態 たい
→ ヴォイス
待遇法 たいぐうほう 《南》 대우법<待遇法> 《北》 계칭범주<階稱範疇>
話し手と聞き手の社会的関係や心理的距離によって、話し手が聞き手に対してとる態度を表す文法範疇。日本語の丁寧/ぞんざいに当たるもので、階称ともいう。現代朝鮮語の待遇法は합니다体(上称),하오体(中称),하네体(等称),한다体(下称),해요体(略待上称、親しい上称),해体(半言、パンマル)の6種類がある。このうち하오体と하네体は主に中年以上の世代でのみ用いられ、徐々に使われなくなってきている。
韓国では一般に합니다体を합쇼체、하네体を하게체、한다体を해라체と呼ぶが、この名称の違いはそれぞれの名称を叙述形からつけるか命令形からつけるかの違いに過ぎない。共和国では계렬<系列>という用語を用いつつ、합니다体を≪하십시오≫계렬、하네体を≪하게≫계렬、한다体を≪해라≫계렬、해体を반말계렬と呼ぶ。
体言 たいげん 체언<體言> 《南》 임자씨
品詞の1つで、対象を表すもの。下位部類に名詞・代名詞・数詞がある。韓国・共和国では名詞・代名詞・数詞をそれぞれ1つの品詞と見なし、体言はそれらの品詞を総称するものと捉えている。
体言形 たいげんけい 《南》 명사형<名詞形> 《北》 체언형<體言形>
用言の語形のうち、体言に相当する形。名詞形、動名詞形ともいう。格語尾をとりうるなど、体言と同等の性質を持つ。体言形語尾 I-기、II-ㅁ によって表される。また I-지 は否定形を作る形であるが体言形の一種であり、I-지 않다 は直訳すれば「…することしない」という意味である。
体言語尾 たいげんごび
語尾のうち、原則として体言にのみ付くもの。格語尾と並立語尾の2つに下位分類される。
代名詞 だいめいし 대명사<代名詞>
体言のうち、対象それ自体を表すのではなく、対象を指し示す単語。
【人称代名詞】【指示代名詞】1人称 저 「わたくし」,저희[들] 「わたくしども」は丁寧形で합니다体や해요体の文とともによく用いられ、나 「俺/あたし」,우리[들] 「俺たち/あたしたち」は非丁寧形で한다体や해体とともによく用いられる。
単数 複数 1人称 저,나 저희[들],우리[들] 2人称 그대《書》,
당신,너,자네그대들《書》,
당신들,너희[들],자네들3人称 그《書》,그녀《書》,그이《書》 그들《書》,그녀들《書》,그이들《書》
2人称代名詞は、目上に対して使うことのできるものはない。당신 「あなた」,당신들 「あなたたち」は話し言葉としては夫婦間でのみ用いる場合を除いては、けんかをするときなど特殊な状況以外では用いられない。書き言葉としては演説・広告文などで不特定多数に対して用いる。그대,그대들 「あなた」は詩などでのみ用いる。너 「おまえ」,너희[들] 「おまえら」は親しい同年輩以下に対して用い、한다体や해体とともによく用いられる。자네 「君」,자네들 「君ら」は成人が用い、上司が部下に対してや、大学の先生が学生に対して用い、하네体とともによく用いられる。
3人称 그 「彼/それ」,그녀 「彼女」,그이 「かの人」(およびそれらの複数形)はいずれも書き言葉である。3人称は一般に代名詞を用いることがなく、그 「その/あの」を名詞に冠して 그 사람 「その人/あの人」,그⌒분 「そのかた/あのかた」,그 학생 「その学生/あの学生」などのように表す。指示代名詞は、日本語の「こそあど」と同じ4つの項を持つ体系である。指示代名詞のみならず、「こそあど」は形容詞、副詞、冠形詞などにもわたっており、指示詞という範疇を形成している。
話し手の領域 이것 「これ」 聞き手の領域 그것 「それ」 第三の領域 저것 「あれ」 不定の領域 어느것 「どれ」
第IV語基 だいよんごき
中期朝鮮語の用言活用における語基の1つ。語根に -오-/-우- を付けることによって形づくられる。終止形においては話し手の意図を表すとされている。連体形においては、連体形の用言と修飾される体言との関係と関連がある。 日本で読める主な論文
中島 仁 (2002) 「中期朝鮮語の「-오-」について―連体形の場合―」,『朝鮮語研究1』,くろしお出版
中期朝鮮語 ちゅうきちょうせんご 《南》 후기 중세국어<後期中世國語> 《北》 중세중기조선말<中世中期朝鮮―>
朝鮮語の歴史区分の1つ。河野六郎によれば、訓民正音創製(15世紀中葉)から秀吉の朝鮮侵略(16世紀末)までの期間の朝鮮語を指す。
中期朝鮮語は、現代語にない音素である摩擦音 ㅿ,ㅸ や母音 ヽ があった、ㅴ,ㅵ などの複子音があった、終声 ㅅ が終声 ㄷ と区別された、高低アクセントがあった、などの音韻的特徴を持つ。
【朝鮮語の時代区分】 朝鮮語の時代区分は研究者によって若干の違いがあるが、おおむね日本では河野六郎による区分が、韓国では李基文による区分が広く用いられている。共和国での区分は、柳烈による区分に基づく。【河野六郎による区分】→ 「中期朝鮮語の話」のページ
1.古代朝鮮語:訓民正音創製以前(15世紀中葉以前)
2.中期朝鮮語:訓民正音創製~豊臣秀吉の朝鮮侵略(15世紀中葉~16世紀末)
3.近代朝鮮語:豊臣秀吉の朝鮮侵略以降(16世紀末以降)
【李基文による区分】
1.고대국어<古代國語>:統一新羅以前(10世紀初頭以前)
2.전기 중세국어<前期中世國語>:高麗時代(10世紀初頭~14世紀末)
3.후기 중세국어<後期中世國語>:李氏朝鮮建国~豊臣秀吉の朝鮮侵略(14世紀末~16世紀末)
4.근대국어<近代國語>:豊臣秀吉の朝鮮侵略~開化期(16世紀末~19世紀末)
5.현대국어<現代國語>:開化期以降(19世紀末以降)
【柳烈による区分】
1.고대조선말<古代朝鮮―>:紀元前1000年代~紀元前3世紀
2.중세전기조선말<中世前期朝鮮―>:紀元前3世紀~紀元10世紀
3.중세중기조선말<中世中期朝鮮―>:(第1段階)10世紀~14世紀;(第2段階)14世紀~16世紀
柳烈が16世紀以降をどのように区分しているのかいまだ分明でない。
中称 ちゅうしょう
→ 하오体
中声 ちゅうせい 중성<中聲>
母音および半母音を伴った母音。朝鮮語の音節は、伝統的に初声・中声・終声の3つの部分に分ける。
朝鮮漢字音 ちょうせんかんじおん 한자음<漢字音>
朝鮮語における漢字の音。日本漢字音は断続的に入ってきたため、1つの漢字に対して持ち込まれた時代によって呉音・漢音・唐音の3種類がありうるが、朝鮮漢字音は原則的に1つの漢字に対して音は1つである。
【朝鮮漢字音の特徴】 中国中古音における入声 [t] は朝鮮漢字音では ㄹ[l] として導入されている。また、이 <移>と 의 <意>のように、中古音の母音の等の違いを反映したものと見られるが、この違いは中国漢字音や日本漢字音では失われている。中期朝鮮語の伝来漢字音では、뎌 や 텨 といった音の組み合わせが存在したが、現代朝鮮語では子音の口蓋音化に伴い 저、처 に合流した。
朝鮮語学会 ちょうせんごがっかい 조선어 학회<朝鮮語學會>
植民地下の1931年に設立された朝鮮人による民間の朝鮮語学の学術団体。1933年に発表した「한글 맞춤법 통일안(ハングル正書法統一案)」と1936年に発表した「사정한 조선어 표준말 모음(査定した朝鮮語標準語集)」は、現代朝鮮語の正書法と標準語を定めたもので、以降の南北の言語政策の基礎となっている。1942年に「朝鮮語学会事件」と呼ばれる朝鮮総督府当局による大弾圧があり壊滅的な打撃をうけたが、解放後の1949年に「한글 학회(ハングル学会)」と改称して現在に至っている。
朝鮮語規範集 ちょうせんごきはんしゅう
→ 조선말규범집
朝鮮語綴字法 ちょうせんごていじほう
→ 조선어 철자법
朝鮮語綴字法統一案 ちょうせんごていじほうとういつあん
→ 한글 맞춤법 통일안
長母音 ちょうぼいん 장모음<長母音>
朝鮮語の長母音は原則として単語の第1音節にのみ現れる。朝鮮語には 눈 [nu:n] 「雪」と 눈 [nun] 「目」のように母音の長短によって意味を区別する単語があるが、現在では中年以下の世代ではこのような母音の長短の区別がなくなりつつあり、おしなべて短母音で発音するようになってきている。
直接話法 직접화법<直接話法>
朝鮮語の直接話法は語尾 -라고/-이라고 を付けることによって表される。正書法上では、直接話法に当たる部分に、韓国では引用符 “ ”を用い、共和国では≪ ≫を用いる。間接話法とは異なり、 -라고/-이라고 の直前には한다体以外のさまざまな待遇法の形が来ることができる。 동생이 “오늘은 카레가 먹고 싶어요.”라고 했다. 弟が「今日はカレーが食べたいよ。」と言った。また、話法の直後に置かれるものとして、하고 「…と言って」がある。用法的にも -라고/-이라고 に似ているが、これは動詞 하다 「言う」の活用形であり、そのほかにも 하며 「…と言いつつ」や 하고서 「…と言ってから」などさまざまな形をとりうる。
그는 “어이, 빨리 나가라니깐!”이라고 짜증을 냈다. 彼は「おい、早く出て行けよ!」と腹を立てた。“얼른 출발해야지.” 하고 그는 가방을 들고 구두를 신었다. 「早く出発しなきゃ。」と言って、彼はかばんをもって靴をはいた。⇔ 間接話法
テンス
→ 時制
頭音法則 とうおんほうそく 《南》 두음법칙<頭音法則>
漢字語において、語頭に ㄹ あるいは ㄴ が来る場合に ㄹ や ㄴ が別の音に変化する現象。語頭で ㄹ の後ろに母音 [i] あるいは半母音 [j] が来るときは ㄹ が脱落し、それ以外の母音が来るときは ㄴ に変化する。この音の脱落・変化は正書法にも反映され、語頭の ㄹ はそれぞれ ㅇ、ㄴ と表記される。また語頭で ㄴ の後ろに母音 [i] あるいは半母音 [j] が来るときも ㄴ が脱落し、正書法上でも ㅇ と表記される。
頭音法則は韓国の標準語にのみあり、共和国の標準語では語頭の ㄹ および ㄴ は常にそのまま表記され、かつ発音される。しかしながら、共和国で語頭の ㄹ・ㄴ を文字通りに発音するのは、言語政策によりいわば人工的に作った発音である。若い世代では語頭の ㄹ・ㄴ を文字通りに発音することができるようであるが、上の世代では旧来の発音通りに頭音法則にのっとった発音する場合が多いようである。
動詞 どうし 동사<動詞> 《南》 움직씨
用言の下位部類の1つ。主に動作を表す単語。終止形において、命令形、意志形、勧誘法を持つ。詠嘆形は I-는구나 などの形をとり、婉曲形は I-는데요 の形をとる。連体形は、非過去連体形で I-는 をとり、過去形で II-ㄴ をとる。
等称 とうしょう
→ 하네体
とりたて語尾 とりたてごび 《南》 특수조사<特殊助詞>, 보조사<補助詞>, 도움토씨 《北》 도움토<――吐>
話し手の何らかの態度を表す語尾で、体言・用言のみならず副詞や後置詞にもつきうる。日本語の副助詞に当たる。-은/-는 「…は」、-도 「…も」、-만 「…だけ」など。
二重母音 にじゅうぼいん 《南》 이중모음<二重母音> 《北》 겹모음<―母音>
現代朝鮮語の二重母音は ㅢ の1つのみである。ㅢ は単語の第1音節にのみ現れる。第2音節以降では[ㅣ]と発音される。また、格語尾 -의 は、あらたまった場合を除き、通常は[에]と発音される。なお、半母音 [j]、[w] を伴った母音を二重母音と呼ぶ研究者もある。 → 母音
濃音 のうおん 된소리 《南》 경음<硬音>
口音の系列の1つ。息を伴わずに喉を緊張させて出す無声子音。ㅃ・ㄸ・ㅆ・ㅉ・ㄲ の5つ。母音間にあるときは日本語のつまる音に似た音色に聞こえる。 → 子音,平音,激音
濃音化 のうおんか 《南》 경음화<硬音化> 《北》 된소리되기
本来平音であるものが濃音として発音される現象。
【口音終声の直後の濃音化】 最も一般的な濃音化。口音の終声[ㅂ]、[ㄷ]、[ㄱ]の直後に平音が来るとき、そのは濃音で発音される。例:입고[입꼬]「着て」、있다[읻따]「ある」、학생[학쌩]「学生」など。
【合成語での濃音化】 2つの名詞的要素が組み合わさった合成語において、1つめの要素が口音以外の終声で終わるときに2つめの要素の頭にある平音が濃音で発音されることがある。例:강가[강까]「川辺」、술집[술찝]「飲み屋」
【漢字語における濃音化】 漢字語において、終声 ㄹ の直後の ㄷ・ㅅ・ㅈ は濃音で発音される。例:발달[발딸]<發達>「発達」、발사[발싸]<發射>「発射」、발전[발쩐]<發展>「発展」など。
【漢字語の接尾辞的な要素の濃音化】 漢字語において、平音で始まる一部の接尾辞的な要素が濃音で発音されることがある。例:수도권[수도꿘]<首都圏>、사회성[사회썽]<社會性>「社会性」など。この濃音化は特定の漢字に限られているが、その漢字であっても必ずしも濃音化が起こらないこともある。例えば、「件」は 사건[사껀]<事件>、인건비[인껀비]<人件費>のように濃音化する場合もあれば、물건<物件>「もの」のように濃音化しない場合もある。
【語頭における濃音化】 話し言葉において、語頭の平音が濃音化する場合がある。俗語的、隠語的な単語に多い。例:증[쯩]<證>「証明書」、과[꽈]<科>「学科」。これらの単語は、면허증[면허쯩]<免許證>「免許証」、국문과[국문꽈]<國文科>「国文科」など、上記の漢字語の接尾辞的な要素の濃音化から作られた単語と推測される。また、外来語においては、ㅅ で始まるものがしばしば濃音化する。例:서비스[써비스]「サービス」など。
能動態 のうどうたい 《南》 능동태<能動態> 《北》 능동상<能動相>
→ ヴォイス