8月28日付のファイナンシャルタイムズ紙は、アフリカの産油国に関する興味深い記事を掲載している。
石油価格は2021年以降上昇傾向にあるが、アフリカの多くの産油国は好景気を享受していない。石油価格は2023年には1バレル82ドルに達し、多くの国がベンチマークにおいている65-70ドルを上回った。しかし、アフリカの産油国10ヵ国の貿易黒字は、石油価格が1バレル79ドルだった2010年を下回る水準に留まっている。比較して、非アフリカのOPEC諸国の貿易黒字はより大きく、債務/GDP比率はより低い。
なぜこうした差が生まれるのか。原因のひとつは、主要アフリカ諸国の石油産出量が低下傾向にあることだ。コンゴ・ブラザヴィル、アンゴラ、赤道ギニアは、石油生産量が大幅に低下した。2010年に250万バレルだったナイジェリアの原油生産量は、2023年には150万バレルに低下した。
一方、サウジアラビア、オマーン、ロシア、カザフスタンなど非アフリカのOPECプラス諸国は、生産量を増加させている。イラクでさえ、同じ時期に石油生産量を倍増させている。アフリカ諸国の生産量低下の要因として、長年にわたり適切な投資が行われなかったこと。不適切で時代遅れの法制度、オンショア生産における地域コミュニティとの緊張関係などが挙げられている。
需要サイドの要因としては、アフリカ原油の輸出先の変化がある。シェール革命の結果、米国は2018年に世界最大の産油国になり、アフリカからの原油輸入は大幅に低下した。中国によるアフリカからの原油輸入も、2018~2023年に28%低下した。特にこれは、もともと中国が主要な輸出先だったアルジェリア、アンゴラ、南スーダン、リビアで顕著だった。一方で、中国の非アフリカOPEC+(ロシアを含む)からの原油輸入量は、同じ期間に78%増加した。
ヨーロッパは依然としてアフリカ産原油の重要な輸出先だが、脱炭素計画のために、石油消費量を大きく減らす見込みである。インドは、ロシアからの石油輸入を急増させている。
アフリカにおける石油生産の低下は、世界に影響する。アフリカ政府は歳入減に苦しみ、財政危機はエネルギー転換のための政策執行を難しくするだろう。
悲観的だが興味深い記事である。脱炭素化の流れを受けて、石油依存を減らす必要がある。しかし、アフリカの多くの国にとって、原油はなお最大の輸出品目である。経済危機が深刻化すれば、脱炭素化を進める余裕もなくなってしまう。
(武内進一)
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