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今日のアフリカ

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化学肥料価格の高騰と農業への影響

2022/08/23/Tue

 化学肥料価格の高騰が、アフリカの食料問題に暗い影を落としている。化学肥料価格の高騰には、天然ガスの供給不足が大きく影響している。化学肥料の主要原料で、天然ガスからつくられる窒素の価格が、ロシアによるウクライナ侵攻によって急騰した。穀物価格が総じて上昇したことで、生産者の作付け意欲が高まったことも肥料高騰の背景にある。
 アフリカは他地域に比べて化学肥料の投入量が少ないが、価格高騰の影響は大きい。22日付のファイナンシャルタイムズによれば、コートジボワールやカメルーンでは、2月のウクライナ侵攻以来化学肥料価格が50%以上上昇した。その他の国々でも化学肥料価格は急激に上昇しており、多くの農家にとって、適切な施肥が困難になっている。ガーナでの調査によれば、今年は半数以上の農家が全く肥料を投入できていない。世界的に見て、2022-23年は、トウモロコシ、小麦、コメ、大豆生産が1.8%減少する見込みだが、ケニアでは食料生産量が6%減少すると予想されている。
 化学肥料の主要な輸出国(2020年)は、ロシア、中国、カナダ、米国、モロッコ、ベラルーシ、オランダの順になっており、ロシア産化学肥料への依存度は、ガーナで35%強、カメルーンで5割近い(2021年)。ロシア産製品が制裁の影響を受けていることは、言うまでもない。リン鉱石を産出するモロッコは肥料の輸出大国であり、同国のOCP社はサブサハラ・アフリカ向けに18万トンの肥料を贈与し、37万トンを割引価格で販売したという(22日付FT)。
 化学肥料不足の影響がどの程度深刻か、判明するのはこれからの収穫期であろう。とはいえ、北アフリカでは異常高温、東アフリカでは干ばつなど、異常気象の影響も報道されており、アフリカ農業にとってはかなり厳しい年になりそうだ。