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アオザイはベトナム人をつなぐもの:ファン・ハーさんインタビュー

外大生インタビュー

皆さんは「アオザイ」と聞いてどのような民族衣装を想像しますか。身体のラインに沿った細身の衣装を想像する人が多いかもしれません。ただ近年ベトナムでは、カジュアルさを追求した新たなアオザイも浸透しつつあるようです。今回は、「世界の民族衣装を旅しよう」第1弾として、ファン・ハーさん(国際社会学部東アジア地域/中国語3年)にふるさとベトナムの民族衣装アオザイを紹介して頂きました。実際にファンさんがアオザイを着て撮影した写真をもとにお話を伺いました。

インタビュー・取材担当

国際社会学部中央ヨーロッパ地域/チェコ語2年・金澤鼓(かなざわつづみ)さん(広報マネジメント・オフィス学生取材班)

アオザイの今

——これら2つは私が想像していたアオザイとは少しイメージが違うのですが、どういったアオザイですか。

最初の写真は19世紀の衣服を模したアオザイで、頭にかぶっているのは女性向けの菅笠の一種です。これはハノイの郊外にあるお寺で撮影したものです。近年ベトナムの若者の間では、伝統的なものに対する関心が高まっており、このように古風で趣のある写真を撮ることが流行っています。それとは対照的に、2つ目の写真はモダンなアオザイです。典型的なアオザイと比べて丈が少し短くゆったりとしたカジュアルなものになっています。

——これがまさに私が想像していたアオザイです。これはどこで撮影しましたか。

これは2年前に日本の成人式に参加した際のものです。留学前に地元でアオザイを新調し、日本に持ってきました。このアオザイには鶴と蓮が描かれていて、伝統的なデザインになっています。これが定番ですが、他にも有名画家の作品を生地に印刷してデザインとしているものもあります。

——典型的なアオザイから、古風あるいはモダンなアオザイまで、様々なアオザイがあるとのことですが、現在ではどれもよく着られていますか。

はい。近年では柄やデザインがとても多様になったと感じます。若い女性は伝統的なアオザイを着るとやや真面目な感じが出てしまうので、出かける時にはそれはあまり着たくありません。そこで、代わりにモダンなアオザイを着る女性が多くいます。どのアオザイも上下が分かれていますが、典型的なアオザイは丈が長くボトムスはシルクのズボンです。その一方で、モダンなアオザイには、襟なしタイプやスカートかレギンスと合わせるタイプなどがあるため、そこまで窮屈感がないですし、伝統的なスタイルとは距離を置いてもっと「自由」になれるような気がします。

——アオザイは全てオーダーメイドなのですか。

今では店頭に並んでいるアオザイを購入することもできますが、私が持っているものは全てオーダーメイドになります。その場合、まず生地の専門店に行き生地を選びます。アオザイには、滑らかな手触りで皮膚と相性がよく、肌に優しい生地がおすすめです。生地を選んだ後、それを持ってオーダーメイドのお店に行くと、約1週間後に完成したアオザイを受け取ることができます。

——世界にひとつだけのアオザイを作ることができるということですね。アオザイには様々な色があると思いますが、それぞれにどのような意味があるのですか。

例えば、赤色はテト(ベトナムの旧正月)と結婚式の際、幸運を願って着用されます。また王朝時代には黄色が豪族の色とされていました。黒は葬式が主ですね。他に、ベトナムの女性は、生年月日と五行思想(古代中国の自然哲学の思想で、万物は金木水火土から成るというもの。)を関連させて縁起の良い色を選ぶこともあります。

——ベトナムの伝統行事においてアオザイを着る場面は、テトや結婚式以外で他に何かありますか。

ベトナムでは毎年11月20日が教師の日と定められています。これは教師に対する尊敬の念を表す日であり、女性教師たちはその日好きなアオザイを着て学校に行きます。これは小学校から大学まで広く行われている行事です。また、近年では、女性教師の制服をアオザイとする学校も出てきています。

ファンさんにとってのアオザイ

——初めてアオザイを着たのはいつですか。

中学生になってからテト(ベトナムの旧正月)で初めて着ました。待ちに待っていたので嬉しかったですが、何時間も着るとなると歩きづらく、また姿勢をずっと正しているのも大変だと感じていました。

——アオザイに関する印象的な思い出はありますか。

2017年にベトナム・ハノイで開催されたAPEC首脳会議において、私は白いアオザイを着て中国の習近平国家主席の公式訪問を歓迎しました。私が通っていた大学は外務省管轄下にある外交大学であるため、こうしたイベントに参加する機会を得ることができました。自分自身がベトナムの顔として中国の首脳を迎え入れるということで、本当に特別な気持ちでした。

——とても貴重な経験ですね。白いアオザイはこれ以外の場面で着ることもあるのですか。

そうですね、白は学生の制服として着用されています。南ベトナムでは白のアオザイが高校の制服として定められたのですが、北ベトナムではそのような規則はありません。ただ、入学式や卒業式などの特別な行事の際には白のアオザイを着る学生がいます。白は「純粋」や「真実」、「平和」を象徴する色だと思います。

——これまでお話を伺う中で、現代のベトナム人にとってアオザイは馴染みのある衣服であるように感じましたが、アオザイはベトナム人にとって生活の一部のような存在だと感じますか。

はい。グローバル化が進んだことがこれに影響していると思います。というのも、グローバル化が進み、海外から様々なファッションが流入してくるという状況で、ベトナムの若者はアオザイを通して「私はベトナム人だ」というアイデンティティを守っていきたいと感じるようになっていると考えています。

——最後にファンさんが思う、アオザイの魅力を教えてください。

まずは、誰でも気軽にアオザイを着ることができるということです。ディナー、ちょっとしたお祝いの場面などアオザイを着るのに適した機会はたくさんあります。そして、立ち襟で身体のラインに沿った細身のシルエットの上着とワイドパンツから成る典型的なアオザイは、女性を美しく見せる衣服だと思います。

——お話を伺っていて、ファンさんのアオザイに対する思いがじわじわと伝わってきました。今日はお話をありがとうございました!

編集後記
ベトナムにおいては多様なアオザイが定着しつつあるというのがとても興味深いと感じました。ファンさんは留学でベトナムを離れて初めて自国のものをもっと知ろうという意識が生まれ、今ではアオザイに大変興味を持っているそうです。アオザイについて語っているファンさんの表情はとても輝いていました。日本ではアオザイを着る機会はあまり多くはないとのことですが、母国からアオザイを持参しているファンさんは、日本にいる間も写真撮影など機会があるときには積極的に着ているそうで、ふるさとを離れても母国の民族衣装を大切にしているというお話に心が温かくなりました。
取材担当:金澤鼓(国際社会学部中央ヨーロッパ地域/チェコ語2年)

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