2023年5月22日

ああ、日帰り出張

昨日は兵庫県の保険医協会に呼ばれ神戸でレクチャーをさせていただいた。昨年12月に東京のそちら関係の会合で一度やらせていただいたご縁である。その時も今回も「コロナ禍の後の世界をわたしたちはどのように考え、どのように生きるべきか」というお題で、当方などから医療従事者のみなさまにお話しできることなどおよそないにもかかわらず、ご指名をいただいたのだった。前回も今回も忸怩たる思いを抱えながら、なぜか今回は拙著の、そしてさらに昨今出たばっかりの関連書籍の販売までもしていただいて、まさかの「サイン会」(ええっ?!これぞ人生初)まで行ったのである。サインはないので相手様のお名前の下に一言書いて、「中山智香子」と地味に署名するだけなのだが、レクチャーそのものより緊張した。次にそんな機会があるといけないので(?)今度サインを考えておこうと思う。
レクチャーのテーマは「ポスト新自由主義の経済を考える:身体に向き合う時代へ」とした。新型コロナのウイルスがグローバリゼーションや新自由主義の負の側面に目を向けさせており、負の側面とは身体への負荷であるというハナシである。長時間の移動をすれば身体は疲れるし肩こりや腰痛を引き起こす、と具体的に説明しながら、自分は神戸往復を日帰りで行っている。ああ語るに落ちたか、この矛盾。真夜中に向かう新幹線に揺られながら、身体に向き合う経済は容易ではないとつくづく思った。

さて、「昨今でたばっかりの関連書籍」とは、当方が監訳をさせていただいた『ポスト新自由主義と「国家」の再生』(鈴木正徳さん邦訳、白水社さんから近日発売予定!)である。これMitchell&Fazi2017.jpg
共著書で第一著者ミッチェルさんはMMTの代表的論客の一人、第二著者ファシさんはジャーナリストで映画監督でもある。両者ともに明確に左派を名乗っており、日本の混濁し屈折した政治状況からみるとなんともすがすがしい。ファシさんは映画監督として来日したときお目にかかっているので知り合いなのだが、「出たよー」と連絡して表紙の写真(上記と同じもの)を送ったら「素敵だね!邦題は "Make The Left Great Again"なの?と返信あり。それは英語だろう!と突っ込みたくなるが、原著はちょうどトランプ旋風が吹き荒れていた時代に刊行されたのである。新自由主義の歴史的文脈の批判的考察、グローバル世界の中でMMTの位置の主張。なかなか面白いので、みなさまにも書店でみかけたらぜひ、お手に取ってみてくださいませー。

2023年5月18日

ダカール行ってきました!!

長々のご無沙汰をお詫び申し上げます。ハカセ課程の院生(セネガルからの留学生)とその課程ハカセを終わってほどない卒業生と三人でセッションを組み、現地セネガルのメディナサバ地区の女性協同組合とのコラボ企画の一つとして、ダカールで開催されたGSEF(Global Social Economy Forum)2023に参加してきました!当方は初アフリカ出張、エチオピア航空、アジスアベバのトランジットを含む30時間あまりのフライトは、地球に沿って移動しているようなものでおそろしく遠かった。気候は20度代だから東京と変わらないかなーという甘い考えは見事に打ち砕かれ、学会の場ですら英語はあまり通じず、乳幼児レベルのフランス語を駆使ならぬ苦使しながら、「アフリカはお腹を壊して一人前です」という経験者某D先生のお言葉通りになった日々であった。いや、決して生水など飲まず飲酒もせず、食事にも気を付けてはいたのだが、その食事はやはり見事にスパイシー、太陽の光は想像をはるかに超える強さで、そのもとでは通常のスケジュールが日本でそれをやるのに比べて何倍かハードなのであった。(あと、中日の夜遅くにKeurGuiのお二人がホテルを訪ねてくれて、懐かしいおしゃべりについつい夜更かしをしたことは、その後相当にこたえた。しかし翌日以降の体調なんかには代えがたかったのだった!かれらは相変わらず情熱の塊で地頭の冴えは超一流、こころざしは一ミリもぶれていなかった。)
われらがプロジェクトはどこで話してもとても好意的に受けとめられたし、大切な人脈がいくつもできた。
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(これはわれわれのセッションが終わって参加者も一緒に撮った集合写真。ナカヤマは連帯の意を表するために、留学生院生ファファさんから以前にもらったセネガルのドレスを着て報告した。これを着たままホテルに帰ったら、エレベーターの中で「ウォロフ語、話せる?」と話しかけられた。その時は「ん?なんで?」と思ったが、後で思い返すと間違いなくこの服のためだ!)。

そして何より、あのどこも渋滞だらけで埃っぽく、ワサワサと騒がしく人びとが暮らしているダカールの喧騒が、わたしはとても好きだった。今回はほとんど学会と高級ホテルの往復で、中日にみなで車でカオラックの視察に出た以外、街を歩いたのは帰国前日の夕方以降だけだったが、地元の人たちの行く焼き肉屋(?というべきか)のむせるような煙たさ、人びとの(まあ若者とくに男の子が明らかに多かったからとはいえ)これでもかというほどに豪快な肉の食べっぷり、道ばたで買って紙コップでちゃっと飲む甘ったるいコーヒーも、ダカールの愛おしさの一端だ。ほんとうによくしてくれたファファさんの大切な仲間たち、話し足りなかった研究者の人びと、また会おう!いつかまたきっと、あの地を踏みたい。

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(同行したMちゃん提供の焼肉屋さん風景。煙が目に染みる、なんてもんじゃない。ケホケホ、目をパチパチ。しかし直火でジュジューッと焼かれる串刺し肉はとびきり美味である。ビールじゃなくファンタがそれに添える飲料なのが、いや、文化(宗教というべきか)とはいえ、どゆこと?!である。もっとも当方の胃腸状況は、その串刺しを1、2本おそるおそる食べる程度の強さしかなかったので、あったとしてもビールどころではなかったのだが)。

2023年3月29日

parc50周年につき

えー、相も変わらず目の前のことに忙殺されているうちに季節はめぐり、先週末には卒業式も無事に行われた。桜は満開のまま花冷えの日々が続いている。さて、そんな2023年もすでに3月が終わろうとしているが、当方もここ数年関わらせていただいているアジア太平洋資料センター(Parc:パルク)は、べ兵連から生まれたNGOがNPOになったものであり、今年の9月で50周年である。昨今の世界状況も見据えつつ、鋭意、記念行事を企画中である。誰でも参加可能な「自由学校」でも記念企画を立てており、その一つが 
オンライン連続講座のため、受講料も控えめで、特に25歳以下のみなさまには特別価格!当方も企画に携わった自信の(えっへん)企画です。司会で登壇もするのでぜひ聞いてくださいませ!

他にもいろいろ魅力的な講座が並んでいます。ぜひ見てみてください

2023年2月10日

夕刊文化の終焉か

以前に拙ブログで何度かご紹介したこともあるが、当方の高校時代の恩師、K先生は樺太のご出身で、樺太論の著書もある。そんな先生が樺太連盟で『樺連情報』の編集をされていた時代に継続して作っていたメモ書きが、『樺太覚書』としてオンラインと冊子体で公開されたのが、昨年である。https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/87292
それを見たM新聞の記者さんが先ごろ、先生にインタヴューを行い(かつての教え子メンバー2名で立ち合い、多少ご協力をさせていただいた)、夕刊にコラムを書いてくださった(2/6)。
ところが、である。第一に掲載日の夕方、弟子たちはそれぞれ近隣のコンビニや駅の売店へと買いに走ったものの、昨今「夕刊」というものは、M新聞だけでなくそもそも置かれていないことが判明したのである。まあ、朝刊もそうかもしれないが、夕刊はもっと売れないのだろう。コンビニや駅の売店に毎日何部かを配達して置き直してもらうだけの労力にペイしなければ、商品の棚から消失するのは当然である。各紙、比較的落ち着いて読める面白い読み物が載っているという夕刊文化の時代は、とうに過ぎていたのかもしれない。
 さらにいえば、わずかな協力の謝礼?として掲載紙2部をお送りいただいたとのことだったが、それがようやく職場の郵便受けに到着したのを発見したのは本日、なんと4日を経過してからのことであった。これまた昨今、郵送で手紙や資料を送る人は激減してきており、郵便の集配の曜日や回数も減少の一途であったのだ。手紙とメール、もらって嬉しいのはどちらかと問えば答えは前者とたやすくこたえられるが、これまた大いなる時代遅れなのかもしれない。いずれもわかっていたことながら、このたびあらためて現実に直面し、状況の厳しさを痛感した次第である。

2023年2月 5日

過ぎ去った寒中の頃

昨日は立春大吉、暦の上ではもう春である。たしかに日射しがなんとなく春めいてきている。とはいえまだまだ寒さは続くだろう。寒中の一月は例年、年明けの授業再開から卒論提出と試問、学期末の試験、レポート、成績評価、来年度の授業計画、修士論文(や博士論文)の最終試験、各種入試やその判定、と教員にはめまぐるしい季節である。とはいえ、そこに学生や院生の一人ひとりの大切な節目や旅立ち、次なる人生が絡んでいる、というか人生そのものであることを忘れずにいたいと思う。
そんなとある日、卒業生のS星が連絡をくれた。久しぶりに大学付近で仕事があるという。しかしそんな日に限って当方は学外の用事で都心に出なければならなかった。当方が大学に戻ってオンライン会議の始まるまでの時間はわずか20分。それでも久しぶりに顔を見て近況を聞けたのはよかった(お茶も出しませんでー)。かれは拙ゼミの合宿でも一度ならずお世話になった某所に就職し、しっかり活躍している shusei20230118.PDF

在学中はゼミ幹として、大いにがんばってくれたことを懐かしく思い出す。すっかり立派になった様子が感慨深かった。立ち寄ってくれてありがとう!
思えばかれらの卒論の年は、コロナ禍で大学も図書館もすべて閉鎖となり、研究を進めるのが本当に大変だった。今はずいぶんよくなったとはいえ、まだまだコロナの影響は続いている。今年度も残り2ヵ月を切ったが、卒論発表会その他のゼミ行事を何とか無事に乗り切っていきたい。

(ちなみに今年の卒論提出時はこんな感じ:ええ、密ですね。大丈夫、換気してました!)
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2023年1月 5日

2023年、明けました!

2023年、無事に新しい年となりました。今年もどうぞよろしくお願いいたしますー。
さて、新春オペラ・バレエ・ガラをウクライナ国立歌劇場管弦楽団と合唱団、バレエ団が公演とのことで、「応援しよう!」と3日の夕方に有楽町へ観に行ってきた。が、そのくらいの気持ちでは軽すぎたことがよくわかった。それはなんとも特異なコンサートであった。
第一部は名曲アリアと合唱だったが、ウクライナ国歌に始まり、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章で締め括られた。真剣な面持ちの指揮者とオケが奏でる音にのせて、50人もの人びとが生身でそこに立ち、どこか重さを漂わせた表情で「歓喜」やさまざまな人生の風景を歌う。そこには、想像をはるかに超える迫力と切実さがあった。第二部のバレエは華やかで美しかったが、その後のカーテンコールになったときのダンサーたちの表情の変化に、気づかないわけにはいかなかった。思いは歌い手の人びとと同じであったのだ。彼らは戦時の母国から束の間離れ、仕事をしに日本へ来ているのだ。仕事が終われば帰国し、ふたたび戦時の日常へと戻るだけである。国際政治には複雑な様相がいろいろあるが、突然に平穏な日々を奪われた彼ら、彼女らには何の罪もない。観客の多くがスタンディングオベーションで長いこと声援を送った。それは舞台に対してと同時に、彼らが生きる闘いに対する声援であり、連帯であった。会場は一体感と熱気に包まれ、拍手はなかなか鳴りやまなかった。
 昨年2月以来の「ロシアによるウクライナ侵攻は」という日々の報道にどこか耳慣れして想像力が鈍磨していたが、一気に世界のリアリティに引き戻された時間であった。

そしてこれまた偶然なのだが、これも戦争関連で、早く観たいと思っていた『ラーゲリより愛を込めて』をようやく調布で観てきた。まだ松の内で映画でもということか、ギリギリに駆け込んだ会場は残席2席ほど、一番前の首の痛くなる席だったが、その分大迫力であった(笑)。今どきの人気俳優も含め錚々たる配役、見応えのあるつくりで、辺見じゅんの名著『ラーゲリ(収容所)から来た遺書』が現代のスクリーンに甦っていた。なんども落涙。ぜひ多くの人びとに観てほしい一作である(当方が頼まなくても、たぶんすでにそのようだが)。
実は、少し前の拙ブログにも書いたとおり、この主人公の山本幡男氏が外大の卒業生である。2020年のちょうどコロナ禍にはいる直前、「外大生と戦争」というプロジェクトへの協力を依頼された際に、この本を教えられて読んだ。名著で何度か映像化もされたというが、当時は本の入手にも少し手間取るほどであった。しかし今回の映画化で、あらためてこの本を手に取る人も多いだろう。さらにご長男の山本顕一氏の『寒い国のラーゲリで父は死んだ』(バジリコ、2022年)も刊行され、また別の側面からとらえる視角が豊富に示されている。上記の「外大生と戦争」が再企画される2023年、じっくりと考えていきたい。

2022年11月27日

とても楽しかったお仕事ひとつ

昨日26日(土)はT光学園というところに呼んでいただいて、中高生(中学1年生から高校3年生)を相手に講義をさせていただいてきた。テーマはずっと以前(9~10ヵ月前ぐらい)に「お金が消える?貨幣の成り立ちと最近の事情」と決めて、そのままとさせていただいた。日頃、今どきの中高生と会うことはほとんどなく、どんなかなあと考えつつ準備をして臨んだが、なんとびっくりするほどたくさんの生徒さんが参加してくれて、内容への食いつきもバッチリで、たいへん楽しく終えることができた。みなさん、ありがとう!!先生方は事前から当日、事後までとても丁寧にフォローして下さり、ひたすら恐縮するばかりであった。ありがとうございました!!
それにしてもどうしてそんなにたくさんの生徒さんが来たのだろう?と思い、コメントシートに書いてもらって読んでみたら、これがまた楽しい。「お金が消えちゃうとコワいと思って、参加しました」、「お金が大好きだから」「自分は最近、お金の使い方がダメなので」(あははは)、「お金が消えるのは、使ってしまうという意味なのか、お金自体がなくなるという意味なのか、それとももっと別の意味なのか、知りたくて参加しました」、うーん、すごい、いろんな生徒さんがポイントをすでにしっかりつかんでいる!それと、「いくらお金を持っていますか」の質問には、0円(あるいは「0円になる予定」)からウン十万円までのバラエティがあって、これもビックリ。講義の後の質問もたくさんもらえて、どれもポイントを突いた質問だったので、大いに内容を補足することができた(クナップの宣伝までしてしまった。てへ)。大学の授業とはまた違って、「学校」の雰囲気もなんだか懐かしく、大いに刺激と元気をいただきました!
この講義はいろいろな大学教員による連続講義の一つで、一年分の記録をまとめて毎年本にしているという。御依頼をいただいた校長先生のアイディアでもう数十年も続けているとのことだが、まことに見事な企画である。他の先生方がどんなお話しをしているのかも、とても気になる(笑)。

2022年11月15日

しょええ、もとい書影...

またまたクナップの訳本の話で恐縮であるが、すでに見本ができ、今週土曜日19日には店頭に並ぶとのこと。うおお!編集Hさんから書影もいただいた。これです!Knapp1905JapCover1.jpg

というわけでとても綺麗な(というか派手な)表紙です!(帯のコピーも派手だし...。編集Hさんに多謝)書店にてぜひお手に取ってみてくださいませ~。

2022年11月 9日

皆既月食の晩に

11月も一週間を過ぎ、3年ゼミ生はゼミ論、4年ゼミ生は卒論の準備にピリピリした空気が流れる季節に入った。昨日そんなゼミの後、ゼミ生たちがサプライズで拙誕生日を祝ってくれた。じーん。ありがとうございますー。
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ケーキとお茶が一段落したところで、ちょうど皆既月食が始まるぐらいの時間になり、みんなで5階の某所に出て、月が欠けていくところを見ることができました。かなり寒かったけれど綺麗でしたね!!みなさん、どうもありがとうございますー。

2022年10月30日

いよいよ!(今度こそほんとに)

たしかこの前(一ヵ月以上前?)拙ブログを書いたときには、しかかり中の翻訳プロジェクトが「いよいよ終盤」みたいな気持ちで索引作業をしていることを書いたのだが、その後も意外と細かい作業や表紙(これはむしろ楽しいものであったが)など仕事が続いて手間取り、終わりが見えない状態でいた。そんな折に友人S氏から「こんなん出てるよ」と連絡をもらった。
https://www.amazon.co.jp/%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E3%81%AE%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E7%90%86%E8%AB%96-%E3%82%B2%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%97/dp/4296115421

うおおおあああ!たかが広告、されど広告、リアリティ増すこと限りなし!で、さっそく第一訳者のK先生にも連絡し、残り作業のテンションの針が一挙に振れた。びよーーーーん。それで、ほんとにいよいよ出ます。お読みいただいて損はおかけしません。大おススメです。拙ブログを読んでくださるみなさまにも、どうか店頭にてお手に取ってご覧いただきたく、よろしくお願いいたしますー。
てか、今あらためて見てびっくりするのだが、まだ発売前なのにいきなりもう本の売れ筋ランキングがついている。どゆこと?まあ、前宣伝が上々ということか。昔、歌番組の「ベストテン」が好きだった者としては、こういうのは心が湧きたつが、上がるものはいつか下がるので、なんだかコワい。まあ地味な本なので、じわーっと長く読まれれば十分なのだが。

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