先日、講演に呼んでいただいたハナシを拙ブログに書いたのだが、実はその際に関係者から落とし物のようにポロリと発せられたハナシが思わぬ拾い物で、宝物をもらった気分である。そう、たった今一気に読んでしまった「ちばルー」(通称)である。講演、行ってよかった!(本末転倒)
当日は午前中で仕事を終わったのにお弁当をくださった。というか、例のサイン会にもたもたして申し訳なさから「みなさんのお昼の時間が...」とか口走ったのを関係者のみなさまが聞きつけて、お弁当を一つ分けてくださったのかもしれない。ともあれ、だだっ広いとはいえ講演した会場の片隅で仕事を終わった講演者が弁当を食べているのもアレだと申し上げたら、スタッフの控室に案内された。そこでロジを担っていた某氏(当方よりずっとお若い女性)とおしゃべりをしながら、たいへん美味しいお弁当をいただいたのだが、話しがいろいろ盛り上がる中で彼女が「そういえば」とポロリと言ったのが、「ちばルー」って読みました?だったのである。ざざっと話してくれた概要が激烈におもしろかったので、手に入れて読み始めたらこれが面白過ぎた。正確なタイトルは「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、ルーマニア語の小説家になった話」(2023年2月刊行)である。(今頃大興奮している当方が世間知らず過ぎなのか?)
状況はタイトルが語る通りだが、著者は難病を抱えており、ルーマニアに留学はもちろん、旅行もしたことがない。しかし映画を見まくり、本を読みまくり、SNSを駆使して道を切り開いていったのだ。つまりは、まだ若い著者の自伝エッセイであり、これが青春小説さながらなのである。絶望的状況を切り裂く言葉の力!最後のあたりで著者の引用するシオラン、もといチョランの言葉は、いやそれも含めてこの本自体が、全国の引きこもりの人びとのみならず多くの人をもめちゃめちゃ勇気づけるだろう。ふと、わが勤め先G大はこうした頭脳に呼応する力を持ち得ているのか?と思ったりするが、まーそれはともかく、ルーマニア語だけでなくぜひ日本語でも書き続けてほしい!