崔鉉培   さいげんばい

     최현배


査定した朝鮮語標準語集   さていしたちょうせんごひょうじゅんごしゅう

     사정한 조선어 표준말 모음


子音   しいん   consonant   자음<子音>   《南》 닿소리

    朝鮮語の子音は大きく分けて口音・鼻音・流音の3種類があり、口音はさらに平音・激音・濃音の3つの系列がある。
 両唇音歯茎音 歯茎摩擦音硬口蓋破擦音 軟口蓋音喉頭音
口音平音  
激音  
濃音  
鼻音     
流音        
    訓民正音では中国音韻学の分類に基づき、子音を以下のように分類している。
 牙音舌音 唇音歯 音 喉音
全  清
次  清  
全  濁
不清不濁 ㄴ,ㄹ


子音語幹   しいんごかん

    子音で終わっている語幹用言の場合は、ㄹ以外の子音で終わっている語幹を指す。먹- 「食べる」、없- 「ない」、놓- 「置く」、잃- 「失う」など。体言の場合は、通常ㄹを含めた子音で終わっている語幹を指す。대학 「大学」、값 「値段」、아들 「息子」など。ただし、ㄹで終わる体言語幹をㄹ語幹とすることもある。   母音語幹ㄹ語幹


使役態   しえきたい   《南》 사동태<使動態>   《北》 사역상<使役相>

     ヴォイス


歯音   しおん   치음<齒音>

    訓民正音における子音の分類の1つ。現代言語学の歯茎摩擦音および硬口蓋破擦音に当たり、ㅅ・ㅆ・ㅈ・ㅉ・ㅊ がこれに属する。また、中期朝鮮語には半歯音 ㅿ があった。  子音


指示詞   しじし

    話し手と聞き手の物理的あるいは心理的な位置関係により、対象や状態などを指し示す単語の一群。日本語の「こそあど言葉」に当たる。
  이系列 그系列 저系列 어系列
冠形詞 이 「この」 그 「その」 저 「あの」 어너 「どの」
事物 이것 「これ」 그것 「それ」 저것 「あれ」 어느것 「どれ」
場所 여기 「ここ」 거기 「そこ」 저기 「あそこ」 어디 「どこ」
方向 이쪽 「こっち」
이리 「こちら」
그쪽 「そっち」
그리 「そちら」
저쪽 「あっち」
저리 「あちら」
어느쪽 「どっち」
 
形容詞 이렇다 「こうだ」 그렇다 「そうだ」 저렇다 「ああだ」 어떻다 「どうだ」
動詞 이러다 「こうする」 그러다 「そうする」 저러다 「ああする」 어쩌다 「どうする」
副詞 이리 「こう」 그리 「そう」 저리 「ああ」 어찌 「どう」
    4つの区分は日本語の「こ・そ・あ・ど」の区分とほぼ一致する。すなわち、이系列は話し手の領域に属するものに対して用いられ、日本語の「こ」系列に対応し、그系列は聞き手の領域に対して用いられ「そ」系列に対応し、저系列は第三の領域に対して用いられ「あ」系列に対応し、어系列は不定の領域に対して用いられ「ど」系列に対応する。ただし、話の現場に存在しないものを話題として挙げる場合に、日本語は聞き手にとって既知のものであると話し手が判断するものについては「あ」を用い、聞き手にとって未知のものであると判断するものについては「そ」系列を用いるのに対し、朝鮮語では聞き手にとって既知であるか未知であるかに関わらず그系列を用いる。
A:너 역앞에 있는 중국집 알아? 「お前、駅前にあるあの中華料理屋しってる?」
B:아니, 모르는데 왜? 「いや、しらないけど、どうして?」
A: 집이 굉장히 맛있대. 「その店、すごくおいしいんだって。」


時制   じせい   tense   《南》 시제<時制>   《北》 시간범주<時間範疇>

    現代朝鮮語の時制は、過去時制と非過去時制(現在時制)の2つがある。未来時制はない。
  非過去 過去
動詞 I-는다(子音語幹)
II-ㄴ다(母音・ㄹ語幹)
III-ㅆ- III-ㅆ었-
存在詞 I-다
形容詞・指定詞
    過去時制はそれを表す専用の接尾辞 III-ㅆ- があるが、非過去時制はそれを表す専用の接尾辞を持たず、終止形の中に融合している(上図では한다体を例に挙げた)。
    過去接尾辞が重複した III-ㅆ었- は、結果が残っていない過去を表す。例えば 왔다 といった場合、動作主は来てその場にいる可能性があるが、왔었다 といった場合、結果が残っていない過去を表すので、動作主は来たがその場にはもういないことを表す。
    【未来時制に関する見解】 韓国の一部の研究者、および共和国の公式見解では、未来時制 I-겠- を認めている。しかし、I-겠- は意志または推量を表すムードの形式であるとする見解が一般的である。
    【時制のアスペクト的用法】 結果が残る動作を表す動詞の過去形は、結果の継続をも表しうる。この場合、過去形はアスペクト形 III-Ø 있다 と同様の意味を表す。例:의자에 앉았다 「椅子に座った/座っている」
    【連体形の時制】 連体形の時制の体系は終止形のそれと若干異なる。   連体形
  非過去 過去1 過去2 過去3 未実現
動詞 I-는 II-ㄴ III-ㅆ던 I-던 II-ㄹ
存在詞 I-던  
形容詞・指定詞 II-ㄴ  


親しい上称   したしいじょうしょう

     해요体


指定詞   していし   《南》 서술격조사<敍述格助詞>   《北》 용언바꿈토<用言――吐>

     用言の下位部類の1つ。-이다 「…である」と 아니다 「…でない」の2語がこれに属する。体言に付いて(아니다 は -가/-이 を伴って)体言を用言化する働きを持つ。形容詞とほぼ同じ語形変化をするが、第Ⅲ語基で独特な形が現れる。-이다 を例にすれば、通常の -이어- 以外に、-이- (接続形)、-이- (해요体語尾 III-요 の前)、-이야- (해体語尾 III-Ø の前)という形がある。
     韓国・共和国では一般に指定詞を認ない。韓国では、学校文法などで -이다 を「서술격 조사(叙述格助詞)」と呼んでいるが、これを格助詞とすることについては異論が多い。共和国では -이다 を体言を用言化する「용언바꿈토(用言変換吐)」としている。



終止形   しゅうしけい   《南》 종결형<終結形>   《北》 맺음형<――形>

     用言の語形のうち、文末あるいは 하다 などの前に来うる形。II-ㅂ니다/I-습니다(…します)、I-네요(…しますね) など。用言の終止形はその内部に時制ムードなどいくつかの文法的要素が同時に溶け込んでいる。


周時経   しゅうじけい

     주시경


終声   しゅうせい   받침, 종성<終聲>

     音節末にある子音。パッチともいう。朝鮮語で音節末に立つことのできる子音は ㅂ,ㄷ,ㄱ,ㅁ,ㄴ,ㅇ,ㄹ の7種類である。ただし、終声の音は7種類であるが、文字として表記される場合にはさまざまに書き分けることがある。終声音と終声字母の関係は以下のとおり。
終声音終 声 字 母
ㅂ, ㅍ, ㅄ, ㄼ, ㄿ
ㄷ, ㅌ, ㅅ, ㅆ, ㅈ, ㅊ, ㅎ
ㄱ, ㅋ, ㄲ, ㄳ, ㄺ
ㅁ, ㄻ
ㄴ, ㄵ, ㄶ
ㄹ, ㄼ, ㄽ, ㄾ, ㅀ
南では 밟다 「踏む」のみ[ㅂ]、北では全ての場合[ㅂ]と発音する。


終声の初声化   しゅうせいのしょせいか

    語中において終声の直後に母音が来るとき(表記上ではㅇが来るとき)、終声が次の音節の初声として発音される現象。음악[으막]<音樂>など。この現象をリエーゾンと呼ぶ学者もいるが、適切ではない。 「終声の初声化、사이시옷、リエーゾン」のページ


受動態   じゅどうたい   《南》 피동태<被動態>   《北》 피동상<被動相>

     ヴォイス


上称   じょうしょう

    합니다体のこと。広い意味では합니다体と해요体を合わせて上称ともいう。   합니다体해요体


助詞   じょし   《南》 조사<助詞>, 토씨

     語尾


助数詞   じょすうし

     名数詞


初声   しょせい   초성<初聲>

    音節の頭にある子音。朝鮮語の音節は、伝統的に初声・中声終声の3つの部分に分ける。


叙法   じょほう

     ムード


唇音   しんおん   순음<脣音>

    訓民正音における子音の分類の1つ。現代言語学の両唇音に当たり、ㅂ・ㅃ・ㅍ・ㅁ がこれに属する。   子音


唇軽音   しんけいおん   순경음<脣輕音>

    中期朝鮮語における子音の1つで、唇音の一種。唇音の子音字母の下に ㅇ を添えた ㅸ,ㅹ,ㆄ,ㅱ によって表される。ㅹ,ㆄ,ㅱ は特殊な漢字音や外来語の表記にのみ用いられ,朝鮮語の表記には用いられなかった。ㅸ は語中にのみ現れ、両唇摩擦音 [β] と推測される。


数詞   すうし   수사<數詞>

    体言の下位部類の1つ。対象を数の側面から指し示す単語。漢字語数詞と固有語数詞の2種類がある。
    【固有語数詞】 固有語数詞は1から99まである。100以上の固有語数詞は現代語にないが、中期朝鮮語には 온 「100」、즈믄 「1000」があった。하나 「1つ」、둘 「2つ」、셋 「3つ」、넷 「4つ」、스물 「20」には連体形 한 「1つの」、두 「2つの」、세 「3つの」、네 「4つの」、스무 「20の」がある。


正格用言   せいかくようげん   《南》 규칙용언<規則用言>

    基本形から規則的に3つの語基の形を導き出せる用言。正則用言ともいう。一般の子音語幹母音語幹用言の他に으語幹ㄹ語幹も正格用言である。韓国・共和国では으語幹・ㄹ語幹は変格用言と見なしている。
  子音語幹 ㄹ語幹 母音語幹 으語幹
第I語基 받- 살-/사- 보- 바쁘-
第II語基 받으-
第II語基 받아- 살아- 보아- 바빠-


正書法   せいしょほう

    現在の南北の正書法の原形は、朝鮮語学会が1933年に制定した 한글 맞춤법 통일안 にある。ここではじめて形態主義に基づく表記、分かち書きなどが正式に採用された。韓国では1988年に 한글 맞춤법 に改定され現在に至る。共和国では1954年の 조선어 철자법 を経て1966年に制定された 조선말규범집 の1987年改定版が現在の正書法となっているが、分かち書きについては2000年に制定された 조선말 띄여쓰기규범 にしたがっている。   맞춤법


声調   せいちょう   성조<聲調>

    中期朝鮮語の高低アクセント。当時から中国音韻学の用語を援用して、朝鮮語の高低アクセントを声調と称した。韓国では、現代語の方言にある高低アクセントも声調と呼んでいる。   アクセント


舌音   ぜつおん   설음<舌音>

    訓民正音における子音の分類の1つ。現代言語学の歯茎音に当たり、ㄷ・ㄸ・ㅌ・ㄴ・ㄹ がこれに属する。   子音


接続形   せつぞくけい   《南》 접속형<接續形>   《北》 이음형<――形>

    用言の語形のうち、文中に来て文の以降の部分につながる形。副動詞形ともいう。I-고 「…して」、II-면서 「…しながら」、I-더라도 「…しようとも」 など。朝鮮語は接続形の数が多いことで知られている。


接続詞   せつぞくし   접속사<接續詞>   《南》 이음씨

    品詞の1つで、文と文、あるいは単語と単語を結ぶ単語の一群。그리고 「そして」,그러나 「しかし」,및 「および」など。接続詞という品を認めない研究者もあるが、そのような見解では、그러나 などを 그렇다 の変化形と考えたり、및 を副詞と捉えたりする。


接頭辞   せっとうじ   prefix   《南》 접두사<接頭辭>   《北》 앞붙이

    語根の前に付き、語根と合わさって拡大された語幹を作る要素。되살아나다 「生き返る」の 되-、헛수고 「むだ骨」の 헛- など。


接尾辞   せつびじ   suffix   《南》 접미사<接尾辭>, 선어말어미<先語末語尾>   《北》 뒤붙이, 토<吐>

    語根の後ろ、語尾の前に入り込み、語根と合わさって拡大された語幹を作る要素。
    用言につく接尾辞は用言接尾辞という。日本語のいわゆる「助動詞」に相当するもので、用言語幹と同様に語基による活用をする。蓋然性接尾辞 I-겠-、尊敬接尾辞 II-시-、過去接尾辞 III-ㅆ- など。補助語幹ともいう。
    体言につく接尾辞は体言接尾辞という。複数接尾辞 -들、尊称接尾辞 -님 など。
    韓国では、用言接尾辞を「선어말어미<先語末語尾>」、体言語尾を「접미사<接尾辭>」としている。共和国では語彙的な意味を担う接尾辞は「뒤붙이」とし、文法的な役割を果たす用言接尾辞・体言接尾辞ともに「토<吐>」としている。



  そう

     アスペクト


総合的な形   そうごうてきなかたち   synthetic form   종합적 형식<綜合的形式>

    1つの形の中でさまざまな文法的な意味を表す形。例えば I-습니다 「…します」は1単語の中で現在・上称・叙述の意味を表す総合的な形である。   分析的な形


存在詞   そんざいし

    用言の下位部類の1つ。있다 「ある、いる」 と 없다 「ない、いない」の2語がこれに属する。研究者によっては 계시다 「いらっしゃる」を含めることもある。終止形において、있다 は動詞と同じく命令形、意志形、勧誘法を持つが 없다 はそれらを持たない。詠嘆形は形容詞と同じく I-구나 などの形をとり、婉曲形は動詞と同じく I-는데요 の形をとる。連体形は、非過去連体形で動詞と同じく I-는 をとるが過去連体形では形容詞と同じく III-ㅆ던 や I-던 をとる。このように、後ろにつく語尾が、あるときには動詞と同じものがつき、あるときは形容詞と同じものがつくというように、動詞と形容詞の中間的な語形変化をする。
    韓国・共和国では一般に存在詞を認めていない。多くの場合、있다 を動詞に、없다 を形容詞に分類する。


尊敬   そんけい   《南》 주체 높임법<主體――法>   《北》 존경범주<尊敬範疇>

    尊待法の1つ。話題の人物に対して直接あがめる表現。尊敬接尾辞 II-시- によって表される。いくつかの動詞は全く別個の単語を用いて尊敬を表す。例えば、있다 「いる」に対して 계시다 「いらっしゃる」、자다 「寝る」に対して 주무시다 「お休みになる」など。


尊待法   そんたいほう   《南》 경어법<敬語法>, 존대법<尊待法>

    話題の人物をあがめる表現に関する文法範疇。尊敬謙譲の2つがある。