中部アフリカのカメルーンでは、2025年10月12日に大統領選挙が予定されている。7月13日には、1982年から連続7期にわたって大統領・国家元首を務めている92歳の現職ポール・ビヤがSNS「x」で立候補の表明をし、話題を呼んだ。1960年の独立以来2代目の大統領であるビヤは、現在世界最高齢の現職の国家元首だが、もし8期目に再選されれば、任期を全うする頃にはほぼ100歳になる。
ビヤ政権のカメルーンは、中央アフリカ、チャド、コンゴ共和国など武力紛争を経験してきた周辺諸国に比べると長期間の政治的安定を実現してきたが、汚職の蔓延による統治能力の低さや、2017年以降現在まで継続し、解決の見込みが立っていない英語圏地域と中央政府の間の国内紛争("anglophone crisis")など、内政上大きな問題を抱えている。
また、ビヤの健康が大統領の任に耐えられる状況なのかも、たびたび話題に上ってきたところである。2024年秋には、ほぼ一ヶ月にわたって公的な場に姿を現すことがなかったために、一部で死亡説が流れ、大統領府が慌てて打ち消したこともあった。
7月26日にカメルーン選挙管理委員会(ELECAM)による発表があり、大統領選の公認候補者のリストが発表された。立候補を届け出た83人のうち、13人が正式な候補として認められた。
ここで注目されたのは、前回2018年の大統領選挙で14%の得票を得て、ビヤに続く第2位だったモーリス・カムトが候補に認められるかであった。ビヤへの有力な対抗馬と考えられてきたカムトは、7月中旬に立候補の登録をしたが、今回選挙管理委員会は「同一政党から複数の候補が立候補登録をしている」という理由でカムトの立候補を却下した。正式な候補として認められなかった場合、72時間以内に憲法評議会に異議申し立てを行うことができる。カムトは、異議申し立てを行ったが、憲法評議会は8月5日にカムトの訴えを却下したため、彼は10月の大統領選挙に出られないことが確定した(8月5日付ルモンド)。カムトの選挙からの排除をめぐって、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど国際NGOからは今回の選挙への信頼性を疑問視する声があり、また野党支持者などからの反発による政情不安を懸念する声が出ている。
有力な対立候補が選挙に出られなくなったことで、現職のビヤがより有利な状況に立ったと言えるが、一方で野党候補の中で連携を模索する動きが活発化している(8月14日付RFI)。本格的な選挙戦期間は9月下旬からだが、それまでに野党間で政策や候補の一本化などの調整が可能なのかどうかが注目される。そこでも、人気のあるカムトがどのように動くのかが一つの鍵になりそうだ。(大石高典)
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