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ルワンダ絵画展を開催 〜国際社会学部アフリカ地域・菅沼蓮さんインタビュー〜

外大生インタビュー

2024年5月20日(月)〜30日(木)の期間で、本学の研究講義棟1階の通路(ガレリア)にてルワンダ絵画展「Perspective」を開催します。本絵画展を企画したのは国際社会学部アフリカ地域4年の菅沼蓮(すがぬま・れん)さん。今回のTUFS Todayでは、菅沼さんにアーティストと出会ったアフリカ縦断旅やタイトルにかける思いなどをインタビューしました。

−−−絵画展について伺う前に、本学で学ぼうと思ったきっかけを聞かせていただけますでしょうか。

好きなフランスの映画役者がいてフランス語に興味がありました。そのような中で高校3年生の時に、他の大学と少しカリキュラムが異なる本学に出会いました。そういった場所に興味を惹かれる性格のため、本学に興味が湧き、中でも他の大学にはあまりないアフリカ地域専攻を受験することにしました。浪人を経て入学し、結果的にフランス語はやらず、言語としては英語を主に、アラビア語も少し受講しました。私は左利きなのですが、アラビア語は左利きだと文字が書きやすかったのを覚えています(笑)。

−−−本学での学生生活はいかがですか。

本学では、自分の専攻に関わる学びはもちろん、いろいろなことに興味を持つ人が多くいるため、多様な授業や友だちとの会話でも多くのことが学べる場所だと感じています。現在、私は、国際社会学部の地域社会研究コースに進み、坂井真紀子教授のアフリカ地域研究ゼミで自分の研究分野を徐々に絞り込んでいるところです。おそらく東部や南部アフリカの美術に関することを深掘りして研究していくと思います。まだ迷っていますが。

−−−菅沼さんは大学での勉学の一方でアートギャラリーを運営していますね。

はい。東京都足立区の北千住で、2021年の10月から幼馴染3人でアートギャラリー「PUNIO(プニオ)」を運営しています。もともと幼馴染の一人が美術がとても好きで、「何か場所を作ろう」と僕ともう一人の友人を誘ってくれて、そのようなフワッとしたなかで立ち上げることが決まりました。不動産がなかなか見つからなかったのですが、縁あって現在のPUNIOを運営している北千住で始められることになりました。ギャラリーと言っても、古民家を一部改装したもので、僕ら自身が住むシェアハウスも兼ねています。アットホームな独特な空間なので、皆さんが想像する「ギャラリー」とは少しギャップがあるかもしれません。

アートギャラリー PUNIO。第1回アフリカ展の様子。

「PUNIO」は、「Pigment Undercover uNIOn」の略称で「プニオ」と呼んでいます。「pigment」は色素や顔料といった意味なのですが、顔料・絵の具など画材の色の元になるものを人や作家と見立てて個性を表現すること、「undercover union」は「秘密結社」。要するに、各々の個性が刺激となるという意味が込められています。僕たちは作家に向き合うことで変化し、そのままお互いに限界を決めずに拡がっていくアメーバのようなイメージでギャラリーをやっています。そのため、絵画の展示だけでなく、フリーマーケットや建築科の卒業制作、写真、古本など多岐にわたる作品を扱っています。

アトリエとしても使います

−−−今回キャンパスで行われるルワンダ絵画展では、ルワンダに拠点を置く作家さんの作品を展示するとのことですが、この作家さんとの出会いを教えていただけますか。

本学の同期と3人で、昨年(2023年)の8月から今年3月まで、車でアフリカ縦断旅をしてきました。

(編注:東京外国語大学では、留学中の学生による現地での自動車の運転による移動を推奨していません。)

旅をしている最中、それぞれの興味に応じて要所要所で離合集散を繰り返していました。僕はアフリカ各国のアートギャラリーや美術館を主に回りました。お互いの興味関心を尊重し別行動をとることができたので、とても気持ちの良い旅でしたね。刺激を与え合える旅だったと帰ってきてから強く思っています。

ビクトリアフォールズ国立公園の入り口のリビングストン像の前で(左が菅沼さん)
旅の車

−−−なぜアフリカ縦断の旅を行おうと思ったのでしょうか。

1年生からアフリカ地域について深く学んできました。その中で自分の中で作り上げてきたイメージと現実をよく比べてみたいと思ったのが一つの理由です。また、遠い地域のアートに興味があったということもありますし、何より楽しそうだった、ということでしょうか(笑)。旅行中には、ひたすら釣りをしているなど完全に目的を見失った瞬間もありましたが、これからもさまざま地域を訪れてみたいと思えた旅でした。

砂漠でのキャンプ

−−−作家さんとはこの旅の中で出会ったのですね。


旅の途中に、ルワンダの首都キガリでギャラリーを巡っていた際に、ギャラリーの入り口に立っている人に案内をしてもらいました。しばらくしてから、彼自身も作家であることを知りました。それが今回の絵画展の作家であるEmmanuel Mutuyimanaさんです。僕の1歳年上で、僕が東京に帰ってからもよく連絡を取り、ポートフォリオなども送ってくれました。彼の熱量や作品の強さに感化され、展示を企画しました。

ウガンダのギャラリーにて

−−−絵画展のタイトル「Perspective」にはどのような思いを込めましたか。

「Perspective」は、「視点」の意味に加え、絵画の領域で「遠近法」を意味します。世界に対する距離感が近い人も遠い人も、さまざまな興味に従って、各々自分の世界を作り上げていっていると思います。無限に広がる世界を見て、自分の立ち位置を考える時もあるのではないでしょうか。僕自身は昔の感性とのギャップを良い意味で感じます。

本学の学生や、見てくれた人がどんな視点を持ちうるのか。同じように内省する瞬間があり、そこに寄り添うのは美術的なものだと思います。「美術」そのものにしても、物理的に遠く離れた場所に住む人の「思考」にしても、自分の世界の外郭に存在するものに出逢ったときに、どんな風にお互いを魅了し合うのか。遠いところからやってきた美術を通して、自分の視点が揺れ動き、距離感を測り、どんな立ち位置を選ぶのか、そういったことを主題としています。

ぜひ、少しだけまっさらに絵に向き合ってみて、自分と周りとの遠近感を、楽しく捉えてみるきっかけになれば、とても嬉しいです。

−−−企画から開催までには苦労もあったのではないでしょうか。

今回絵画展をするきっかけを与えてくれたのは、僕の専攻の先生方でした。先生は覚えているかわかりませんが、「学生もお客さんじゃないんだから。」というツッコミで、もともとやってみたいと思っていたことを実現してみようと考えるようになりました。たくさんの方に助けられ、多くの媒体で告知もしていただけました。絵画展の準備をする過程で、展示そのものと同じくらいの貴重な勉強ができたなと感じています。ぜひ、ちらっとでも、見ていただけたら嬉しいです。がっつり見てくれたらもっと嬉しいです。

作品を展示する前

−−−最後に、絵画展で伝えたいことはありますか。

日本人作家と比べてなにもかも想像がつきにくいというところかと思います。言語も文化も違う場所で育っている作家なので、僕自身が旅の最中に「信じられないくらい予想がつかない」ということを体感しました。こうなったらそのまま展示してみようという感覚なので、僕自身まだよくわからないのですが、皆さんと一緒に作品に歩み寄っていけたらと思います。

  • ルワンダ絵画展「Perspective」の詳細はこちら
絵画展の様子
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