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2023年7月 アーカイブ

2023年7月 5日

往年のヒット作...?

おお、先の日帰り出張から、またまたご無沙汰をいたしました。先週末は、先のご依頼人のご縁の方々から東京での夏季セミナーに呼んでいただき、話しをさせていただいた。つまりは医師、歯科医師のみなさまやその関連のお仕事をされている方々から、新自由主義についての話をというご依頼である。今回は特に「チリの事例に踏み込んで欲しい」という具体的なご要望も事前に頂戴した。
 チリの事例とは、南米チリの1973年9月11日の自由主義クーデター以後の政策のことで、10年前の拙著『経済ジェノサイド』で一章分を割いて論じたテーマである。思い返せば刊行当時、いくつかの場所でその話しをさせていただいたが、その後は次の一歩へと進まねばと、非力ながら頑張ってきたつもりであった。以前の題材を話すことは進歩がないようで、むしろ避けてきた。しかし今回、明示的にご依頼いただいたとあれば...。

 むっっ、この感じ、何かに似ている。少し考えてみるとそれは、(そんなたとえもおこがましいが、)〇白歌合戦で往年のヒット作を歌うか、それとも最近出した必ずしも売れていない(;)作品を歌うかの二択のようだ。歌い手にしてみれば、せっかくの機会だから新しい作品を聞いて欲しいところだが、聞き手はせっかくの機会だからこそ「あの曲を」聞きたいのである。過去に及ばないという忸怩たる思い...。いやしかし、リクエストをいただけるとは光栄ではないか!そんなわけで「む~かしの名前で~出て~い~ま~す~」の気分のもと(?)、拙著やかつてのメモを引っ張り出しつつ準備をした。

 当日、都心の立派なホテルの、思ったよりもはるかに大きな会場でたくさんの方々にご来場いただき(しかもオンラインもあるハイブリッド開催であった)、2時間半夢中で話した。活発なご質問やコメントもいただき、大いに刺激もいただいた。(仕入れた15冊の『経済ジェノサイド』をみなさまにお買い上げいただいた。多謝。またもやサイン会もあった。ひいいっ!今だサインを考えておらず、フルネームの単なる清書、みたいな残念な対応に今回もとどまった)。しかし10年前とは違った角度から自分の仕事を振り返ることができたのは、このような機会をいただいたからこそである。心底ありがたかった。リクエストを下さったみなさまに。心より感謝申し上げたい。

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そういえば本日、次の拙著の念校ゲラの最終確認打ち合わせが終わった。やれやれ、ひと息である。とはいえ、本は手を離れて世界に出て行ってからこそが心配で、多くの人びとの手に届け!と願うばかりである。あ、テーマは「お金学」ですー。編集のSさんがつけてくださったこの言葉を見るたびに、「ナ〇ワ金融道」を思い出してしまうのだが...。月末には書店に並びますので、お手にとってみてくださいませー!

2023年7月 6日

いくら何でも曲解が過ぎないか?

書く癖が戻ってくると気になることが多々あるのだが、IAEAのF1処理水に関する報告書に関して、政府の見解や日本の報道がおかしいという指摘をメーリスへの投稿で読んだ。大阪経済法科大学のF教授による投稿で、以下に抜粋してみる(F教授がIAEA報告書原文から抜粋し、「IAEAは日本政府を支持しているわけではない」と論拠を示した部分。なお報告書は下記である。 https://www.iaea.org/sites/default/files/iaea_comprehensive_alps_report.pdf 

◯事務局長序言の最後の部分
「最後に、福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水の放出は、日本政府による国家的決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも支持するものでもないことを強調しておきたい。」(Finally, I would like to emphasise that the release of the treated water stored at Fukushima Daiichi Power Station is a national decision by the Government of Japan and that this report is neither a recommendation nor an endorsement of that policy.)(Director General's Foreword ,P.III)

◯本文「2.4.正当化」の結論部分

「ALPS処理水の排出を正当化する責任は、日本政府にある。」(The responsibility for justifying the decision to discharge the ALPS treated water falls to the Government of Japan.) (P.19)

今報告書を入手したばかりでまだちゃんと読んでいないが、これを「IAEAが処理水放出を支持している」とするのは、いくらなんでも曲解が過ぎないだろうか。報告書をしっかり読んでから続報したい。

2023年7月 8日

落とし物、拾い物、宝物:ちばルー

 先日、講演に呼んでいただいたハナシを拙ブログに書いたのだが、実はその際に関係者から落とし物のようにポロリと発せられたハナシが思わぬ拾い物で、宝物をもらった気分である。そう、たった今一気に読んでしまった「ちばルー」(通称)である。講演、行ってよかった!(本末転倒)

当日は午前中で仕事を終わったのにお弁当をくださった。というか、例のサイン会にもたもたして申し訳なさから「みなさんのお昼の時間が...」とか口走ったのを関係者のみなさまが聞きつけて、お弁当を一つ分けてくださったのかもしれない。ともあれ、だだっ広いとはいえ講演した会場の片隅で仕事を終わった講演者が弁当を食べているのもアレだと申し上げたら、スタッフの控室に案内された。そこでロジを担っていた某氏(当方よりずっとお若い女性)とおしゃべりをしながら、たいへん美味しいお弁当をいただいたのだが、話しがいろいろ盛り上がる中で彼女が「そういえば」とポロリと言ったのが、「ちばルー」って読みました?だったのである。ざざっと話してくれた概要が激烈におもしろかったので、手に入れて読み始めたらこれが面白過ぎた。正確なタイトルは「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、ルーマニア語の小説家になった話」(2023年2月刊行)である。(今頃大興奮している当方が世間知らず過ぎなのか?)
状況はタイトルが語る通りだが、著者は難病を抱えており、ルーマニアに留学はもちろん、旅行もしたことがない。しかし映画を見まくり、本を読みまくり、SNSを駆使して道を切り開いていったのだ。つまりは、まだ若い著者の自伝エッセイであり、これが青春小説さながらなのである。絶望的状況を切り裂く言葉の力!最後のあたりで著者の引用するシオラン、もといチョランの言葉は、いやそれも含めてこの本自体が、全国の引きこもりの人びとのみならず多くの人をもめちゃめちゃ勇気づけるだろう。ふと、わが勤め先G大はこうした頭脳に呼応する力を持ち得ているのか?と思ったりするが、まーそれはともかく、ルーマニア語だけでなくぜひ日本語でも書き続けてほしい!

2023年7月27日

佳き世かな、と願った人の

 気が付けば10日ほども経ってしまったが、去る海の日の祝日、「偲ぶ会」ならぬ「語る会」に参加してきた。ポランニーゆかりの玉野井先生の足跡を辿って知己を得て、ソウルの国際ポランニー学会や飛騨高山の国際地域通貨学会、気仙沼プロジェクトもご一緒させていただいた故・O部佳世さんを「語る」会である。玉野井先生が「佳き世かな」と願って付けられた佳世さんのお名前にふさわしく、鋭く賢くもチャーミングなお人柄は多くの人びとを魅了した。語る人びとにはそれぞれの思いがあふれ、2時間はあっという間に使い尽くされた。
 みなが思わず笑ってしまったエピソードの一つは、佳世さんが溺愛されたというお孫さんのエピソードだ。旦那様と佳世さんお二人のご専門上、建築関係の方々との関わりも多かったそうだが、隈(研吾)さんからのお電話があるとお孫さんが喜んだという。「クマさんから電話よ~」。いや、そのクマじゃないって!まことに茶目っ気たっぷりの佳世さんだった。
 
急にそんなことを思い出したのは、クマが可愛い絵の本を出したからだ。(表紙はこんな感じ)OkanegakuCover.jpg

イエーイ、出ました!タイトルが怖い著者と言われてウン十年(?)、次こそはコワくない本をとの願いがようやくかなった。のか?  ー謹呈したひとりからは「表紙とか絵は可愛いが内容は可愛くない」と言われ、大先輩からは「攻めてる内容だね」とのお言葉。ありがたいが、「攻めてる」本はもちろん、可愛くなんかはない。でもわかりやすく読めるようにと、一生懸命書きました。それに、いつもにも増してのお手頃価格。どうか店頭にてお手に取ってみてくださいませ~。

2023年7月31日

見てくれている人がいる!

早くも2023年7月が終わろうとしている。一年の折り返し地点はすでに過ぎ、某書評系新聞が先ごろ、数々の評者による2023年上半期の3冊の特集を組んでいた。毎回これを読むと、みずからの読書量の少なさ、読むべきものの多さに圧倒されてしんどいのだが、ふとその片隅に拙監訳書が!!
ReviewbyProfSakiyama.jpg

わーい!さすがS山さん、広く目配りしていらっしゃるんですねー。とてもとてもありがたいです。内容に大いに異論、大いに歓迎でございます。監訳者も思うところ、いろいろございますです。議論になれば幸いですっ。
どこかで見てくれている人がいる。それはこういう地味な仕事を続ける者にとって、何よりの励ましであり、襟を正す瞬間である。

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