東京外国語大学 総合文化研究所

所員 出版紹介2009

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ロシア文学の食卓

沼野恭子著、NHK出版、2009年1月29日

書評:住岳夫(『総合文化研究』第13号)

ロシア文学は、多彩で、美味しい!

ロシア文学というと、思想や哲学を語る難解で深遠なものというイメージが強かった。でも実際は、楽しいもの、世俗的なもの、ファンタスティックなもの、グロテスクなもの……と多彩で、美味しい! ロシア文学を、即物的な「食」「料理」という観点から読みなおし、新しい鑑賞の地平を開く画期的な書。

NHK出版 ウェブサイトより

 

 

身体としての書物

今福龍太著、東京外国語大学出版会、2009年3月31日

書評:大澤俊朗(『総合文化研究』第13号)

書物はたえず世界へと生成する! 

ボルヘス、ジャベス、ベンヤミン、グリッサンらの独創的なテクストを読み解きながら開示される、「書物」という理念と感触をめぐる新たな身体哲学。


「世界のなかに私が住むこと。そして世界のなかに書物が存在すること。この二つの事実の偶然の関わりをめぐる、限りある消息をさまざまに探究することが、本書のテクストとして再現された講義の目的であった―」。


本という物質的存在のゆらぎをたえず傍らに感じながら行われた画期的な書物論、全14講。

 

中上健二と村上春樹〈脱六〇年代〉的世界のゆくえ

柴田勝二著、東京外国語大学出版会、2009年3月

書評:友常勉(『総合文化研究』第13号)

「大きな物語」としての“60年代”をくぐりぬけて作家となった中上と村上。その差異と重なりを緻密に読み解き、ポストモダンの様相を浮かび上がらせる画期的文学論。

 

 

 

 

 

ドストエフスキー:共苦する力

亀山郁夫著、東京外国語大学出版会、2009年4月30日

書評:菅井健太(『総合文化研究』第13号)

そこに人間の精神のすべてが書かれている

『罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』のドストエフスキー四大長編の深奥に分け入り、
そこに隠された秘密のメッセージを多様に読み解きながら、神なき時代に生きる現代人の救いのありかをさぐる。

 

 

母アンナの子連れ従軍記

ベルトルト・ブレヒト著、谷川道子訳、光文社、2009年8月6日

書評:千葉敏之(『総合文化研究』第13号)

17世紀、三十年戦争下のドイツ。軍隊に従って幌車を引きながら、戦場で抜け目なく生計を立てる女商人アンナ。度胸と愛嬌で戦争を行きぬく母の賢さ、強さ、そして愚かさを生き生きと描いた、劇作家ブレヒトの代表作を待望の新訳で贈る。母アンナはこんなにも魅力的だった!

光文社 ウェブサイトより

 

 

 

二つの時計の謎

チャッタワーラック著・宇戸清治訳、講談社、2009年9月10日

書評:安永有希(『総合文化研究』第13号)

残された証拠などから同時刻に3つの殺人事件が発生したとされていた。王族の道楽息子が全てのの犯人と考え捜査する二人の警察官に迫る脅迫の嵐。波乱の結末!

 

講談社 ウェブサイトより

 

 

 

通訳ダニエル・シュタイン

リュドミラ・ウリツカヤ著・前田和泉訳、新潮社、2009年8月31日

書評:中神美砂(『総合文化研究』第13号)

ポーランドのユダヤ人一家に生まれ、奇跡的にホロコーストを逃れてゲシュタポでナチの通訳をしながらユダヤ人脱走計画を成功させた男は、戦後カトリック神父になりエルサレムへと渡った。――ナチズムの東欧からパレスチナ問題のイスラエルへ。心から人を愛し、共存の理想を胸に戦い続けた、魂の通訳ダニエル・シュタインの波乱の生涯。

新潮社 ウェブサイトより

 

 

エドワード・サイード:対話は続く

ホミ・バーバ、W・J・T・ミッチェル編・上村忠男、八木久美子、粟屋利江訳、みすず書房、2009年10月21日

書評:マヤ・ボドピヴェッツ(『総合文化研究』第13号)

「不可能なことをやらかしてみよう、長期間にわたって友人であり協力者であった知識人たちに、突然中断してしまったエドワードとの対話を続けるよう求めてみよう…わたしたちが狙ったのは、サイードの仕事を学問分野や論点ごとに仕分けしたり、さまざまな問題への彼の対応の仕方をいわゆる客観的な立場から〈査定〉したり、彼の仕事をなんらかの特殊な政治的ないし知的なアジェンダのために動員したりすることではなかった。わたしたちはむしろ、サイードの思想の生きた繊維がどのように織り合わさって、彼が書いたものや語ったもの、彼の公的な人格と私的な自我のなかで、彼の声となって立ち現れているのかということをこそ、追跡しようとしたのだった」
(W・J・T・ミッチェル)
2003年9月25日、サイード死去の翌日、本書の編者であるミッチェルとホミ・バーバは電話で相談し、サイードの精神にふさわしい追悼集がつくられることになった。その結果、17名の多方向からの文章をとおして、その人と思想と実践の全貌が、ここに明らかになったのである。

みすず書房 ウェブサイトより

 

中世和歌詩論:新古今和歌集以後

村尾誠一著、青簡舎、2009年11月

書評:金中(『総合文化研究』第13号)

文学史的な展開の中で、中世和歌とは何かを考察。おおよそ13世紀から15世紀まで、後鳥羽院から正徹までの歌人を取上げ、作品や事象に即した形で具体的に論じる。

 

 

 

 

 

人種主義の歴史

ジョージ・M・フレドリクソン著・李孝徳訳、みすず書房、2009年12月18日

書評:相川拓也(『総合文化研究』第13号)

人間の差異は出自によるのか、文化によるのか。生来的で変更不可能な「人種」の名のもとに権力が行使され、支配や排除が合理化される人種主義。本書は、人種主義の歴史を簡明に描きだした記念碑的著作である。
古代社会には自民族中心主義や外国人嫌悪はあっても、「人種」という概念は存在しなかった。やがて中世キリスト教社会に「反ユダヤ主義」が、大航海時代以降には植民地政策に由来する「白人至上主義」が誕生し、人種主義が世界的に猛威をふるうようになる。これら二つの「人種主義」が、ナチスのホロコーストと、米国の奴隷制および南アフリカのアパルトヘイトに帰結するまでの歴史的・形態的な比較は、本書が初めての試みである。
21世紀、グローバル資本主義の進行が「人種の境界」を無化するとき、宗教や文化における「他者」が「人種」に置き換わるのだろうか。アイデンティティの喪失に怯え、あるいはその獲得に躍起になる人びとの狂信が政治化する危険性など、人種をめぐる今後を見通す。
巻末に「訳者解説 日本の人種主義を見すえて」を付した。

みすず書房 ウェブサイトより

 

新しい意識─ベトナムの亡命思想家ファム・コン・ティエン

野平宗弘著、岩波書店、2009年6月23日

書評:陶山大一郎(『総合文化研究』第13号)

現代思想の閉塞を破る本質的に新しい言葉と思考「魂の全面的な転倒」の道。文明の十字路を生きた、天才詩人の評伝。詩人の一身において、存在論と仏教思想が、沈黙と叫びが出会う。諸思潮のアマルガムと化した魂から、知られざるロゴスが噴出し、世界のみずみずしい意味が甦る。

 

 

 

 

作家の家―創作の現場を訪ねて

プレモリ=ドルーレ・フランチェスカ文、レナード・エリカ写真、鹿島茂監訳、博多かおる訳、西村書店、2009年6月23日

作家が丹精こめてつくりあげた“自らの城”を作家の生涯とともに貴重な写真で紹介。

 

 

 

 

 

 

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