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今日のアフリカ

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ODAを大幅削減するヨーロッパ諸国

2024/11/20/Wed

 14日付ルモンド紙によれば、ヨーロッパ主要国でODAを大幅に削減する動きが相次いでいる。直接的には、右派政党が政権を握った影響が強い。ODAの使い方にも大きな影響が出ている。

 フランスの来年度予算案では、ODAが34%削減される。オランダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなども、ODAを削減する意向を示している。2023年のODA世界総額は2237億ドルで、4年連続で増加した。しかし、ODAの多くはウクライナや難民関連のものだった。

 右派と極右政党が主導するスウェーデンは、2024年から25年にかけて、9億7500万クローネ(8400万ユーロ)の援助を削減する。その後も削減を続け、2027年以降は援助額が国民総所得の0.7%水準を下回る見込みである。右派と極右が政権を主導するオランダも、3年かけてODAを三分の二に減らす。ドイツは、2022年に国民総所得の0.85%のODAを提供していたが、2023年には0.79%、2024年には0.7%に減少させる。英国も、援助額を国民総所得の0.7%から0.5%に減らす意向である。

 ODAを自国企業の利益や移民・難民対策に用いられることが増えた。移民対策の観点からチュニジア、モロッコ、さらにはニジェールに接近するイタリアのメローニ政権はその典型だが、スペインもサンチェス政権の下で、カナリア諸島に漂着する不法移民の出身国向けに援助を振り向けようとしている。英国では、ODAの28%がアサイラムシーカー向けの資金として内務省に配分されている。

 開発援助が供与国の経済的利益に向けられることも一般的になった。イタリアは、最大の石油・ガス企業であるENI創業者の名を取ったMattei計画を打ち出し、途上国、特にアフリカの石油・ガス、民間部門支援を推進している。EU議会でも、「EUの経済利益を強化し、エネルギー移行に必要な原材料へのアクセス」を確保するといった主張が強まり、貧困削減には言及されなくなった。被援助国の裁量で契約企業を選べる援助は次第に少なくなり、ひも付き援助が増加している。

 一方で、人道援助や最貧国向けの援助は大幅に削減されている。2022年には援助総額の22.5%が最貧国に向けられたが、その10年前には30%が最貧国向けであった。

 ODA政策の国際潮流はこれまでも様々に揺れ動いてきたが、2010年代以降はそれが現実主義に大きく振れている。2015年の開発協力大綱で国益を前面に打ち出した日本の動きも、この文脈にある。ただ、ヨーロッパでは、右派政党、極右政党が政権を握ったことで、急激な動きになった。上記ルモンド紙でも、左派のサンチェス政権が成立しているスペインではODA削減の動きは顕在化していないと報じられている。(武内進一)

東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています