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大学院先取り履修、学部入学から5年で修士号まで取得、外交官へ : 満生紗希子さんインタビュー

世界にはばたく卒業生

大学院科目先取り履修制度をご存知ですか。

学部卒業前に大学院の授業科目を履修し単位を先取り修得することができる制度です。先取り履修で、問題意識を高め、研究テーマを絞り込み、大学院で修士論文に向けた研究により多くの時間をあてることが出来ます。

交換留学でトルコに1年ほど留学したあと、大学院科目を先取り履修し、早期修了を認められて1年間で博士前期課程を修了、その後、外務省専門職員として外交官の道に進んだ卒業生がいます。2018年3月修了の満生紗希子(まんしょう・さきこ)さんです。満生さんは、インタビュー後の7月末から、外務省の研修制度でトルコの大学院に進学します。満生さんにお話を伺いました。

インタビュアは、学部4年生の太田陽(おおた・あき)さんです。


太田陽さん(以下「太田」):国際社会学部・国際関係コース4年の太田陽です。よろしくお願いいたします。

満生紗希子さん

満生紗希子さん(以下「満生」):満生紗希子です。外務省入省2年目で、先日までTICAD事務局に配属されていました。現在、1ヶ月間の留学準備をしています。今月末から外務省の研修でトルコの大学院に留学します。よろしくお願いいたします。

太田:在学中、波乱万丈な学生生活を送られたと伺いました。

満生:はい、後半がそうでしたね(笑)。留学から帰ってきた後、外交官試験の勉強をしながら、大学院の先取り履修制度を利用して大学院へ進学しました。

太田:私も大学院を考えていたのですが、その先取り履修制度について知りませんでした。満生さんは、この制度についてどこで知りましたか。

満生:留学から戻ってきた時に、担当教員と今後の進路について話していく中で知りました。もともと学部は5年で終わらせようと思っていましたが、大学院の科目を先取りで履修して博士前期を1年間で終わらせることができる制度があることを知り、大変そうだけどやってみようかなと思いました。もし学部を5年間にすれば、ほとんど授業もなかったと思うので、それは勿体ないかなと思いました。

太田:今回、満生さんにインタビューをすることになってこの制度を知り、私の周りで大学院へ進学した友達数人に聞いてみたのですが、みんなこの制度のことを知りませんでした。

満生:ぜひ広めてください。

太田:そうでうね。留学から帰ってきた学生は、海外インターンに行く人以外は、残りの授業を取りつつ卒論を書いて。時間を持て余さないという意味ではとてもいい制度ですね。仕組みはどのようなものなのでしょうか。例えばコマ数など。

満生:はい、私の場合は、卒業に必要な単位は、3年次にほとんど取っていましたので、帰国した後は、学部の単位はほんの少しだけでした。そこで、先取り履修制度を利用して2つか3つくらい大学院の授業科目を履修し単位を取りました。授業の履修自体は、それほどきついスケジュールではありませんでしたが、それ以外の時間は外務省の専門職試験の勉強を進めました。普通の大学4年生は時間割表などを見せてもらうと割とゆとりがあると思いますが、それと比べると私のスケジュールは詰まっていましたね。

太田:先取り履修をして、大学院に進学した後はどうでしたか。

満生:必要修得単位数は決まっているのでそれを取る必要があります。やはり博士前期課程を1年で終わらせるとなると大変でしたが、先取りで授業を履修して単位を取得しておくことで少しだけゆとりを持たせることができましたし、修士論文を書くための研究の時間を設けることもできました。履修をし始めるのが大学院に進学をしてからとなると、授業のコマ数だけで時間がいっぱいになって研究の時間を取ることが難しくなったと思いますが、割とゆとりのある学部4年生のうちに博士前期課程の科目を履修しておくことで、1年間で博士前期課程を終わらせることが可能になりました。

学部4年生の太田陽さん

太田:難易度はどれくらいなのでしょうか。学部で大学院の難しい授業を受けることになると思うので、そこで引いてしまう人も多いのではないでしょうか。

満生:授業自体については、内容が深くはなりますが、難しくて大変と感じることはなく、むしろいろんな知識が得られるので大学院へ進学して良かったと感じました。ただ、大学院の授業は発表の機会が多くなりますので、自分が何をしたいか、修論でどんなことに取り組みたいのか、ということを話さなければならないのが、私には少し難しく感じました。大学院にすでに進学している人はすごい知識量なのに、学部生だった私も同じように発表をしなければならなくて恥ずかしい思いもありました。その一方で、いろいろと自分の知識が足りない分、必死に本を読んだりしましたし、周りから突っ込みを入れてもらったりして自分の足りていない部分がわかったりしましたので、とても勉強になりました。

太田:アウトプットしていくような学修の進め方が多いのでしょうか。

満生:アウトプットも多いですけど、学部授業よりもっと突っ込んだことを教えてもらえたり、自分で研究できたりします。

太田:大学院では、どのようなことを専攻されましたか。

満生:私は昔から環境問題に興味があったのですが、そこから再生可能エネルギーについて興味が広がり、修士論文では天然ガスについて研究をして修論を執筆しました。地政学とエネルギーを組み合わせて、学部ではトルコを専攻していたので、トルコとロシアの関係とエネルギーについて取り組みました。

太田:文系なのに、理系的な研究ですね。

満生:はい、もともと高校の時に、理系に進むことも考えていましたのですが、やはり国際的なことや語学がやりたいと思って本学へ進みました。そのため、理系分野のこともやりたいという気持ちが残っていましたね。

太田:東京外大の大学院でそんなことを学べるとは知りませんでした。

満生:はい、指導教員と相談して、こういう観点で文系の本学でもできるのだということは、私も驚きでした。東京外大は語学しかやっていないような印象を抱く方が多いようですけど、国際関係など幅広いことが学べますしそこから広がることも多いと思います。数式をベースにした理系とは違いますが、そういったことも学べます。

太田:外務省専門職員の勉強をしながらの先取り履修や1年間での博士前期課程修了で、苦労されたことも多いと思いますが、そのあたりのことを教えていただけますか。

満生:外務省専門職員の勉強は冬頃から詰め込み作業になるのですが、周りのスピードに追いつけなかったり、模擬試験で小論文を受けるのですが点数が伸びなかったりで、かなり焦りは感じていました。大学院試験の準備をしながら、学部の卒業論文を書かなければならなかったですし、大学院に進学すると、修士論文をやりながら外務省専門職員の勉強をしなければなりませんでした。最後の方は、無意識に涙が出たりしていました。同じ時期に外務省専門職員を目指していた仲間たちと励ましあいながら頑張りましたね。

太田:すごくたくさんことを並行してやりながら乗り越えてきましたね。精神面も強くなったのではないのでしょうか。

満生:はい、それは本当にそう思います。とても強くなりました。ここまでやったのだから、それ以降も「なんでも来い」という強さが身につきました。

太田:博士前期課程は基本的に2年ですが1年で修了されたということで、時短も強みですね。外務省専門職員は、留学から帰国してから考え始めたのでしょうか。

満生:高校生の頃から外交官に興味がありました。そこで、入学してから一度、当時外交官試験の相談に当たっていた山田文比古教授に、民間企業の就活と外務省専門職員の試験はどのように並行して進めたらよいかということを相談に行ったことがあります。そしたら、山田教授の方から、並行して進めることは難しいかもしれないというアドバイスをもらいました。それを聞いて、外務省専門職員を目指してもし就職に失敗したらどうしようと不安になり、ずっと迷っていました。留学中もずっと迷っていたのですが、帰国した後に、やはりチャレンジをしてみなければわからないと思い、外務省専門職員1本に絞って進めることにしました。

太田:外務省入省後はどのようなことをするのでしょうか。

満生:まずは1ヶ月くらい、自分の与えられた言語とODAや安全保障などのいろいろな分野を外務講義で学びます。5月くらいから本省勤務が始まり、私は開発協力企画室というところで、ODAに関して企画や立案をする仕事をしていました。その後、中東第1課でエジプトを担当していました。その後、また研修があり語学をみっちりやり、また外務講義でさまざまな分野を学びます。中間期にも、毎週2回、午前中に語学の勉強をする時間があります。

太田:外大みたいですね!

満生:そうなんですよ。語学が大好きな外大生にとっては天国みたいなところだと思います。

太田:就職しても勉強を続けたい方にもオススメですね。責任感も大きそうですね。

満生:まだ入省2年なのでそこまで大きい仕事はあまり経験していないのですが、一度、トルコの外相のリエゾンという役割をやらせてもらいました。とても緊張感のある良い経験でした。

太田:最後に、先取り履修制度について、外大生にコメントがあればお願いします。

満生:外大生は、留学してだいたい5年で大学を卒業する方が多いと思います。最後の1年は、周りを見ていても、何か時間を持て余していてとても勿体ないなと感じました。大学院の授業にもとても楽しく世界が広がる授業がたくさんあります。1年は短いですが、いろんなことを体験するためにも、先取り履修をして院生の世界を覗いてみるのも良いと思います。知識の幅も広がります。同じ5年でも修士まで取得すると質が良くなります。1年の過ごし方でその先が変わると思いますので、ぜひチャレンジしてみてください。

太田:いろいろとお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

満生:どうもありがとうございました。


先取り履修制度の詳細は、ウェブページにも掲載しています。

http://www.tufs.ac.jp/education/pg/support/sakidori.html

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