東京外国語大学 総合文化研究所

所員 出版紹介2006

年度別 出版紹介はこちらから

激情と神秘:ルネ・シャールの詩と思想

西永良成著、岩波書店、2006年1月26日

書評:柴田勝二(『総合文化研究』第10号)

20世紀フランスを代表する、最後の形而上詩人──その詩世界の全貌を描く、初の本格的な作家論。晦渋をもってなる詩行を入念に咀嚼しつつ、現代を生きた神秘家の思想遍歴を鮮やかに再生させる。カミュ、ブランショ、ハイデガーらとの間に交わされた対話の火花によって、反時代的・超時代的な精神の「詩と真実」を照らし出す。

 

岩波書店 ウェブサイトより

 

 

大審問官スターリン

亀山郁夫著、小学館、2006年1月

書評:山口裕之(『総合文化研究』第10号)

20世紀ロシアの政治家と芸術家の葛藤劇
帝政ロシアで秘密警察の手先となった過去をもつスターリンは、自らのこのトラウマを癒すため、多くの人間を「粛清」の名目で抹殺してきた。ショスタコーヴィチ、プロコフィエフなどの音楽、ゴーリキー、ブルガーコフ、パステルナークなどの小説、マヤコフスキー、エレンブルクなどの詩、エイゼンシテインなどの映画?どれをとっても20世紀ソ連の芸術作品は美しいものばかりだ! 自由のないところに、真の芸術作品は生まれるのか? スターリンのモノローグをまじえながら、芸術家を巻き込んで繰り広げられたソ連秘密警察の大テロルの裏面をえぐる迫真のドキュメント。

 

 

残照の中の巨樹:正徹

村尾 誠一著、新典社、2006年6月2日

書評:岩崎務(『総合文化研究』第10号)

応仁の乱を前にして、王朝時代の残照が今にも消えようとする中に立つ巨樹、正徹。「幽玄」の理念を核に王朝和歌の伝統を継承したその作品は、難解だが魅了され心に残る。市井の庵を拠点に、生涯に三万余首の和歌を詠んだとも言われる、この特異な中世歌人の姿をあざやかに描き出す。

 

 

 

 

マフフーズ・文学・イスラム:エジプト知性の閃き

八木久美子著、第三書館、2006年9月

書評:川口健一(『総合文化研究』第10号)

アラブ世界唯一のノーベル文学賞受賞者が82歳で暗殺未遂に遭う。イスラム的知性のあり方を一世紀にわたるひとりの文学者の歩みの中に追求する。

 

 

 

 

 

漱石のなかの〈帝国〉:「国民作家」と近代日本

柴田勝二著、翰林書房、2006年12月

書評:鈴木聡(『総合文化研究』第10号)

『こゝろ』の「K」は「Korea」である。----[帝国]の進み行きと批判的に合一しつつ[日本]を描きつづけることで「国民作家」となった漱石の作品世界を、日本と東アジアの関係を軸とした同時代の国際情勢から読み解く野心的力編。

 

 

 

 

アジア/日本

米谷匡史著、岩波書店、2006年11月29日

書評:今福龍太(『総合文化研究』第10号)

西洋の衝撃がもたらしたアジアにおける近代の始まり―それは、西洋との間で摩擦と抗争を産むと同時に、アジアの内部にこそ摩擦と抗争、分裂と亀裂を産んだ。アジア/日本の近代経験、またアジア連帯論がはらむ連帯/侵略の両義性を、越境し相互浸透していく近代の力と、それがもたらす矛盾と葛藤をとおして問いなおす。

 

 

 

 

ブダペスト

シコ・ブアルキ著、武田千香訳、白水社、2006年2月28日

書評:柳原孝敦(『総合文化研究』第10号)

主人公のコスタは、リオとブダペストで二重生活を送るゴーストライター。手がけた他人の自伝がベストセラーになり、混乱がますます加速する…。僕はいったい誰なのか…。軽快なリズムで時空間を彷徨い、夢と現を行き交う…。やがて漂着する驚愕のラストとは?ブラジル音楽の巨匠が奏でる言葉の魔術。ブラジル文壇の権威ある“ジャブチ文学賞”“パッソ・フンド文学賞”ダブル受賞。

 

 

 

 

汝、気にすることなかれ:シューベルトの歌曲にちなむ死の小三部作

エルフリーデ・イェリネク著、谷川道子訳、論創社、2006年3月1日

書評:博多かおる(『総合文化研究』第10号)

シューベルトの歌曲を通奏低音とし、オーストリア史やブルク劇場やグリム童話などをモチーフとした、多層的でポリフォニックな3部作。著者は、2004年ノーベル文学賞を受賞したオーストリアの代表的な作家。

 

 

 

 

トニ・モリスン事典

エリザベス・A.ボーリュー著、荒このみ訳、雄松堂出版、2006年5月1日

ノーベル文学賞を受賞したはじめてのアフリカン・アメリカンの女性作家、トニ・モリスン。第1作「青い眼がほしい」から第7作「パラダイス」までの長編小説を取り上げ、作品の重要なテーマ・人物・場所などを分類・解釈する。

 

 

 

 

カラマーゾフの兄弟 1・2

ドストエフスキー著、亀山郁夫訳、光文社、2006年9月・11月

世界の深みにすっと入り込める翻訳をめざして……。流れ、勢いこそ『カラマーゾフ』の神髄だ。自分の課題として受けとめた今回の亀山郁夫訳は、作者の壮絶な「二枚舌」を摘出する。

父親フョードル・カラマーゾフは、圧倒的に粗野で精力的、好色きわまりない男だ。ミーチャ、イワン、アリョーシャの3人兄弟が家に戻り、その父親とともに妖艶な美人をめぐって繰り広げる葛藤。アリョーシャは、慈愛あふれるゾシマ長老に救いを求めるが……。

 

光文社 ウェブサイトより

 

 

出版紹介(年度別)