東京外国語大学 総合文化研究所

所員 出版紹介2000

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翻訳百年:外国文学と日本の近代

原卓也、西永良成編集、大修館書店、2000年2月10日

文学はどのように訳されたか。各国文学の専門家たちが、自らの翻訳体験をふまえながら先人たちの訳業の意味と翻訳をとおして見えてくる日本と日本語の姿を語る。

善と悪の究極について(キケロー選集10、哲学Ⅲ)

岩崎務著、岩波書店、2000年3月7日

究極の善はすでに自然の中にある。ならば、自然は何を求めているのか。それを知らぬ不完全な人間は賢者の生を目指し、果てなき探究の道へ誘われる。私たちは、それを「知恵」と呼ぶ。倫理学の基礎を今日に伝える精緻な哲学的対話篇。







社会的相互交渉と子供の人格発達

田島信元著、多賀出版、2000年2月

本書では、従来の発達研究と社会文化的アプローチの連続性を吟味するとともに、発達研究における社会文化的アプローチの適用可能性の吟味を通して、理論的にも方法論的にも、発達過程そのものを扱う研究体制の確立の必要性を提言している。







発達研究の技法

田島信元・西野泰広編著、福村出版、 2000年4月10日

発達心理学領域の研究法にかかわる諸技法について解説する。方法論の基礎的な考え方とデータ処理のあり方を解説した上で、主要な技法群や最近注目されている諸技法を紹介。最先端の発達研究の事例も収める。








夜が昼に語ること

エクトール・ビアンシオッティ著、西永良成訳、国際言語文化振興財団、2000年3月

書評:杉浦勉(『総合文化研究』第4号)

本書は、祖国のアルゼンチンと母語のスペイン語を捨て、フランス人としてフランス語で小説を書いてゆこうと決意したエクトール・ビアンシォッティが試みた自伝風の小説であり、いかにして母語のスペイン語からみずから選び取った言語フランス語へと移行したのかという、亡命作家の言語的解放、旅立ちをも語っている。モナコ・ピエール大公文学賞を始め、さまざまな文学賞を獲得したフランス亡命作家による詩的自伝小説。







アフリカン・アメリカンの文学:「私には夢がある」考

荒このみ著、平凡社、2000年4月

書評:川口健一(『総合文化研究』第4号)

キング牧師の「私には夢がある」という演説で象徴的に語られた「夢」とは何だろうか。アメリカ社会の構成員でありながら、差別によって「アメリカン・ドリーム」から疎外されてきたアメリカの黒人のなかには、アメリカ社会内部における自らの権利を主張する一方で、精神的な拠り所を先祖の地、アフリカ大陸に求める者もいた。本書では、アミリ・バラカ,ジェイムズ・ボールドウィン,マヤ・アンジェロウ,チャールズ・ジョンソン,トニ・モリスンら20世紀の黒人作家による文学作品を読み解き、「夢」を求めてアメリカ社会を切り拓いてきた「アメリカの黒人」の姿を新たに提起する。




ハイナー・ミュラー・マシーン

谷川道子著、未来社、2000年10月1日

書評:亀山郁夫(『総合文化研究』第4号)

20世紀末までの歴史を現在形で透視しつつ、留まることなく変幻自在に活動し続けた、東ドイツ出身の劇作家、ハイナー・ミュラー。「世界」と「演劇」の脱構築に向けて回りつづけた彼を、時代と共に追うドキュメント。






侵入者:いま〈生命〉はどこに?

ジャン=リュック・ナンシー著、西谷修訳編、以文社、2000年8月30日

書評:吉本秀之(『総合文化研究』第4号)

「わたしの心臓がわたしにとってよそ者になっていた」 現代フランス哲学の第一人者が、移植後10年にして綴る「他人の心臓」で生きる体験。「わたし」はどこへゆくのか? 「命」とは何か? 訳者の「不死の時代」等を併録。






ヴェネツィア水の夢

和田忠彦著、筑摩書房、2000年7月

書評:西永良成(『総合文化研究』第4号)

夢の彼方にきらめく旅の記憶。エーコの驚異的な記憶力と孤独、カルヴィーノの最後の言葉、ナポリを愛したベンヤミン、異郷に死んでいった詩人たち…。名訳者としても知られるイタリア文学者が、ドラマを秘めて生きる作家・詩人たちの姿を一瞬の光の交錯のうちに鮮烈に描き出す。





モラエスの旅:ポルトガル文人外交官の生涯

岡村多希子著、彩流社、2000年2月

書評:中山和芳(『総合文化研究』第4号)

リスボン、モザンビーク、マカオ、神戸、そしてその生涯を閉じた徳島。日本を世界に紹介したポルトガル人作家モラエスの波瀾の人生を、残された書簡や文書をもとに辿る。







文酒閑話

沓掛良彦著、平凡社、2000年8月

書評:柴田勝二(『総合文化研究』第4号)

書評めいたもの、読書感想文、先師の思い出や辱知の詩人・文人の思い出を綴ったもの、自分の周囲に生きる人々の酒境・酒態について、酔余に勝手気ままに筆を走らせたほろ酔いエッセイ。





詩女神の娘たち:女性詩人、十七の肖像

沓掛良彦著、未知谷、2000年8月

書評:柴田勝二(『総合文化研究』第4号)

書評めいたもの、読書感想文、先師の思い出や辱知の詩人・文人の思い出を綴ったもの、自分の周囲に生きる人々の酒境・酒態について、酔余に勝手気ままに筆を走らせたほろ酔いエッセイ。








国民革命幻想:デ・サンクティスからグラムシへ

上村忠男著、現代思潮新社、2000年7月1日

書評:大須賀史和(『総合文化研究』第4号)

「イタリアはできた。これからはイタリア人をつくらねばならない。」イタリアのリソルジメント運動は1861年に国家統一を果たす。これからの学問は国民国家の精神的紐帯になるべき、と説くデ・サンクティスの政治教育的課題を、1920‐30年代のファシズム台頭期の知識人たちはいかに引き継いだか。名著再発見/古典再読。







全体芸術様式スターリン

ボリス・グロイス著、亀山郁夫・古賀義顕訳、未来社、2000年7月1日

書評:萎玉楚(『総合文化研究』第4号)

「イタリアはできた。これからはイタリア人をつくらねばならない。」イタリアのリソルジメント運動は1861年に国家統一を果たす。これからの学問は国民国家の精神的紐帯になるべき、と説くデ・サンクティスの政治教育的課題を、1920‐30年代のファシズム台頭期の知識人たちはいかに引き継いだか。名著再発見/古典再読。







農園の日差し

タック・ラム著、川口健一編訳、大同生命国際文化基金、2000年9月30日

書評:荒このみ(『総合文化研究』第4号)

本書には、ベトナム近代文学を代表する作家の一人であるタック・ラムの短編小説12編と評論4編が収録されています。タック・ラムは「生きる」ということ、そして生きるということへの「覚醒」を追求した作家です。「ただ単に食べて眠り、遊ぶだけなら、その生き方には何の貴さもない。人生に必要なのは内面の生き方、魂の生き方である」と語り、小説は“人生を精神面でより充実したものにするためにある”という文学観のもとに執筆を続けました。本作品は、ベトナムがまだフランスの植民地だった時代に書かれたものですが、個々の作品からは、現代にも通じるものを十分感じとっていただけることでしょう。





ガーンディー自叙伝〈1・2〉

M.K. ガンディー著、田中敏雄訳、平凡社、2000年6月1日

書評:菊池陽子(『総合文化研究』第4号)

性欲に悩み、妻にあたり、菜食を実験して離欲者たらんと努め、奉仕の精神で偉大な運動を指導―その半生を、自らと民衆の言葉で平易に、真率に、ユーモラスに語りかける、『自叙伝』決定版。

政治も食事も病気の治療も、すべてを真理のための実験として行った生涯を肉声で語る第2巻は、南アフリカとインドでのサッティヤーグラハ、カーディー(手織綿布)の誕生、統一への苦闘等を記す。





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