11月14日井上洋さん講義終了

11月14日の法政策論、日本経団連の井上さんの講義が行われました。
以下は塩原による講義の概要です。
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11月14日 法政策論
受け入れ政策:実務の立場から 
井上洋(日本経団連)

※資料:日本経団連の提言(ウェブサイト)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/029/index.html

・日本経団連:4年前に日経連と合併。政府や政党に政策提言をしている。外国人問題については4年前くらいから検討を始めた。
外国人が多数就労している実態を踏まえて検討。
戦前の旧植民地出身者→特別永住者として戦後も居住。国籍・文化を保持。
われわれが考えているのはその後に来た人々。たとえば90年の入管法改正後に来た日系人など

・経済とは、人を豊かにするためのシステムである。
一国の経済成長は、労働・資本・技術で成り立つ。

労働力を日本人だけでまなかってきた時代が長く続いた。団塊の世代(S50-60年代):人が余り、リストラという言葉も生まれた。しかし、その団塊の世代が労働市場から退出、人口は減少(すでに生産年齢人口は95年から、総人口は05年から減少)。
2025年が高齢化のピーク。

企業:資本を調達して、設備投資をする
日本企業はグローバルに展開していて、グローバル市場でモノを売るための資本調達・設備投資はできている。

技術:昔の日本企業は海外から技術を買っていた。自主技術ではなかった。
今の企業はほとんど自主開発し、自分たちの製品に生かす。技術開発を社内でおこなう。

→労働力が減少したときに、資本と技術でまかなうことができるのかという点が今後の大きなテーマ

・経団連:外国人受け入れ問題に関する提言

「外国人」という異質な文化的背景をもつ人々に日本社会に刺激を与えてもらって、新しい日本社会の規範をつくってもらいたい。それが多様性のダイナミズムの意味するところ。
戦後の高度成長は一定のレベルにある多くの人たちが経済活動を支えていた。
これからは多様な個性の人々が異なった取り組みをすることが求められる。そのプレーヤーとして外国人はうってつけなのではないかというのが経団連の考え方。
たんなる労働力の穴埋めではないということ:日本人とは違った発想でものを考えてもらい、日本人を刺激して力を引き出してもらう。もちろん外国人たちにも相応のメリットがある。両者の協働

・現在の外国人受け入れ施策
総合的に外国人政策を担当する部署がない。いろんな役所が部分部分の政策を所管していて、総合的な体制がとれていない。今いる外国人の人たちをしっかり受け入れるためにやるべきことがあると考え、提案した。
<外国人受け入れの三原則>の提言
1.質と量の両面で十分にコントロールされた秩序ある受け入れ→これまでの政策では不足していた。例:入管体制における裁量行政→一定の基準が欠けていることが問題
2.外国人の人権と尊厳が擁護された受け入れ→日本人のアジア「蔑視」(軽視)の傾向:明治以来の「脱亜入欧」を引きずっている。それは世界の現実とは合致しない。日本は必ずしもアジアのトップではない。制度の改革は遅れているが、官僚はそれに気づいていない。外国人差別にもそれが反映されているのではないか?それをまずなくしていかないと日本は尊敬されない
3.受け入れ側、送り出し側双方にとってメリットある受け入れ:外国人労働は日本人労働者がやろうとしない分野に進出している 例:深夜の弁当工場などで働く日系人。キツイ労働。このような分野で労働力を得ることができるのは日本側のメリット。
  ただし、外国人労働者の母国にとってもメリットがあるのかどうかは考えなければいけないポイントである 例:海外からの送金に依存するフィリピン経済(GNPの4分の1)→国内で働ける場がないことが大きい。送り出したフィリピンにとってもメリット:日比の経済協定においてフィリピンからの看護士・介護士の受けいれが決まっている。

・企業の問題
→文化・習慣の違い、語学・意思疎通、意識の違いが大きい
いまだに外国人を使いきれていない日本企業が多い。内なる国際化が立ち遅れている。

受け入れにあたる課題
→日本企業側の意識改革:少数の外国人従業員のために大多数の日本人従業員が意識を変えることは実際としては難しい。
→入社後の教育訓練:語学、社会風習、法律も含めた研修をしっかりやる;非常に少ない外国人従業員のために社内で行うことは難しい。外部委託の要望は大きい。非企業セクターが企業に協力する必要もでてくる。
→生活サポート
→能力評価基準の明確化:キャリアプランをはっきりさせるための能力評価は日本企業がもっとも苦手な部分。

・地域の問題
→社会保障制度の改善充実:年金・医療保険の強制・同時加入が原則。外国人労働者の場合、年金受給権を得るための25年の期間は長すぎる。脱退一時金はあるが少額で掛け捨てに近い。外国人のなかには年金・医療保険に加入しない人も多い。中小企業のなかには法律違反にもかかわらずそれを黙認するところも多い。→無保険者の増加→自治体が医療費を肩代わりする制度がある。
同時加入が外国人にとっては適切なのかということも検討課題、自治体が医療費を肩代わりする制度の予算は税金に依存、つまり一般市民が負担している。それゆえ、医療保険に加入させていない企業に負担させるべきという考え方もある。

・外国人に労働させる際に生じる社会的コストを誰が負担するのか?
方法1.外国人を雇った企業から税を徴収?「人頭税」しかし日本の税は自己申告が基本なので、脱税が起こる可能性高い。
方法2.地域で基金をつくる

<グループ討論>
下記のファイルを参照
11月14日グループ討論の内容