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教えて!鶴田知佳子先生!中学生が聞いた、通訳のお仕事

研究室を訪ねてみよう!

本学の言語文化学部のグローバルコミュニケーションコースや大学院総合国際学研究科の世界言語社会専攻などで、通訳・翻訳学について教育・指導する鶴田知佳子教授。

これまでにNHKやCNNの同時通訳者や、国際的に重要な会議で会議通訳者などを勤め、現在も各国指導者の同時通訳を手がけています。

そして、実は、金融業界で10年間勤務した経験を持ち、日本人女性で初めてコロンビア大学でMBA(経営学修士)を取得し、アメリカ公認証券アナリストの資格も持っています。

そのような異色の経歴を持ち国際的に著名な鶴田教授を、夏学期のある日、目をキラキラ輝かせた宮城県丸森町立丸森中学校の3年生4名が訪問しました。中学生がきいた、鶴田教授のお仕事とは、通訳のお仕事とは。

インタビュイー:
鶴田知佳子先生(大学院総合国際学研究院・教授、通訳・翻訳学)

取材協力

宮城県丸森町立丸森中学校3年生
みくさん・のぞみさん・れいなさん・さやかさん


みくさん:将来英語を使った仕事をしたいと漠然と考えています。英語を使う職業につくために、今しておいたほうが良いことはなんでしょうか。

鶴田先生:グローバル化が進む現在、どんな仕事でも英語を使うことが必要になってきています。外国に行って仕事をするだけではなく、日本で外国人と、あるいは外国人のために仕事をする、ということも考えられます。世界を日本に伝えるほか、日本を世界に伝えるということもありますね。

言葉だけ勉強するのではなく、その言語の背景や文化・社会をきちんと知る必要があります。

また、海外に行くと誰もがみな痛感すると思うのですが、日本のことをよく聞かれます。日本語を教えてと言われることもあります。そのためには、日本語のこと、日本の社会や文化のこともよく知る必要がありますね。海外に行って初めて気づくのですが、母国のことを意外とわかっていなかったりするのですね。

私は、今は通訳を専門分野としていますが、通訳者になる前のことです。大学生のときに英語の通訳案内士の資格をとりました。通訳案内士の試験には言語レベルをはかるテストの他に、日本の地理・歴史・経済・文化など幅広い知識・教養に関するテストもあります。これは、外国人の方々の正しい日本理解には必要不可欠なことだからということを表していますね。

言葉を使って何をするのか、自分には何ができるのか何がしたいのか、をぜひ考えて職業選択をすると良いと思います。そして、常に「identity」自分は何者なのか、自分の依って立つところは何か、ということを考えていくと良いと思います。

のぞみさん:通訳をする上で聞き逃さないキーワードなどはありますか。

鶴田先生:通訳者は、すべてを聞き逃さないですね。強いて言うなら動詞かな。動詞を聞いていれば類推できることもあります。

通訳には大きく分けて3つの段階があります。「聴解」「理解」「表現」。聴解はほぼ自動的でないと仕事ができません。理解するためにはその分野についての知識が必要です。通訳を担当する前にはその分野に関して受験勉強のように徹底的に勉強します。1日で200〜300単語くらい平気で覚えます。そして、表現。通訳者はコニュニケーションを媒介する人です。相手が言っていることを自分が理解しただけではどうしようもない。伝える相手がわかるように表現しなければなりません。

例えば、アメリカのスティーヴン・コルベアというコメディアンが、トランプ大統領のことを「The dog that caught the car」と例えました。直訳すると「車に追いついた犬」ですね。ひとつひとつは皆さんももちろんすでに習っている簡単な単語ですが、これをこのまま訳してもさっぱり意味が通じませんね。そういったときに通訳者は即座に「車に追いついた犬、できるはずのないことがたまたま起きたという意味でしょうか」と通訳するのが良いのではと思います。英語の意味を理解して日本語で表現するのに英語の単語が易しいか難しいかは関係ないのですね。

相手の言うことを聞き漏らさずに理解して、他の方に伝えなければならない。通訳者は、一番熱心な聞き手、とよくいわれますね。

れいなさん:日本を離れて過ごしていてつらくなった時の乗り越え方があれば教えてください。

鶴田先生:私は、東京のある大学の外国語学部を卒業した後、銀行に就職しました。そこで知り合った男性と結婚をして、配偶者のニューヨーク転勤を機に仕事を辞めています。

今日お話している皆さんはたまたま全員女性ですが、将来仕事に就かれてから、あるいは家庭と仕事の両立で悩むことが出てくると思います。私は配偶者の転勤でニューヨークに行った時に、いずれまた仕事をしたいと思っていましたから、自分のキャリア形成のために、コロンビア大学の経営学大学院に入学しました。そして、そこでの勉強が想像以上に厳しかったです。人生で一番よく勉強した時期でしたね。でもあきらめたらその先はない、あきらめないで少しずつでもコツコツやっていれば道は続く、必ず成し遂げるという強い意志を持って勉強を続けました。おかげで日本人女性としては初めてコロンビア大学でMBA(経営学修士)を取得しました。MBAを取得したことはその後のキャリアにも大きく影響しました。諦めていたら、今の私はなかったでしょう。たとえば、皆さんが将来留学して辛くなったら、そもそも自分は何のためにここに来たのか?それを考えて自分のやりたいことを思い出すと良いと思います。何を目指すかの初心を失わないのが大事です。

さやかさん :海外でも長く過ごされていると思いますが、日本の誇りはなんだと思いますか。

鶴田先生:四季折々の変化に富んだ自然と食べ物、そして伝統文化です。例えば富士山はエベレストに比べたら高さは半分以下ですが、世界遺産に選ばれるほど世界から評価されています。日本で一番長い信濃川も(当時、中学校では私が世界一と習った)ミシシッピ川に比べたら十六分の一ほどですが、四季折々いろんな表情がある川です。数値では図れない美しさが日本にはたくさんあり、それらを誇りに思っています。

みくさん:鶴田先生、お忙しいところどうもありがとうございました。

鶴田先生:皆さん、ぜひ若いうちに一度、留学を経験してみると良いと思います。そして自分は何がしたいのか、自分には何ができるのか、考えていってください。いつも教えている大学生も若い方たちですが、もっと若い方と話すのも楽しいですね。どうもありがとうございました。

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