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今日のアフリカ

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ナミビアにおける8月26日

2024/09/15/Sun

 ナミビアにおいて8月26日は、植民地軍と戦った英雄たちを追悼する日である。国営放送は、国民の祝日でもあるこの日、オシコト県のオムシア・レクリエーション・パークにおいて、数千もの人びとがナミビアの独立と自由のために戦った英雄たちを追悼したことを報道している。

 ナミビアは、1884年からドイツ、1920年から南アフリカによる植民地支配を受けていた。1990年の3月に独立を迎えて以来、南アフリカからの独立を目指して最初の戦いが始まった8月26日を国民の祝日「英雄の日」として記念している。

 ナミビア軍の最高司令官を務めるムブンバ大統領は、軍事パレードで始まった開会式において、独立闘争中に、キューバ、ロシア、中国、アルジェリア、北欧諸国、国連などの国々から受けた国際支援に感謝の意を示している。また彼は、ナミビアにおけるグリーン経済の好調な発展、ガス田の開発、沖合のオレンジ盆地での石油発見などを指摘し、ナミビア経済について楽観的な見方を示している。

 一方、現与党の元となる独立闘争軍に敵対し、南アフリカ植民地政府側についていたヘレロにとっても、この日は特別な日である。ドイツ植民地期の1904年から1908年にかけて、ドイツ軍は先住民のヘレロとナマに対してジェノサイドをおこなった。当時ヘレロを率いていた最高首長のサミュエル・マハレロは、隣国のボツワナに亡命し、客死した。その後、遺体がナミビアの彼の故郷に再埋葬された日が8月26日だった。翌年から彼の墓に参るために、人びとが集まるようになり、今年2024年は第100回目の墓参りの年にあたる。

 国をあげて「英雄の日」の式典がオシコト県で開かれる中で、サミュエル・マハレロの墓があるオチョゾンデュパ県のオカハンジャでは、彼の子孫で構成される伝統的権威のマハレロ派が追悼式典を主催し、墓参りをしている。しかし、すべてのヘレロがオカハンジャに集まったわけではない。一部のヘレロはオシコト県での式典に参加しており、さらにマハレロ派に対抗する派閥は別日に式典を開き、墓参りをしている。

 毎年8月26日は、それぞれの英雄を追悼し称える日であると同時に、現在の国政の状況ならびにヘレロ内部でのマイクロポリティクスが表層化する日でもある。(宮本佳和)

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