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今日のアフリカ

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エチオピアにAGOA適用除外の可能性

2021/09/18/Sat

 17日、アメリカのバイデン政権は、アフリカの角地域に対する制裁措置に関する行政命令を発出した。これにより、エチオピア政府、エリトリア政府、TPLF、アムハラ地方政府を対象にエチオピア紛争に責任を負う者への制裁措置が発動される。
 同日付ファイナンシャルタイムズ(FT)によれば、この制裁措置によって、エチオピアが「アフリカ成長機会法」(AGOA)から排除される可能性が高まった。AGOAは米国の国内法で、適格と認められたサブサハラアフリカ諸国で生産された幅広い製品に、無関税での対米輸出を認めている。対象となる製品は7,000品目近くに上るが、とりわけ衣料品への効果が大きいことが指摘されている。一方、適格と認められるためには、市場経済化政策や法の支配、民主化や人権尊重などの政策を履行することが求められる(詳しくは、福西隆弘「開発政策としての優遇アクセスの成果と課題----マダガスカルに対する経済制裁を例に」『アフリカレポート』2013年を参照)。
 エチオピアは2000年のAGOA成立以来適用を受けているが、この枠組みを利用して対米輸出を大きく伸ばしてきた。2020年にはAGOAの枠組みで2億4500万ドルの輸出がなされ、対米総輸出の40%以上を占めた。
 先月末、米通商代表のキャサリン・タイは、アビィ・エチオピア首相の通商経済アドバイザーのマモ・ミレトゥ(Mamo Mihretu)とビデオ会談した際、エチオピア紛争に伴う人道問題について問題提起を行い、対応がなされなければチオピアをAGOAの適用対象から除外する可能性について言及した。そうした事態になれば、繊維、皮革産業を中心にエチオピアが大打撃を受けることは確実である。FT紙は、Calvin Klein やTommy Hilfigerといった、エチオピアから原材料を調達する西側企業も影響を受けると予測している。
 マモはFT紙の取材に答えて、AGOAによって数万人の雇用が製造業部門に創出されており、その8割は若い女性だとして、AGOAから排除されればこれらの女性が雇用を失うと述べている。
 AGOAは米国の国内法であるから、米国の一存で優遇措置を停止し、エチオピアに甚大な打撃を与えることができる。しかし、それがアビィ政権をティグライ紛争の終結に向かわせるかどうかは、全く不透明である。この内戦がアビィ政権にとって存亡の危機に関わることを考えれば、その見込みはむしろ小さいのではないだろうか。