マレーシアで紡ぐ絆の音~国際社会学部4年 山本佳奈さんインタビュー~
外大生インタビュー
食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋…今年の秋は音楽に親しむのはいかがでしょうか。2024年9月17日(火)から20日(金)の4日間、マレーシア・サラワク州にて「Sarawak International Band & Orchestra Festival 2024」(以下「SIBO Fest」)という音楽フェスティバルが開催されます。イベントの主催団体であり、サラワク州を拠点とするコミュニティバンド「The Band Lab」(以下「TBL」)の日本支部代表を務める、国際社会学部イベリア地域/スペイン語4年の山本佳奈さんにお話を伺いました。
取材・執筆:言語文化学部3年・堀詩(広報マネジメント・オフィス 学生広報スタッフ・学生ライター)
−−−スペイン語を専攻しているとお聞きしましたが、どのような縁でマレーシアに?
大学1年次に海外ボランティアとして3週間マレーシアに滞在したのが最初のきっかけです。その時から、いつかこの様々な文化が混ざり合う国に住んでみたいと思っていました。3年次に1年間スペインに留学をしたのですが、そこで課外活動として日本語の授業でTA(ティーチングアシスタント)を務めました。より深く日本語教育に携わりたいと思っていたところ、国際交流基金の「日本語パートナーズ」でマレーシアへの派遣プログラムを見つけて、スペイン留学終了後、再びマレーシアに行く機会を得ることができました。
−−−なるほど、日本語教育をきっかけにマレーシアと再びつながったのですね。TBLについて詳しく教えてください。どのような活動をしている団体なのでしょうか。
TBLは2018年に発足したサラワク州初&唯一のコミュニティバンドです。現地の音楽教育推進を目指し、吹奏楽団や演奏会の運営、地元の青少年に向けたオーケストラ体験イベントなどを実施しています。また日本支部は本学の学生を中心に活動しており、現地への楽器寄付や国際交流イベントの運営を行っております。
−−−山本さんがTBLの活動に関わり始めたきっかけは何ですか。
私は元々音楽が好きで、小1からピアノを始め、小4ではアルトホルンを、小6からはトランペットを演奏してきました。はじめは、マレーシアに知り合いもおらず、派遣された学校以外のコミュニティもない状況で「やっぱり音楽を続けたい」という強い思いから楽団探しを始めました。でも、調べてみて驚いたのですが、サラワク州には楽団自体がほとんどなかったんです。選択肢もなく、諦めそうになりながらもやっとの思いで探し出した楽団に足を運んだ時、たまたまメンバーとして参加していたTBLの代表に出会いました。
彼は日本の吹奏楽に憧れを抱いていたそうで、突然地元の楽団に現れた日本人の私に興味を持って話しかけてくれました。当時はちょうどコンクールに出るための準備をしている時で、金管楽器の指導をしてくれないかと頼まれました。彼の熱意や現地での音楽普及活動に心を惹かれ、TBLの活動に加わったのがこれまでの経緯です。偶然が重なった結果というか、縁だなぁと思いますね。
−−−偶然の出会いが今に繋がっているのが素敵だと思います。これまでのTBLの活動の中で印象に残っていることはありますか。
「Meet The Orchestra」という名前で、中高生200名を対象とした音楽イベントを開催したことです。楽団を探しても全然見つからなかったことからもわかるように、サラワク州では若者が楽器に触れ合う機会があまり用意されていませんでした。日本語教師として働いていた学校の生徒にも、音楽に興味はあるけどチャンスがないという子がいて、その子たちを含め数多くの現地の学生が参加してくれました。イベントではコンサートや楽器体験会などを企画し、皆の楽しそうな顔を見ることができて良かったです。また、これを機に音楽を始めたい!という声を聞けたことが一番嬉しかったです。
−−−9月にも「SIBO Fest」というイベントを開催するそうですが、ここではどのようなことが行われるのでしょうか。
SIBO Festは「音楽・文化・友情」をテーマにした4日間の音楽イベントです。イベントでは全日本吹奏楽コンクール全国大会常連校でもある、愛知工業大学名電高等学校の吹奏楽部の方々に演奏してもらうという豪華な企画も用意しています。前に日本の吹奏楽団の視察を行った際に、TBLの代表と副代表が名電高校の吹奏楽部に感銘を受け、是非マレーシアの学生にもこの音楽を知ってもらいたいと話していたところ、高校側もできることがあれば是非!と快諾してくださったことが今回のお話に繋がっています。
他にも、世界で活躍されるプロ奏者の方々による音楽指導や、最終日に参加者全員で行うコンサートなど、4日間毎日充実したイベントになるよう計画しています。また日本から楽器修理職人の方をお招きし、修理のノウハウを教えてもらうワークショップも開きます。実は現地では楽器を修理できる人がとても少なく、直せば使えるのに直し方がわからない、というもったいない状況がよく起こります。これを機に現地の参加者の知識が増え、今後の音楽活動にプラスになることを期待しています。大学生作曲家の牧野圭吾氏によるオリジナル曲にも注目です。オリジナル曲や最終日のコンサートの演奏はイベント終了後随時公開する予定なので是非ご覧ください。イベント中もインスタグラム(@thebandlabkch / @thebandlabjp)で積極的に情報を発信しますので今のうちにフォローしてくださると嬉しいです。
−−−日本からもたくさんの方がゲストとして参加されるのですね。SIBO Festが盛り上がる様子が今からでも想像できます。最後に、TBLの活動を通して感じたことや今後の展望について教えてください。
TBLに出会って、やっぱり音楽って楽しい!と初心に帰って音楽と向き合うことができるようになりました。私は指導者という立場でTBLの活動を始めましたが、自分が楽団に何かを与えるというよりむしろ皆から与えられるものの方が多いと感じています。私が来た時に楽団にいた人たちは、ちゃんとした演奏を聞いたことがない、お手本がない、という人がほとんどでした。まずは耳を鍛えることを目標に、丁寧に指導を続けた結果みるみる上達し、互いに励まし合いながら練習する姿を見て胸が熱くなりました。
イベントに多くの人が来てくれて新しい交流が芽生え、音楽の楽しさを再発見する人が増える一方で、現地にも素晴らしい音楽と触れ合える機会を提供することができる…そのようにして、人と人が国境を越えて相互に関わり合いながら音楽を楽しんでもらえたらこれ以上のことはないです。
TBL Japanでは熱意を持って一緒に活動に取り組んでくれる方を大募集しています! 興味がある方がいましたら是非ご連絡ください。
本記事は取材担当学生により準備されましたが、文責は、東京外国語大学にあります。ご意見は、広報マネジメント・オフィス(koho@tufs.ac.jp)にお寄せください。