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今日のアフリカ

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ケニアの増税法案取り下げをめぐって

2024/07/07/Sun

ケニアでは、6月25日、大幅な増税法案に反対するデモ隊が警官隊・国軍と衝突し、多数の死傷者を出した。ケニア人権委員会は死者数を39人としている。結局、26日にルト大統領が法案に署名しない旨演説し、増税を撤回した。
 この動きをめぐっては、すでに日本でもキニュア・キティンジ氏が詳細な分析を発表している。法案の内容や法案提出プロセスの稚拙さは、否定できない。
 少し長い目で見ると、これは2010年代以降に膨らんだ政府債務をどのように処理するのか、という問題に他ならない。増税が取りやめになったことは庶民には喜ばしいが、債務問題は依然として残っている。前政権時に多額の借入によって道路、鉄道などを建設した結果である。
 2000年代の資源高と好景気の後、アフリカ諸国は総じて財政支出を拡大した。ユーロ債を発行する国が増えたのもこの時期である。しかし、2010年代半ばから資源価格が落ち込み、それにコロナ禍とロシア・ウクライナ戦争などの影響が加わったことで、債務危機に陥る国が出てきた。ザンビア、ガーナ、エチオピアでは、債務不履行(デフォルト)宣言を余儀なくされた。。
 増税しない選択をしたケニアは、他の方法で借入金を返済するしかない。脆弱な貧困層の負担を抑えつつ、債務返済の資金作りをするという難題にルト政権は取り組まねばならない。
(武内進一)