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今日のアフリカ

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トランプ政権がレソトに50%の関税

2025/04/09/Wed

 米国のトランプ政権は4月2日に「相互関税」を発表したが、そのなかで南部アフリカの小国レソトに50%もの関税を賦課した。レソトについて、トランプは3月、USAIDの事業を批判する文脈で「誰も名前を聞いたことのない国だ」と揶揄していた。

 レソトは周囲を南アフリカに囲まれた国だが、米国向けのアパレル輸出を行うアジア系企業の工場が立地している。この産業部門には約36,000人が就業しているが、うち12,000~15,000人が中国、台湾、バングラデシュ企業の工場で働き、Levi's、Calvin Kleinなどのブランド名で米国向けの商品を生産している。これらの商品は、AGOA(アフリカ成長機会法)の優先枠を利用して輸出されてきた。

 レソトが対米貿易黒字国であったため、50%もの「相互関税」を引き起こしたとみられる。レソトのアパレル産業を支える企業の親会社はアジアにあるので、高関税を受けて撤退する恐れがある。

 「レソトは米国からの輸入品に99%の関税をかけている」との米国の主張に対して、レソト外相は、「はっきりさせておきたいが、それは正しくない。我々はSACU(南部アフリカ関税同盟)のメンバーで、共通の関税率7.5%を適用している」と述べた(4月8日付ルモンド)。

 トランプ政権による「相互関税率」算出のいい加減さは既に指摘されているが、レソトの事例はこの新政策の不条理と不正義を示すよい例だ。米国はアフリカの産業育成の観点からAGOAを制定したのであり、レソトはその成功例のひとつであった。成功したが故に50%もの関税を要求されたわけである。自国が推進した政策を否定するトランプ政権が、世界に混乱をまき散らしている。(武内進一)

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