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今日のアフリカ

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エチオピア

2018/01/16/Tue

1月15日、ゲタチョウ司法長官は、政治犯を含む受刑者528人の釈放を発表した。本案については、拷問の温床として批判されてきたマエケラウィ収容所の閉鎖と併せて、同月3日に発表されていた。同発表の際、ハイレマリアム首相は、「民主主義の基盤を拡げる」措置と述べて、近日中の履行を約束していた。

同国については、2015年11月頃より、首都の自治区拡大計画(「アディスアベバ総合開発マスタープラン」)への反発を契機として、オロミア州やアムハラ州などで反政府活動が頻繁に起きていた。2016年10月には、オロモ人が毎年実施する祭事(イレッチャ)が政府への抗議活動へと転じ、鎮圧部隊と衝突した結果、50名以上が死亡する事件が発生した。この事件は各地の抗議活動を激化させ、政府は即座に非常事態宣言の発令に追い込まれた。非常事態宣言の解除までには10か月を要した。

その間、政府は、各地の抗議活動を鎮めるために、過剰ともいえる武力行使、大量逮捕、拘禁下の虐待などの人権侵害行為を行っていたとして、人道団体らから非難されている。2015年11月以降、400人以上が殺害され、数万人が逮捕・投獄されたとの報道もでている(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)。農村部などでも反政府活動と無縁の人々が多数不当逮捕されたケースもある模様。

今般の受刑者の釈放は、そのような国内外の批判に晒された政府による対応の一環として理解できるものであるが、一連の騒擾の規模に鑑みれば、今般の釈放は極めて限定的な対応に過ぎないだろう。政府が「民主主義の基盤」拡大を真に願うならば、まずは人権侵害疑惑に対する捜査を政府自らが実施し、説明責任を果たすことが必要であると思う。