1月16日大木先生講義終了

外国人に関わる法律問題(1) ( 2007年1月16日 大木和弘先生)

講義のまとめ - レジュメの補充 ( 鈴木美弥子 )

1 法律的意味での外国人
憲法10条、国籍法 - 日本国民-日本国籍を有する者
          → 日本国籍を有さない者(外国人)は
            他国籍を有する者と無国籍の者に分かれる
外国人登録法の対象者 - 日本に90日を超えて滞在する外国人

出生による国籍の取得
血統主義 - 父又は母が自国民であれば子に国籍を与える
フランス・ドイツ・イタリア・中国・韓国など
生地主義 - 自国の領土内で生まれた子に国籍を与える
アメリカ・カナダ・ブラジル・オーストラリアなど
日本は血統主義をとる。近年までは、日本人父親の子供にしか国籍が与えられない父系血統主義をとっていたが、1985年に国籍法が改定され、日本人母親の子供にも日本国籍が与えられる父母両系血統主義が採用された。生まれつきの重国籍者は22歳に達するまでに、国籍を選択しなければならない。

2 憲法上の人権享有主体性
・マクリーン事件とは、1969年にロナルド・アラン・マクリーンが日本入国し(在留期間1年の上陸許可)、入国後、ベトナム反戦政治活動を行った。1970年に在留の継続を申請したが、不許可となったためその処分取消しを求めて出訴した事件。
不許可処分の取消を主張するにあたり、表現の自由(政治活動の自由)の侵害が主張された。
・(外務公務員を除き)公務員について、法律上は日本国籍を就任要件として規定しているわけではないが、かつては、「当然の法理」として、公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには、日本国籍が必要とされてきた。しかし、80年代に入り、教員採用又は現業職での国籍条項の撤廃がすすみはじめた。そして、1996年の「公権力に携わる具体的なポストや人事方針を定めれば、一般職でも外国人の採用は可能」との白川自治大臣談話を契機に、地方自治体において、公権力の行使又は公の意思の形成に参画する職につくことはできないという制約のもと、一般職について外国人に門戸が開かれた。
採用のつぎに問題になってくるのが、昇進の問題である
 → 東京都に保健婦として採用されていた在日韓国人2世が、管理職への昇任試験を受験しようとしたところ、受験資格の国籍条項を理由に都が受験を拒否したのは不当だとして提訴 - 最判平17.1.26
・社会保障については、1982年に難民条約を批准し、国民年金法や児童扶養手当法などの国籍条項が撤廃され、1986年には、国民健康保険についても国籍条項が完全に撤廃された。ただし、これらを受けるには、外国人登録など様々な条件が必要とされる。

3 公権力の関係と私人間での法律関係
1月30日の回でも説明します。ここの説明は、5ディスカッションのテーマにおいても、30日の回で扱う問題においても重要な視点となります。

4 法律関係の渉外性
訴訟提起、執行の困難 - 青森県住宅供給公社の巨額横領事件、日本の領事館のない国にいる原告に対する訴状送付など

5 ディスカッション - 視点
・日本国籍でないことから発生しうるリスク - 帰国等
・日本国籍を持つものが融資を受ける条件とこのケースにおける条件との比較
・日本国籍を持つ者と、このケースの具体的状況の相違(程度)
・新しい融資事業の可能性