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学長鼎談:東京外語会「平成の会」天海健一さん・二瓶美由紀さん

世界にはばたく卒業生

「平成年間に卒業した方々と在学生相互の交流を深めること」、「若い世代が中心となり、外語会を活性化すること」 を目的に 2010 年 5 月に発足した東京外語会「平成の会」。平成の会の活動を支える平成の会委員長・天海健一さん と二瓶美由紀さんに本学で学んだことが社会でどの様に発揮されているか、平成の会の役割や、今後の学生支援など についてどのようにお考えか伺いました。


立石博高学長(以下、立石学長) 今日は、本学を平成年間に卒業された方々の同窓会組織「平成の会」の委員長である天海健一さんと、同じく平成の会委員の二瓶美由紀さんと鼎談させていただきます。天海さん、二瓶さん、よろしくお願いいたします。

天海健一さん(以下、天海さん)二瓶美由紀さん(以下、二瓶さん)よろしくお願いします。

——現在のお仕事は・・・

立石学長  まずお二人に現在どのようなお仕事をされているのか、簡単にお伺いします。

二瓶さん 私は、ドイツ語学科を1987年に卒業しましたが、社会人になってから本学に研究生として再入学しているので、平成の会に所属しています。卒業後、ドイツ語圏のエネルギー市場のリサーチャーとしてシンクタンクに就職した後、現所属の大手損害保険会社に転職しました。国際・再保険業務を10年超担当した後、グループ会社の総合研究所にて、アジアの保険市場のリサーチを行っていました。当時はアジア中を飛び回っていましたね。その後、本社でのCSR業務等を経て、今度はグループ会社のベンチャーキャピタルにて、キャピタリストとして、シリコンバレーを中心に欧米地域を駆け巡る仕事をしていました。そして今年4月からは、政府関連の団体に出向し、外国人スタッフ25名を含むダイバーシティ・マネジメントに取り組んでいます。

立石学長  まさに国際系のお仕事で東京外大らしいキャリアですね。続いて天海さんお願いします。

天海さん  私は、2007年に英語専攻を卒業し、今年でちょうど卒後10年になります。大手広告会社に就職し、大きくは3つの部署を経験してきました。メディア、営業、そして現在はマーケティングの部署にいます。最近ではアウターブランディングだけでなく、クライアントの組織風土変革や事業コンサルなど、広告に留まらない業務のワークシェアが増えています。

立石学長 とてもクリエイティブな発想に立ってお仕事をされているのですね。

——学生時代の経験でその後特に役立ったことは・・・

立石学長 二瓶さんは、東京外大入学当初から海外との接点のある仕事を希望されていたのですか。

二瓶さん  はい、そうですね。ただ、当時は男女雇用機会均等法も無い時代で、女性の先輩は、公務員か外資系企業に就職した方々以外は皆、5年も勤めずに辞めている状況でしたから、将来のキャリア展望が全く描けませんでした。苦心の果てに考えついたのが、ドイツ語で食べていこう、ということでした。ドイツ語の通訳・翻訳などの仕事を、と思っていたところ、ドイツ語圏のエネルギー市場のリサーチャーを募集しているシンクタンクがあったのでそこに就職しました。

立石学長 ドイツ語はその後も役に立っているのですか。

二瓶さん ドイツ人は英語ができるので、ビジネスでドイツ語を使うことはまずありません。ただ、国際会議などで、会議中は終始英語なのですが、会議が終わった後のプライベートの場で、実はドイツ語が話せることを打ち明けると、相手との距離がぐっと近くなります。それで私は十分に良いと思っています。

立石学長 海外で勤務されている本学の卒業生に聞いても、だいたい皆さん同じように言われますね。やはり英語は絶対に必要、だけど現地語が話せると商売がとても上手くいく、と。そういう意味では、英語専攻の学生たちにも英語以外の言語もぜひ学んでほしいですね。

二瓶さん そうですね。

立石学長 英語も達者だったのですか

二瓶さん いえ、達者ではなかったです。留学も、学生時代に当時の外国人教員とともにドイツに2ヶ月間ショートステイ(Au Pair)したのが最長です。ただ、その2ヶ月間のショートステイで、かなり脱皮したというか外国人慣れをすることができて、ドイツ語だけでなく英語などで話しかけられても緊張しなくなりました。その後の人生に大きな影響を与えた出来事でした。

立石学長 自分と違う文化の人と生活しながら接する機会を持つということはとても大切なことですね。頭の中で考えても駄目で、実際に人と接して異文化を体験することが重要ですね。現在、本学では大学全体として、1・2年生の間にショートビジットできる仕組みを作っていまして、かなりの学生がショートビジットを経験できるようになってきました。

二瓶さん 今の学生さんたちがうらやましいです。

立石学長 天海さんは2007年卒ですから、大学や社会もかなり変わっていますね。学生時代はどうでしたか。

天海さん 私はもともとピアノが好きで、本学のピアノサークル「NOPIA」で活動していました。NOPIAは学外の学生との交流もとても盛んで、学内外の友人ができて楽しく過ごした4年間でした。学業では地域・国際コースで金井光太朗先生の指導を受けていて、ジョージ・ガーシュウィンというアメリカ人作曲家を社会的背景から考察したいと相談し、アドバイスをいただきながら楽しく卒論に取り組むことができました。

立石学長 天海さんも国際系を希望して本学に入学したのですか。

天海さん 私の場合は「なにがなんでも世界で働きたい!」と思って東京外大に入ったわけではありませんでした。志望のきっかけになったのは、高校2年生の夏に2ヶ月半くらいアメリカの伝統的な国際キャンプに日本代表として参加したことです。その時、英語力の問題はもちろんですが、それ以前に相手の国や立場といった異なるバックグラウンドを理解し、真の意味で相手の言語で話すという能力が、各国代表と比べて明らかに自分は劣っていたことを痛感しました。今度各国代表の友人と会う時は、相手の文化や社会を学んだ上で、英語でしっかり議論したいと考えるようになり、東京外大の英語専攻を選んだんです。入学後、ようやく彼らと英語で渡り合えるようになりました。ただ、私が大学で学んでいる間にその友人達は遥か先に行き、クリエイティブな才能を発揮して世界的に有名な賞を受賞したり、起業して大成功したり、どんどん有名になっていったんです。そんな彼らといつか一緒に仕事がしたいと思うようになり、クリエイティブな仕事ができる大手広告会社に就職しました。なので、質問の答えとしては、私の場合は大学で学んでいるうちに、世界中の友人と働きたくなった、というのが正確なところです。

立石学長 東京外大時代の学生同士の付き合いで今でも役立っていることがありますか。

天海さん 東京外大の仲間という意味でいうと、在学中に2000年卒くらいの先輩を一番上として、在学生とともに集まれるようなサークルを作りました。自分を成長させるために、より広い世代のいろんな人と交流したいと考え、立ち上げました。

立石学長 それはいいことですね。そういう努力は大事なことです。東京外大は、外語祭の料理店や語劇、そしてボート大会など、同じ学年の人との交流は密なのですが、少し離れた世代との付き合いが少ないですね。学部生と大学院生が議論する機会もあまりないですし。

二瓶さん そうですね。就職活動の時も社会人との接点が全くなく、イメージすることができなくて大変でした。そのような経験があったからこそ、東京外大でキャリア相談員を10年以上続けてきました。

——平成の会による学生支援とは・・・

立石学長 そうした意味で、今、卒業生による在学生への支援が重要だと思っています。在学生と年の近い若い世代の平成の会がいろいろと協力してくれるということは大変ありがたいことだと思っています。

二瓶さん 自分の学生時代の経験からも、在学生となるべく接点を作りたいと考えています。

天海さん 本当にその通りです。私の時も交流が全くありませんでした。当時、mixiというSNSが全盛期で、広い世代の先輩方と繋がれるツールとして自分のサークルで活用してみたところ、多くの卒業生とお会いすることができるようになりました。平成の会でも、即時的に様々な情報に接することができるFacebook、Twitter等のSNSを情報発信に活用していますので、是非フォローしてみてください。個人的な想いとしては、SNSはあくまでツールであって、リアルでの集いを大切に、様々な価値観を持つ人達に会いに行ける会にしたいと考えています。

立石学長 平成の会は、OB・OGの集まりというだけではなく、現役の学生たちにもいろいろと働きかけてくれていますね。

天海さん 東京外語会は、世界中で活躍している卒業生のネットワークが非常によく構築されています。在学生や卒後10年くらいの働き盛りの社会人卒業生が、その方々の知見を手にできる環境を整えてあげることはとても大切なことだと思っています。

二瓶さん 東京外大は単科大学ですから、学生さんには、在学中にできるだけ様々な世代・分野の方と知り合ってほしいと思っています。四大学連合(東京医科歯科大学・東京工業大学・一橋大学・本学)の各大学の平成の会とコラボして交流の場を作るよう心がけているのもそのためです。異分野、特に理系の学生と交流することはとても大切なことだと思っています。異分子が集まるところにはイノベーションが起こりやすくなります。ダイバーシティは大切ですね。

立石学長 そうですね。今後もぜひ交流を深めてほしいです。大学としても、様々な分野の大学との協力関係を深めるための検討・話し合いを続けています。最近では、学生が交流しやすいように、近隣で容易に移動できる範囲の電気通信大学・東京農工大学との関係も大切にしています。具体的には、昨年度より、両大学と文部科学省の世界展開力強化事業をスタートさせました。理系と文系の学生が一緒にラテンアメリカに行き学ぶ、という事業です。ラテンアメリカからの理系留学生の日本語教育も同時に行っています。

二瓶さん 今後は、電気通信大学や東京農工大学の同窓会組織とのコラボもあり得ますね。

——在学生へ一言「外国語だけではなく大人語も身につけて」

立石学長 在学中に様々な経験・交流をして、広い意味での就業力、人間力を備えた人材が社会に出て行くのだと思います。最後に、先輩として、今の東京外大生を見て、ここは足りないな、もう少し頑張れよ、ということがあったら率直に言っていただけると助かります。

天海さん 私は東京外大をとても良い大学だと思っています。ただ、私が唯一在学中から思っていたのが、多磨という環境です。社会人との生活圏が違いすぎます。自分からある程度成長意欲を持って求めない限りは社会人との交流が生まれません。そうこうしているうちに、都心の方の大学生は、外国語だけじゃなくて大人語まで話しちゃう、ということになります。私が企業側としてOB訪問などを受けていて感じるのは、言語的な外国語だけではなく、違うバックグラウンドの人と話す言語という意味での外国語もきちんと学んでいかないと、社会に出ようとした時、あるいは社会に出てからきつくなります。

立石学長 まさにそのとおりです。

天海さん そのために私たちができるサポートは全力でしていきたいと思っています。まずは、東京外語会や平成の会を通じてでも構いませんので、社会人や上の世代と交流することから始めてみてほしいですね。

二瓶さん 純粋に学問だけ、ということであれば、とても静かで良い環境ですが、社会とのギャップというか、良くも悪くも刺激がない環境ではあるかもしれません。良く言えば純粋ですが、悪く言うと世間知らずになってしまう可能性があります。就職活動の時に、世間慣れしているかどうかで差がつくのは非常に惜しいです。東京外大の学生は、地頭が良いし優秀だと思うので、会社に入ってしまえば大変良い働きをするのですが、就活で一斉にスタート、という競争の場に立たされた時に、取り残されてしまうかもしれないという危惧が少しあります。

立石学長 そうですね。ある意味では真面目だけど、まだまだ内向きな学生がいますので、平成の会を通じて社会へと引き出していただきたいです。

二瓶さん 大学が行う就活イベントや東京外語会や平成の会が行う各種イベントに積極的に参加して、少しでも社会人に慣れてほしいと思っています。私達もインボルブしていきますので。

立石学長 ありがとうございます。これからもご協力をお願いできればと思います。本日は長時間どうもありがとうございました。

二瓶さん、天海さん ありがとうございました。

東京外語会 平成の会 主な活動

  • 卒業生と在学生をつなぐ各種イベントの開催
  • 大学のキャリア講座への協力
  • 卒業生データベースを活用した就職支援、転職支援、ネットワーキング支援
  • 会員間のコミュニケーションの場の提供
  • 各業界で活躍している卒業生へのインタビュー
  • 地方、海外滞在者向け情報交換スペースの提供 などなど

東京外国語大学は、2023年に建学150周年を迎えます。

建学150周年を迎えるにあたり、「東京外国語大学建学150周年記念基金」を2014年1月に開設しました。皆様からのご協力・ご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

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