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今日のアフリカ

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ルワンダ

2018/01/30/Tue

1月28日のルワンダ政府系紙『New Times』は、先週国連総会でルワンダのジェノサイドの呼称を「トゥチに対するジェノサイド」(Genocide agaisnt Tutsi)とする決定がなされたことを大きく報じた。これは2003年の国連総会決議"International Day of Reflection on the 1994 Genocide in Rwanda"(A/RES/58/234)を改称するという決定である。ルワンダでは、この10年くらいの間、「ジェノサイド」を一貫して「トゥチに対するジェノサイド」と言い換えきた。背景にあるのは、「ダブル・ジェノサイド」への反論である。ルワンダ内戦に勝利して政権を獲得した元ゲリラのRPFに対しては、内戦時やその後に民間人を虐殺したという批判があり、それを強調して「双方にジェノサイドがあった」という主張をする者さえいる。そうした主張は「ダブル・ジェノサイド」と呼ばれるが、RPF政権はこれをジェノサイドを相対化するものだとして強く反発し、それを意識して「トゥチに対するジェノサイド」と呼称を「明確化」してきたのである。1994年にルワンダで起こったジェノサイドでは、当時の首相などフトゥ要人も殺害されているが、「トゥチに対するジェノサイド」という呼称にすれば、犠牲者はトゥチだけに限定されてしまう。実際、現在のルワンダでは、ジェノサイドの補償措置は事実上トゥチに限定されており、それがかえってトゥチのサバイバーを孤立化させる要因になっているとの指摘もある。RPFによるフトゥ民間人の殺戮を「ジェノサイド」と呼ぶことは適切でないが、その事実は否定できない。「ダブル・ジェノサイド」という不適切な呼称が囁かれる背景には、RPF政権が内戦時の自らの犯罪に十分向き合っていないためでもある。それなくして呼称だけを変えても、自らに向けられる批判の声は止まないだろう。