。自分たちはよくやった」と述べたという。親しい友人は、「彼はダーバンのストリートで育ったアクティビストとして、人々の記憶に留まることを望んでいた」としている(13日付ファイナンシャルタイムズ)。
南アフリカには、まだまだこういう人が大勢いる。それがこの国の強靱さを支えている。(武内進一)
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