東京外国語大学 総合文化研究所

所員 出版紹介1998

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儀式

レスリー・マーモン・シルコウ著、荒このみ訳、講談社、1998年1月

戦争後遺症のラグーナ・プエブロ族の混血の青年テイヨの心身は軍の病院でも治療できない。頼みは部族伝統の儀式。メディシン・マンのベトニー老人は治癒への“新しい儀式”と砂絵を示す。自然の知恵、愛、自己の認識。口承文学の香り高き寓話と詩を自在にとり入れつつ、第2次世界大戦後の“アメリカ・インディアン”の若者達の厳しい現実を描出。ネイティヴ・アメリカン文学の旗手シルコウの物語世界。

講談社 ウェブサイトより

 

 

バロック人ヴィーコ

上村忠男著、みすず書房、1998年3月13日

書評:鈴木聡(『総合文化研究』第2号)

〈バロック的精神に鼓舞されて《新しいフマニタスの学》の確立へと向かっていったヴィーコこそは、フッサールによって《ヨーロッパ諸学の危機》というように認識された現代における諸科学一般の学問論的危機状況のもとにあって、わたしたちを魅了してやまないヴィーコなのである。ということは、ヴィーコがそうであったように、わたしたちもまた現在、危機からの脱出の道を諸科学の古典的パラダイムからのまさしく《バロック的》と形容するほかない偏奇と逸脱のうちにもとめつつあるということではないのか。〉

イタリアの哲学者ジャンバッティスタ・ヴィーコは、デカルト主義が席巻していた当時のヨーロッパで、人間の文化世界の理解に新たな道をひらく謎の書『新しい学』を書き上げた。ヴィーコ研究第一人者による本書は、〈バロック〉を手がかりに『新しい学』とその著者を現代に蘇らせる。ヴィーコ解読に斬新な光をあてた思考の書。

みすず書房 ウェブサイトより

サバルタンは語ることができるか

ガーヤートリー・チャクラヴォルティ・スピヴァク著、上村忠男訳、みすず書房、1998年12月10日

1976年にデリダの『グラマトロジーについて』の英訳を刊行して一躍脚光を浴びて以来、スピヴァクはデリダとマルクスの方法を主たる武器にして、フェミニズムとポストコロニアルの問題圏の交差する地点に定位しつつ、現代世界における権力と知識の地政学的布置関係に果敢な介入をくわだててきた。本書は著者の代表作であり、ポストコロニアル批評の到達地平をしめす問題提起の書である。

従属的地位にあるサバルタンの女性について、知識人は語ることができるのか。フーコーやドゥルーズを批判しながら、一方でインドの寡婦殉死の慣習を詳細に検討した、現代思想の傑作である。

みすず書房 ウェブサイトより

 

モラエスの日本随想記:徳島の盆踊り

 W・DE・モラエス著、岡村多希子訳、講談社、1998年1月

書評:中山和芳(『総合文化研究』第2号)

本書は、モラエスが終(つい)の栖(すみか)と定めた徳島から祖国ポルトガルの新聞に連載した記事をまとめたもので、一市井人の眼で捉えた大正初期の日本人の生活と死生観が讃嘆をもって語られる。殊に死者を迎える祭り「盆」への憧憬は、孤愁の異邦人に愛しい死者との再会を夢想させる。吉井勇が「日本を恋ぬ 悲しきまでに」と詠じたモラエスの「日本」が、現代の日本人の心奥に埋没した魂の響きを呼び起こしてくれる。

講談社 ウェブサイトより


 

讃酒詩話

沓掛良彦著、岩波書店、1998年10月

書評:小林二男(『総合文化研究』第2号)

洋の東西を問わず、アナクレオン、オヴィディウス、李白、芭蕉らの数多の飲酒詩をかみしめ、その芳醇なる詩境を味わい楽しみ、酒興の底知れぬ蘊奥をきわめた一冊。

 

 

 

 

 

 

イスラーム神秘主義聖者列伝

アッタール著、藤井守男訳、国書刊行会、1998年6月29日

書評:萩田博(『総合文化研究』第2号)

中世ペルシアの大詩人アッタールによって編まれた、スーフィズム文献の古典。神への愛に身を捧げたイスラーム聖者たちの苛烈な生涯を、さまざまな逸話・奇蹟譚を交えて描く。ペルシア語原典より本邦初訳。

国書刊行会 ウェブサイトより

 

 

 

 

ミラン・クンデラの思想 

西永良成著、平凡社、1998年6月

書評:亀山都夫(『総合文化研究』第2号)

いま最も注目されている作家クンデラ。その小説世界に結晶した「思想・哲学」を問い、笑い・性・歴史・個人主義の行方を追究する。クンデラと親交を結ぶ著者ならではの達成。

平凡社 ウェブサイトより

 

 

 

変貌するフランス:個人・社会・国家

西永良成著、NHK出版、1998年11月1日

’70年代以降のポスト・モダン期を経て、さまざまな位相でフランスは急変した。自由・芸術・個人主義の国というイメージは現在も当てはまるのか。変貌の背景を探りながら人種・言語・家族などの切り口で分析。

 

 

NHK出版 ウェブサイトより3

 

「超」フランス語入門:その美しさと愉しみ

西永良成著、中央公論新社、1998年11月25日

きわめて明晰で美しいといわれるフランス語。しかし、独特の発音や動詞の活用に習得の難しさを感じる人も少なくない。本書は、シネマやアンコールといった日本語に定着している語を足がかりに、発音の仕組みが気楽に身につくよう配慮した(発音はカナ表記で示す)。また、理屈抜きで覚えたい挨拶や日常会話を効果的に選択し、広くフランス語の豊穣な世界に親しんでもらうために、シャンソンや歴史上に残る名文句も多数取り上げた。

中央公論新社 ウェブサイトより

 

 

詩におけるルネ・シャール

ポール・ヴェーヌ著、西永良成訳、法政大学出版局、1998年12月

フランスを代表する歴史家が現代詩の高峰に屹立する詩人に魅せられて,その謎にみちた世界に挑み,作品の詳細かつ体系的な注解を通して詩人の全体像を浮彫にする。

法政大学出版局 ウェブサイトより

 

 

 

 

破滅のマヤコフスキー

亀山郁夫著、筑摩書房、1998年9月25日

書評:西永良成(『総合文化研究』第2号)

革命詩人はなぜ死んだのか? 新資料を駆使し、全体主義の嵐に呑み込まれた詩人の「愛」のメカニズムと謎に包まれた死の全容に迫る。究極のマヤコフスキー論。

筑摩書房 ウェブサイトより

 

 

 

 

フョードロフ伝

S・セミョーノヴァ著、安岡治子・亀山郁夫訳、水声社、1998年6月

宗教的かつ科学的なその夢想的理念によって、あらゆるものを分離分化する近代の知に異を唱え、特異な〈統合〉の思想を説く、19世紀末ロシアの〈幻の思想家〉フョードロフの生涯と思想の全貌を明らかにする、本邦初の本格的評伝。

水声社 ウェブサイトより

 

 



ホセ・マルティ選集1:交響する文学        

牛島信明ほか訳、日本経済評論社、1998年11月

キューバが生んだ19世紀の詩人、思想家、独立運動の指導者マルティの文学面の業績を編集。「イスマエリーリョ」「素朴な詩」母や息子への書簡、評論等を収録する。

日本経済評論社 ウェブサイトより




 

 

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