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今日のアフリカ

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アフリカで競合する「ミドルパワー」

2024/09/16/Mon

 8月30日付ファイナンシャルタイムズ(FT)紙社説は、「ミドルパワー」の競合という観点からアフリカをめぐる国際関係を整理している。

 近年、トルコ、ブラジル、ロシアといった「ミドルパワー」がアフリカ諸国への進出を競い、これによってアフリカ側は投資誘致先や戦略的パートナーの選択肢を増やしている。

 長年、アフリカ諸国のパートナーは、ヨーロッパの旧宗主国が中心だった。しかし、フランスの例が示すように、旧宗主国の対応はアフリカ側から反感を持たれる結果となっている。

 アメリカは冷戦終結後、次第にアフリカとの関係を薄めている。アフリカは遠く、米国内の厳格な反汚職法制のために投資が難しくなっている。米国政府は、アフリカをほぼ安全保障の観点からしか見ていない。

 米欧の影響が薄れて空白が生まれ、そこに中国をはじめ、インドや湾岸諸国も含む多くの国々が関与する結果となっている。

 アフリカには資源があり、国連でも投票を通じて影響力を行使できる。市場としての魅力が大きく、エネルギー転換のためにコバルト、リチウム、マンガン、銅などの鉱物資源への需要が高まっていることも、アフリカ進出への競争を強める要因となっている。

 これはアフリカ側から見れば選択肢の増加だが、危険も無視できない。新興国の投資は、先進国のような厳しい審査プロセスを欠いている。漁業や鉱業部門では中国企業の搾取的な行動が指摘されているし、債務持続性を度外視した貸付や採算に合わない投資などの弊害も無視できない。

 さらに、アラブ首長国連邦によるスーダン内戦への介入、ロシアによるアフリカ諸国への傭兵派遣のように、「ミドルパワー」が影響力を高めようとするなかで軍事物資を流し込み、紛争が激化する状況もある。

 このFTの社説は、欧米知識人の視点からアフリカをめぐる競合の現状を捉えているが、考えさせられる点も多い。確かに、グローバリゼーションが進むなかでアフリカに生まれた経済機会を最大限活用したのは、「ミドルパワー」の国々だったと言えるだろう。アフリカの投資環境に先進国企業が二の足を踏むなかで、貿易投資関係を顕著に深化させたのは、中国をはじめとする新興国だった。

 こうした国々はいわば市場主導でアフリカとの関係を深めてきたのである。しかし、その一方で、紛争や貧困、環境など、市場だけでは対応できない問題が深刻さを増している。こうした問題への対応においてこそ、先進国や国際機関の役割が必要とされるのではないだろうか。(武内進一)

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