東京外国語大学 総合文化研究所

所員 出版紹介2010

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野生の探偵たち(上・下)

ロベルト・ボラーニョ著、柳原孝敦・松本健二訳、東京外国語大学出版会、2010年4月1日

書評:高際裕哉(『総合文化研究』第14-15号)

旅する詩人たちが描く文学の地図

謎の女流詩人の行方を探してメキシコ北部の砂漠に向かった二人の若き詩人。その足取りを証言する、五十余名の人物の声。チリの鬼才による、初の長編にして最高傑作。

没後ますます国際的評価の高まるチリの鬼才による、半自伝的傑作小説。
一九七五年の大晦日、前衛詩グループを率いる若い詩人アルトゥーロ・ベラーノと盟友ウリセス・リマは、一九二〇年代に実在したとされる謎の女流詩人セサレア・ティナヘーロの足跡を辿ってメキシコ北部の砂漠地帯に旅立つ。だが、ある事件をきっかけに二人は世界各地を放浪することに。そのおよそ二十年間の旅の行方が、詩人志望の少年の日記(第Ⅰ部・第Ⅲ部)と、二人を知る人々へのインタビュー(第Ⅱ部)によってモザイクのように浮かび上がる。
二人の主人公の言動は、実在・架空のさまざまな証言者から断片的かつ間接的に伝えられるのみ。短編集『通話』でおなじみの人物も登場し、読者は姿の見えないインタビュアーとともに彼らの声に耳を傾け、二人の足取りを探る「探偵」さながらの行為を追体験する。
ラテンアメリカのみならず世界のさまざまな文学への偏愛と、自身も詩人として出発したボラーニョによる同世代の詩人たちへのオマージュが、本書の随所で捧げられている。独特の斜に構えた世界観と、全編を貫く強烈な皮肉とユーモアに、作家の真骨頂がある。

白水社 ウェブサイトより

 

地球のかたちを哲学する

ギヨーム・デュプラ著、博多かおる訳、西村書店、2010年6月20日

書評:桑田光平(『総合文化研究』第14-15号)

フラップ式のしかけをめくると、世界中の人びとが想像した地球のすがたが見られます。 知的好奇心を刺激する科学絵本! 今日ではだれもが地球はまるい惑星であるということを知っています。 けれども昔はどうだったのでしょうか? 人びとは、地球のかたちをさまざまに想像してきたのです。 そう、科学者だって最初はびっくりするような想像から始めたのでした。

西村書店 ウェブサイトより

 

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